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一章
9.眠りのアンドレア
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権利と義務は違う。
同じ行為でも、他者から強制された行為には喜びを感じ難い。
それが自身の自由意志によって行っていた際に、どれほどの喜びを感じていたとしても、である。
「どうされました?随分顔色が悪そうですが」
「……大丈夫、だよ。少し、気分が悪い、だけだ」
呼吸も絶え絶えに、明らかに健康状態を害しているアンドレアを、心配そうな表情を作って、パトリシアは見つめていた。
この結果は、彼女の想定通りの結果ではあったが。
思いの外、成果が出るのが早かった、というところではあったが。
普通とは違う、アンドレアは特別。
たしかにそうだろう。
だが、その特別も結局は人間という大きな括りに縛ってしまえば同じこと。
人外の見た目に成り果てようとも、人外ではない。
人であるということには変わらない。
人の身に余る食料を毎日継続的に取り続けていれば、当然こうなる。
昔のように、自分が食べたいように食べていれば、ここまでの惨状にはならなかった筈だ。
流石にやばい、もう限界という段階で、静止があった筈だ。
でも、今回は違う。
そんな甘さを彼女は許さない。
パトリシアはアンドレアの食事の光景をいつも見ていた、見守っていた、監視していた。
故に、彼は暴食をするしかなかった。
嫌でも食べるしかなかった。
彼女の作り笑顔を守るために。
彼女の行為に報いるために。
「気をつけてくださいね。アンドレア様は普通の人とは違うのですから。お体に何かあったら一大事です」
「そうだね……気を……つける、よ」
周囲の従者も止めることはなかった。
明らかに主人の状態がおかしいのに、止めようとはしなかった。
元より、忠誠心がなかったということもある。
アンドレアのことなんて、主人と認めていなかったということもある。
だが、それ以上に、彼らは命令されていたのだ。
『アンドレア様の食事の世話は私が行います。これも婚約者としての務めの一つ、手出しなきように』
その言葉に、従っていた。
噂話程度に知られている、元悪役令嬢の話。
主人のために、敢えてその主役に楯突こうとは、誰も思わない。
外様の罪人だと、
暴食のアンドレアへの生贄だと。
陰に侮蔑していようとも。
形式上の立場、上下関係は存在する。
危ない橋は渡らない。
たかが料理、そこまで注意すべきこともない。
みんな、そう考えていた。
だから、これは当然の結果。
驚きも何もない、当たり前の結末。
「あれ、パトリシア……なんだか、体がーー」
どしりと、アンドレアは横に転がる。
丸く太った体のせいで、数度回転、そのまま地面に倒れ伏せる。
「パトリシア、すまないが、起こして、くれない、か」
「アンドレア様、それは難しいですね。私の細腕では、ナイフ程度の重みしか、持ち上げられないのです」
飄々と嘘をつく。
調理器具に食材、悠々とナイフ以上の重量物を彼女は己の手足の如く操作していた。
令嬢の嗜みとして、多少の膂力はあるのだ。
だが、その膂力をもってしても、今のアンドレアを動かすのは難しい。
重量的にも。
それ以前に、この結末を予想していた彼女にとって、アンドレアを起こすという選択肢は存在していない。
「あれ、なんだか、意識が……薄れーー」
回転した際に、打ちどころが悪かったのだろう。
アンドレアはそのまま目を瞑り、眠るように動かなくなった。
パトリシアはその姿を確認し、嘆息しつつ呟く。
「とりあえず、第一段階、終了ですかね」
頬を緩ませることもなく、呟く。
その顔は作り物ではない、本物。
偽物よりも価値のない、ありのままの本物。
同じ行為でも、他者から強制された行為には喜びを感じ難い。
それが自身の自由意志によって行っていた際に、どれほどの喜びを感じていたとしても、である。
「どうされました?随分顔色が悪そうですが」
「……大丈夫、だよ。少し、気分が悪い、だけだ」
呼吸も絶え絶えに、明らかに健康状態を害しているアンドレアを、心配そうな表情を作って、パトリシアは見つめていた。
この結果は、彼女の想定通りの結果ではあったが。
思いの外、成果が出るのが早かった、というところではあったが。
普通とは違う、アンドレアは特別。
たしかにそうだろう。
だが、その特別も結局は人間という大きな括りに縛ってしまえば同じこと。
人外の見た目に成り果てようとも、人外ではない。
人であるということには変わらない。
人の身に余る食料を毎日継続的に取り続けていれば、当然こうなる。
昔のように、自分が食べたいように食べていれば、ここまでの惨状にはならなかった筈だ。
流石にやばい、もう限界という段階で、静止があった筈だ。
でも、今回は違う。
そんな甘さを彼女は許さない。
パトリシアはアンドレアの食事の光景をいつも見ていた、見守っていた、監視していた。
故に、彼は暴食をするしかなかった。
嫌でも食べるしかなかった。
彼女の作り笑顔を守るために。
彼女の行為に報いるために。
「気をつけてくださいね。アンドレア様は普通の人とは違うのですから。お体に何かあったら一大事です」
「そうだね……気を……つける、よ」
周囲の従者も止めることはなかった。
明らかに主人の状態がおかしいのに、止めようとはしなかった。
元より、忠誠心がなかったということもある。
アンドレアのことなんて、主人と認めていなかったということもある。
だが、それ以上に、彼らは命令されていたのだ。
『アンドレア様の食事の世話は私が行います。これも婚約者としての務めの一つ、手出しなきように』
その言葉に、従っていた。
噂話程度に知られている、元悪役令嬢の話。
主人のために、敢えてその主役に楯突こうとは、誰も思わない。
外様の罪人だと、
暴食のアンドレアへの生贄だと。
陰に侮蔑していようとも。
形式上の立場、上下関係は存在する。
危ない橋は渡らない。
たかが料理、そこまで注意すべきこともない。
みんな、そう考えていた。
だから、これは当然の結果。
驚きも何もない、当たり前の結末。
「あれ、パトリシア……なんだか、体がーー」
どしりと、アンドレアは横に転がる。
丸く太った体のせいで、数度回転、そのまま地面に倒れ伏せる。
「パトリシア、すまないが、起こして、くれない、か」
「アンドレア様、それは難しいですね。私の細腕では、ナイフ程度の重みしか、持ち上げられないのです」
飄々と嘘をつく。
調理器具に食材、悠々とナイフ以上の重量物を彼女は己の手足の如く操作していた。
令嬢の嗜みとして、多少の膂力はあるのだ。
だが、その膂力をもってしても、今のアンドレアを動かすのは難しい。
重量的にも。
それ以前に、この結末を予想していた彼女にとって、アンドレアを起こすという選択肢は存在していない。
「あれ、なんだか、意識が……薄れーー」
回転した際に、打ちどころが悪かったのだろう。
アンドレアはそのまま目を瞑り、眠るように動かなくなった。
パトリシアはその姿を確認し、嘆息しつつ呟く。
「とりあえず、第一段階、終了ですかね」
頬を緩ませることもなく、呟く。
その顔は作り物ではない、本物。
偽物よりも価値のない、ありのままの本物。
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・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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