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8.肉体労働後の飯はめちゃくちゃ美味い、悩んでる暇があったら体を動かせ!
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「兄妹揃って手伝いにくるとは、ニホンってとこの村人は働き者だな!」
ファザさんは、そう快活に笑うと、私たちに作業用の道具を渡してくれた。
妹には、水をやるジョウロのようなもの。
私には地面を耕す『鍬』のようなものを渡した。久しぶりに持つ重量物。デスクワークが基本だった私には、少々荷が重そうだ。……というかこの鍬そのものが十二分に重い。
「嬢ちゃんはあっちらへんに、適当にそいつで水をまいてくれ! 兄さんは俺と一緒にここらへんの土をいい感じに柔らかくしてくれ!」
と大雑把な指示をくれた。
妹は「わっかりました!」とハイテンションに答えると、リズミカルな動きで水まきを開始した。なんだか楽しそうである。近くにいたアリシアが、若干困った顔していたが、それは気にしないでおこう。
私はというと、先程の指示の『いい感じ』というのが分からなかったので、ファザさんの動きを見て覚えることにした。
「どりゃ!おらっ!そいやっ!せいや!まさっや!」
独特の掛声とともに、ファザさんは鍬のようなもので、土を耕していく。
その見た目通り、道具の重さを感じていないような動き。軽々と振り回し、一撃一撃で土が大きく掘り返されている。
「ほら、兄さんもやってみな!」
ファザさんは、そう私を勧める。ものは試しと、振り上げてみる。……この時点で、かなりきつい。両腕がぷるぷるしているのを感じる。ーーだが、それを堪えて振り下ろす。
……鍬のようなものは、地面に突き刺さった。
「兄さん、遊んでないでしっかりやりな!」
もう一度トライ。
……今度は斜めに地面に入り、刺さりもしなかった。
「兄さん、それ、本気か?」
ファザさんの声の語気が弱まる。本気で心配されていそうだ。
「ちょっと待ってろ」
そう言って、ファザさんは家の方へとかけて行った。
そして、5秒後、先程よりも一回りも二回りも小さい道具を私に貸し与えた。どことなく、その顔には驚きと憐れみの感情が見て取れる。
渡されたそれも少し重いと思ったが、使い勝手は格段に良かった。ファザさんの作業効率から考えると、塵のような助力だが、それもないよりはましと、作業に自分なりの全力を向けた。
ーー
「お疲れのようね」
慣れない肉体労働の疲れでへたり込んでいる私に、妹に声をかける。
「なかなかな。明日はきっと筋肉痛だよ」
「いいじゃない、筋肉痛。ここで生活を続けたら、兄さんもいつかファザさんみたいなゴリマッチョになれるかもよ」
「あのレベルまでは無理だろ。あの人と私じゃあ、遺伝子レベルで肉体の質が違う」
「まあ、世界ーーというか生活習慣そのものが違うからそれも仕方がないかもしれないね」
よいしょ、と妹はへたり込んでいる私の隣にちょこんと座った。
「けど、こうした肉体労働で汗をかくというのもいいでしょ。兄さんのデスクワークよりも、仕事の結果が明確にわかる」
「かもしれないな。けど、毎日は嫌だな」
ファザさんの作業量をみると、我ながらゴミみたいな成果だが、ちょっとした達成感がある。やった分だけ、成果が目に見えて実感できるというのは快い。
「まあまあそう嫌がらないの。そんな兄さんに、農作業のメリットを三つ教えよう。まあ、ブラックな職場じゃないという条件つきだけどさ」
三つと言いつつ、妹は人差し指だけをピンと立てる。いつものように。
「まず、健康的になるってことだね。基本、こんな感じにお日様(?)の下でやるから、メンタル的にもいいし、体を動かすから血流もよくなる。慢性的なストレスを抱えにくい作業環境なんだよ」
と妹は私たちを照らす太陽のようなものを指指した。
「次に結果が分かりやすいこと。私たちの世界の仕事って、自分の行動の結果が分かりにくいんだよね。一つの仕事でも、それにかかわる人数は多いし、それを構成する要素もたくさんある。だから、自分の努力もかかわった人数と構成要素で分割・希釈される。つまりは達成感を感じにくいんだよね。けど、農作業は違う。自分の行動がすぐに結果につながるし、努力の成果は食べ物になって自分に返ってくる。実に分かりやすい!」
うんうんと、自身で納得する妹。
「最後の一つはなんだ?」
私の問いに妹は悪戯っぽく笑った。
「そろそろ飯にするぞ!」
ファザさんが私たちを呼ぶ。妹は「今行きます!」と明るく答える。
そして、立ち上がりつつ、私に言う。
「労働後のご飯はめちゃくちゃ美味しい!」
と、妹は笑った。
ファザさんは、そう快活に笑うと、私たちに作業用の道具を渡してくれた。
妹には、水をやるジョウロのようなもの。
私には地面を耕す『鍬』のようなものを渡した。久しぶりに持つ重量物。デスクワークが基本だった私には、少々荷が重そうだ。……というかこの鍬そのものが十二分に重い。
「嬢ちゃんはあっちらへんに、適当にそいつで水をまいてくれ! 兄さんは俺と一緒にここらへんの土をいい感じに柔らかくしてくれ!」
と大雑把な指示をくれた。
妹は「わっかりました!」とハイテンションに答えると、リズミカルな動きで水まきを開始した。なんだか楽しそうである。近くにいたアリシアが、若干困った顔していたが、それは気にしないでおこう。
私はというと、先程の指示の『いい感じ』というのが分からなかったので、ファザさんの動きを見て覚えることにした。
「どりゃ!おらっ!そいやっ!せいや!まさっや!」
独特の掛声とともに、ファザさんは鍬のようなもので、土を耕していく。
その見た目通り、道具の重さを感じていないような動き。軽々と振り回し、一撃一撃で土が大きく掘り返されている。
「ほら、兄さんもやってみな!」
ファザさんは、そう私を勧める。ものは試しと、振り上げてみる。……この時点で、かなりきつい。両腕がぷるぷるしているのを感じる。ーーだが、それを堪えて振り下ろす。
……鍬のようなものは、地面に突き刺さった。
「兄さん、遊んでないでしっかりやりな!」
もう一度トライ。
……今度は斜めに地面に入り、刺さりもしなかった。
「兄さん、それ、本気か?」
ファザさんの声の語気が弱まる。本気で心配されていそうだ。
「ちょっと待ってろ」
そう言って、ファザさんは家の方へとかけて行った。
そして、5秒後、先程よりも一回りも二回りも小さい道具を私に貸し与えた。どことなく、その顔には驚きと憐れみの感情が見て取れる。
渡されたそれも少し重いと思ったが、使い勝手は格段に良かった。ファザさんの作業効率から考えると、塵のような助力だが、それもないよりはましと、作業に自分なりの全力を向けた。
ーー
「お疲れのようね」
慣れない肉体労働の疲れでへたり込んでいる私に、妹に声をかける。
「なかなかな。明日はきっと筋肉痛だよ」
「いいじゃない、筋肉痛。ここで生活を続けたら、兄さんもいつかファザさんみたいなゴリマッチョになれるかもよ」
「あのレベルまでは無理だろ。あの人と私じゃあ、遺伝子レベルで肉体の質が違う」
「まあ、世界ーーというか生活習慣そのものが違うからそれも仕方がないかもしれないね」
よいしょ、と妹はへたり込んでいる私の隣にちょこんと座った。
「けど、こうした肉体労働で汗をかくというのもいいでしょ。兄さんのデスクワークよりも、仕事の結果が明確にわかる」
「かもしれないな。けど、毎日は嫌だな」
ファザさんの作業量をみると、我ながらゴミみたいな成果だが、ちょっとした達成感がある。やった分だけ、成果が目に見えて実感できるというのは快い。
「まあまあそう嫌がらないの。そんな兄さんに、農作業のメリットを三つ教えよう。まあ、ブラックな職場じゃないという条件つきだけどさ」
三つと言いつつ、妹は人差し指だけをピンと立てる。いつものように。
「まず、健康的になるってことだね。基本、こんな感じにお日様(?)の下でやるから、メンタル的にもいいし、体を動かすから血流もよくなる。慢性的なストレスを抱えにくい作業環境なんだよ」
と妹は私たちを照らす太陽のようなものを指指した。
「次に結果が分かりやすいこと。私たちの世界の仕事って、自分の行動の結果が分かりにくいんだよね。一つの仕事でも、それにかかわる人数は多いし、それを構成する要素もたくさんある。だから、自分の努力もかかわった人数と構成要素で分割・希釈される。つまりは達成感を感じにくいんだよね。けど、農作業は違う。自分の行動がすぐに結果につながるし、努力の成果は食べ物になって自分に返ってくる。実に分かりやすい!」
うんうんと、自身で納得する妹。
「最後の一つはなんだ?」
私の問いに妹は悪戯っぽく笑った。
「そろそろ飯にするぞ!」
ファザさんが私たちを呼ぶ。妹は「今行きます!」と明るく答える。
そして、立ち上がりつつ、私に言う。
「労働後のご飯はめちゃくちゃ美味しい!」
と、妹は笑った。
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