追放された悪役令嬢は残念領主を導きます

くわっと

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一章

10.追放された悪役令嬢は残念領主を導きたい

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予定通り、アンドレアを行動不能に追い込むことに成功した。
自身の計画が迅速に終わったのは、少し拍子抜けだった。
成功することが久しぶりだからかもしれない。
パトリシアという女は、やればできる女なのだ。
何の邪魔もなければ。
相手が規格外でなければ。
人の枠におさまれば。
自身の理想を実現できる、能力満ち溢れ女性なのだ。

「さて、これでこの地域の指揮権は婚約者である私に移行するのだけど、次はどうしましょうか」

元より健康状態含め、残念だった領主が体調不良で一線を退いたとしても、何の驚きもない。
いつかこうなると思っていた、と言い放つ輩が多数わく程度だろう。
私が原因と言うものもいるだろう、毒を持ったの違いないと。
だが、毒なんて欠片も使用していないし、そうする必要もない。
これは彼が選んだ結末の一つ。

途中で止めることができた筈だ、
逃げ出すこともできた筈だ。
監視されているとはいえ、アンドレアとパトリシアの関係は対等、いや領主である分ずっとアンドレアの方が上なのだ。
書面上は、
立場上は。

でも、彼はそうしなかった。
選択肢の一つとしてすら、考えつかなかった。

それは、彼が愚鈍だからという理由だけで片付けることはできない。
愛が、恋が、彼を狂わせた。
何も続けられない彼が、倒れるまで続けた。

それに、そもそもこの男は死んではいない。
死にそうにはなっているけれど、言葉一つ話せないほど、衰弱しているけど。
まだ生きている。

「一応はよく頑張りました、と褒めておきましょう。私への愛なのか、恋なのか、はたまた異常なまでの食欲故か。兎にも角にも、倒れるまで、食事が嫌いになるまで食べ続けてくれたことは称賛に値します」

意識のないアンドレアの頭をわしゃわしゃと撫でる。
こんどは、特段の嘘も偽りもなく。
躾を守れたペットに対するように。

「よく、頑張りました」

短く一言、囁くように呟いて、彼女は助けを呼びに行く。
多少は医療の心得があるが、彼女は医者ではない。
色々嗜んでいるだけの令嬢に過ぎない。
多才ではあっても、万能には程遠い。

アンドレアを行動不能にすることは目的であったが、本当に死んでもらっては困る。
死なないように調整はしているが、万全は期すべきである。

彼女がやろうとしているのは、
地位を奪うことではなく、彼を導くこと。
世間が言うところの理想の領主の遥か先に、彼を導き、そしてーー

「はぐれ者同士、私たちを侮蔑し虐げたこの国を、ぶち壊しましょうね」

聞こえない筈の相手に、
聞こえないくらい小さな声で。
彼女は本心を吐露した。
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