23 / 45
23.人生は小さな習慣の積み重ねと考え方一つで変えられる、それがライフハック!
しおりを挟む
「出口が城門一つ、そこからしか出られないというのなら、堂々とそこを通ればいい」
私は事も無げに言う。
当たり前のことを、当たり前に言う。
「だから、俺たちが見つかるから問題なんだよ!」
そう言ったのはヘーゲルさんだった。
「別に見つかっていいじゃない。私と来る選択をした時点で、これまでの生活には戻れない。決別。門番の兵士に止められたところで、この乗り物で正面突破すればいい。護送用のこれが、何も言わずに突っ込んでくる。その非日常に対して冷静に、かつ最適な行動を瞬時に取れる人はそういないと思うけれどな」
同じ繰り返しの日々。
たとえ訓練を繰り返しても、
たとえ緊急時用に配備されている兵士でも、
その緊急が起きた時に対処できるとは限らない。
それが、味方の手によって引き起こされるものなら、なおの事。
私の回答に、ヘーゲルさんは閉口し、ルパインさんはくすりと笑う。
「見つかるのが問題と思っていたが、見つかる前提で進めば問題にすらならない、ということか。嬢ちゃん、若いのに考えが大人びているね」
「お褒めにあずかり恐悦至極」
と私はルパインさんの賛辞に冗長っぽく返す。
たしかに、元女子高生としては大人びているのかもしれない。
卒業式の帰りのあの日から、
交通事故で命を一度失ったあの日から。
私は普通の元女子高生ではなくなったから。
ーー
意識があるのは驚きだったけど。
モノに触れられることができるのはびっくりだったけど。
私が死んでけっこうな月日が流れていることは衝撃だったけど。
あの日以降、私は『特別』な幽霊になったのだ。
兄さんの部屋に住み着く、特別な幽霊。
急に兄さんの部屋に復活したのは仰天だったけど。
普通に会話もできて、意思の疎通もできる。
料理もできるし、掃除もできる。
読書もできるし、ネットも使える。
お風呂も入るし、ご飯も食べれる。
一度死んだ、ということ以外は普通の人間。
ただ、現実的に死んだことになっている山野緋香里としては『普通』に生きられない。
表舞台の生活は許されない。
ばれたら大変なことになる。
死んだはずの人間が、急に生き返って生活している。
大事件だ、
神様の再来だ。
けれど、私は神様ではない。
奇跡的な何かで復活したけど、
奇跡的な何かを起こすことはできない。
ただの人間だったモノ。
今は何かよくわからない、人の形、人の機能があるナニカ。
兄さんも何も言わなかった。
私との普通の生活という、普通じゃない状況を何も言わず受け止めてくれた。
まあ、あの人の場合、仕事に疲れすぎて、冷静突っ込みを忘れていただけなのかもしれないけれど。
なのでとりあえず、私のこの暇を持て余す日常を兄さんのために使おうと思った。
この不思議な存在である私がいつ消えるかはわからないけれど、
それまでは兄さんの生活を、人生を良くするために使おうと考えた。
隣から見れば、ぬるま湯の地獄に浸かって抜け出せない兄さんを救うために何かしようとした。
そこで丁度いい本が見つかった。
『ライフハック入門』
人生は小さな習慣の積み重ねと考え方一つで変えられる、そういった趣旨の本。
だから私はその手法を使って、兄さんの人生をハッキングしてみようと思った。
その地獄から救い出すために。
奇跡を起こせない私でも使える、人間が編み出したの知恵と手段を使って。
ただ、また奇跡的な何かが起こって、私どころか兄さん含めてこんな世界に飛ばされるとは思っていなかったけど。
神様、
もしいるとしたら私に何を期待しているんですか?
私に、何をさせたいんですか?
時々暇をみて、気配を感じない空に尋ねた。
当然、答えが返ってきたことはない。
ーー
「いやはや、面白いストーリーだ。そのあと、つまりはこのグラッセから脱出してからどうやって成功していくか、是非とも聞きたいところだが……そろそろお別れのようだ」
塔の入り口が見えてきた。
あれが突き落とし処刑用の塔か。そこの近くに連れてこられた、ということはそこに囚人用の部屋があるのかな。
けど、逮捕翌日処刑の強行日程が普通、というのなら部屋のクオリティは期待できないかな。そもそも、罪人用の部屋に期待すべきことではないか。
「続き、聞かなくていいんですか?」
私の言葉に、ルパインさんは声をあげて笑う。
嘲るように。
「そうさな……首を刎ねられる時か串刺しになる時か、塔から飛び降りる時か。自身の最期の言葉として、物語を締めくくってくれ」
「そんな短くまとまるお話じゃないですけど」
「じゃあ、ヒカリ先生の次回作にご期待ください、と俺がまとめといてやるよ」
打ち切り作品になってしまった。
だが、とルパインさんは続ける。
「死に方くらいは選ばせてやるよ。ここまでの連載に報いてな」
「じゃあーー」
と私は希望を述べる。
ルパインさんは「承知した」と短く答えた。
無駄話も多少の効果はあったのかもしれない。
ミズーリ村同様、大成功はしなかったけれど。
私の2回目の死因。
選べたところで、どうにかなるものではないけれど。
ただ、助かる可能性が少しでもあるのなら、私はそれに賭けよう。
第2の生を兄さんと生きるために。
けど、できることなら期待したい。
誰かが、私を助けにきてくれることを。
1人で勝手に、
全て背負い込んでおいて、
お別れの挨拶までしておいて、
身勝手な願いとは、分かっているけどさ。
「兄さん……」
私は空を眺めて、祈る。
当然、返答はない。
私は事も無げに言う。
当たり前のことを、当たり前に言う。
「だから、俺たちが見つかるから問題なんだよ!」
そう言ったのはヘーゲルさんだった。
「別に見つかっていいじゃない。私と来る選択をした時点で、これまでの生活には戻れない。決別。門番の兵士に止められたところで、この乗り物で正面突破すればいい。護送用のこれが、何も言わずに突っ込んでくる。その非日常に対して冷静に、かつ最適な行動を瞬時に取れる人はそういないと思うけれどな」
同じ繰り返しの日々。
たとえ訓練を繰り返しても、
たとえ緊急時用に配備されている兵士でも、
その緊急が起きた時に対処できるとは限らない。
それが、味方の手によって引き起こされるものなら、なおの事。
私の回答に、ヘーゲルさんは閉口し、ルパインさんはくすりと笑う。
「見つかるのが問題と思っていたが、見つかる前提で進めば問題にすらならない、ということか。嬢ちゃん、若いのに考えが大人びているね」
「お褒めにあずかり恐悦至極」
と私はルパインさんの賛辞に冗長っぽく返す。
たしかに、元女子高生としては大人びているのかもしれない。
卒業式の帰りのあの日から、
交通事故で命を一度失ったあの日から。
私は普通の元女子高生ではなくなったから。
ーー
意識があるのは驚きだったけど。
モノに触れられることができるのはびっくりだったけど。
私が死んでけっこうな月日が流れていることは衝撃だったけど。
あの日以降、私は『特別』な幽霊になったのだ。
兄さんの部屋に住み着く、特別な幽霊。
急に兄さんの部屋に復活したのは仰天だったけど。
普通に会話もできて、意思の疎通もできる。
料理もできるし、掃除もできる。
読書もできるし、ネットも使える。
お風呂も入るし、ご飯も食べれる。
一度死んだ、ということ以外は普通の人間。
ただ、現実的に死んだことになっている山野緋香里としては『普通』に生きられない。
表舞台の生活は許されない。
ばれたら大変なことになる。
死んだはずの人間が、急に生き返って生活している。
大事件だ、
神様の再来だ。
けれど、私は神様ではない。
奇跡的な何かで復活したけど、
奇跡的な何かを起こすことはできない。
ただの人間だったモノ。
今は何かよくわからない、人の形、人の機能があるナニカ。
兄さんも何も言わなかった。
私との普通の生活という、普通じゃない状況を何も言わず受け止めてくれた。
まあ、あの人の場合、仕事に疲れすぎて、冷静突っ込みを忘れていただけなのかもしれないけれど。
なのでとりあえず、私のこの暇を持て余す日常を兄さんのために使おうと思った。
この不思議な存在である私がいつ消えるかはわからないけれど、
それまでは兄さんの生活を、人生を良くするために使おうと考えた。
隣から見れば、ぬるま湯の地獄に浸かって抜け出せない兄さんを救うために何かしようとした。
そこで丁度いい本が見つかった。
『ライフハック入門』
人生は小さな習慣の積み重ねと考え方一つで変えられる、そういった趣旨の本。
だから私はその手法を使って、兄さんの人生をハッキングしてみようと思った。
その地獄から救い出すために。
奇跡を起こせない私でも使える、人間が編み出したの知恵と手段を使って。
ただ、また奇跡的な何かが起こって、私どころか兄さん含めてこんな世界に飛ばされるとは思っていなかったけど。
神様、
もしいるとしたら私に何を期待しているんですか?
私に、何をさせたいんですか?
時々暇をみて、気配を感じない空に尋ねた。
当然、答えが返ってきたことはない。
ーー
「いやはや、面白いストーリーだ。そのあと、つまりはこのグラッセから脱出してからどうやって成功していくか、是非とも聞きたいところだが……そろそろお別れのようだ」
塔の入り口が見えてきた。
あれが突き落とし処刑用の塔か。そこの近くに連れてこられた、ということはそこに囚人用の部屋があるのかな。
けど、逮捕翌日処刑の強行日程が普通、というのなら部屋のクオリティは期待できないかな。そもそも、罪人用の部屋に期待すべきことではないか。
「続き、聞かなくていいんですか?」
私の言葉に、ルパインさんは声をあげて笑う。
嘲るように。
「そうさな……首を刎ねられる時か串刺しになる時か、塔から飛び降りる時か。自身の最期の言葉として、物語を締めくくってくれ」
「そんな短くまとまるお話じゃないですけど」
「じゃあ、ヒカリ先生の次回作にご期待ください、と俺がまとめといてやるよ」
打ち切り作品になってしまった。
だが、とルパインさんは続ける。
「死に方くらいは選ばせてやるよ。ここまでの連載に報いてな」
「じゃあーー」
と私は希望を述べる。
ルパインさんは「承知した」と短く答えた。
無駄話も多少の効果はあったのかもしれない。
ミズーリ村同様、大成功はしなかったけれど。
私の2回目の死因。
選べたところで、どうにかなるものではないけれど。
ただ、助かる可能性が少しでもあるのなら、私はそれに賭けよう。
第2の生を兄さんと生きるために。
けど、できることなら期待したい。
誰かが、私を助けにきてくれることを。
1人で勝手に、
全て背負い込んでおいて、
お別れの挨拶までしておいて、
身勝手な願いとは、分かっているけどさ。
「兄さん……」
私は空を眺めて、祈る。
当然、返答はない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ヒロインだと言われましたが、人違いです!
みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。
って、ベタすぎなので勘弁してください。
しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。
私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。
貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!
Levi
ファンタジー
前世は日本で超絶貧乏家庭に育った美樹は、ひょんなことから異世界で覚醒。そして姫として生まれ変わっているのを知ったけど、その国は超絶貧乏王国。 美樹は貧乏生活でのノウハウで王国を救おうと心に決めた!
※エブリスタさん版をベースに、一部少し文字を足したり引いたり直したりしています
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる