虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと

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無惨な最後だと思った。
だらしがなく口を開け、
目は驚愕のまま見開いて。

切り裂かれた首筋。
貫かれた胸部。
墓標のように、兵士用の剣が深々と刺さっている。
血はまだ鈍く光り、液体を保っている。

ーーあのお方は無事なのだろうか。
私はすぐに思考を切り替える。
優先順位。
死んだ共犯者のことなど考えても仕方がない。

混濁した記憶であるが、ここにはあのお方もいたはずだ。
それにイデア様も。
二人の姿はここにはない。
どこに行ったのだろう。
記憶がバラバラ、一部黒塗り、雑音が入ったように探れない。
足りないピースを思考で穴埋めする。

返り討ちにしたのだろうか。
いや、それだと侵入者の説明がつかない。
……いや、説明がつかないから侵入者の存在を疑っているのかもしれない。

ーーそもそも、どうしてあの男がここにいる。
アンドレアル=リンドブルム。
あの男の出番はずっと先のはず。
こんな計画の初手にのこのこ見学に来る意味が分からない。
ただに嫌がらせのつもりだったのかもしれないが。

だけれど、ある意味で不味い。
計画の重要人物が事故ーーというか事件で死亡とは。
この後、私はどう進めていくべきなのか。
概要は理解している。
手渡されたあの毒薬でイデア様を殺す。
その罪をあのお方に被せる。
それも、大勢の人がいる前で。

だけど、それには協力者が必要だ。
多くの、そして圧倒な権力を持つものが。
公爵家とはいえ、令嬢である。
その権限はあくまで家長たるお父様のもの。
私にはない。
だからーー

「リトア」

思考が遮られる。
あのお方の声だ。
無事だったのだ、

嬉しい。
生きている。
良かった。
安堵。
安心。

振り向くと、頭に包帯を巻いたあのお方がいた。
傷有りの姿も影があって素敵である。
でも、いつの間に怪我をされたのだろう。
跡が残らなければいいのだけど。

……あれ、雰囲気がおかしい。
なぜか、怯えた表情でこちらを見ている。
何に怯えているのだろう。
あなたにそれは似合わない。
いつものような、優しい顔を見せて欲しい。
親しみを込めた声で呼んで欲しい。
そんな、
そんな風に見ないで欲しい。

「ーーどうしてこんなことを」

あのお方は言う。

「イデアを傷つけーー」

目を伏せて、

「兄さんを手にかけるだなんて」

意味の分からないことを。
訳の分からないことを。
その口で言うのである。

私が?

え、

え、

……え?

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