虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと

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「舐めおってからにーー貴様如きが、このペンタグラ=エーテルザットに逆らうとは。愚かな、愚か者がっ……、この程度の毒、気合いでっ、どうにでもーーしてくれよう」

 倒れようとも、
 毒に苛まれようとも。
 ペンタグラは自身の生き方を変えようとはしなかった。
 気力と気概で自身の体を立ち上がらせる。

「これからどうするつもりだ? このペンタグラ抜きで、エーテルザットを栄えさせることなど到底出来ぬぞ!」

 許しを乞うことも、
 助けを求めることも。

「この愚か者がっ!」

 謝ることも、何もない。
 それが彼の矜持なのだろう。

「貴様のせいで、エーテルザットは終わるのだ。貴様の愚行のせいで、未来の勝者の栄光も、過去の敗者の犠牲も無駄になるのだ。貴様のせいで、貴様のせいでーー」

「それ以上はーー不要ですよ。彼女に呪いをかけないでください。僕の恩人のご友人、死者が生者に迷惑をかけないでください」

 ペンタグラの言葉が、言い終わる前に彼は首を刎ねらる。
 鋭い切れ味。
 吹き出す鮮血。
 見るからに致命傷、毒よりも早く男の命を奪う。
 シュライグ=リーグベルト。
 エーテルザット家に何の因縁ない人間が幕を引いた。
 突然のことに、私は勿論、眼前のエクレア含め、周囲の兵士も動けない。

「貴方は彼女の毒では死なない。僕の剣で、僕の手にかかって死ぬのです」

 そして、墓標のようにペンタグラにーーペンタグラの死体に突き立てる。
 その首を刎ねた剣を、赤く染まった剣を。
 アンドレアルの時と同じように、突き立てる。

「どうしてーー」

「深い意味はありませんよ。ただのペコット様との契約です。このような状況で手汚すのが、僕の役目。僕の今のお仕事なのです」

 問いかけるエクレアの言葉を、事も無げにシュライグは返す。
 命を奪ったことに、何の後悔もないように。
 もう、慣れてしまっているかのように。

「貴方は多分、まだ一人も手にかけていないのでしょう。ならば、その手は綺麗なままにしておいた方がいい。こうなってしまっては、手遅れなのです。一度踏み越えてしまえば、そこから先は戻ることの出来ない一本道。先のある貴方なら、尚更です」

「覚悟なら出来ていました! どうして、どうして無関係な貴方がっ!」

「無関係、だからですよ。関係ないから、無感情に剣を振える。口で何を言おうと、冷徹さを取り繕おうと、貴方には迷いが見えました。主人殺しの先輩として、そこは理解できるところもあります」
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