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24.自分を責めても何も解決しないよ、それより顔をあげて今できることを考えよう!
しおりを挟む「タクミさん、大丈夫ですか?」
ライナスさんの呼びかけで、私は失っていた意識を取り戻す。
見知らぬ天井、
見知らぬ本棚、
ライナスさんとアリシア、見知った顔ぶれ。
そうか、私はあの時ーー
「良かった、突然倒れるから心配しましたよ」
「あれからどれだけ経った? 緋香里ーー妹は⁉︎」
私の問いかけに、ライナスさんは苦笑する。
「ヒカリさんはたぶん今頃牢獄の中です。そして、タクミさんが倒れていたのは一時間程度。なので、まだ彼女は無事なはずです。一般的に、罪人は逮捕翌日公開処刑ですから、今日一日はよっぽど大丈夫なはずです」
まだ一時間しか経っていない、
まだ妹は生きている。
なら、私が取るべき選択肢は一つ。
……だが、どうするか。
妹が連れていかれた牢獄の場所は知らないし、
辿り着いたところで、どうやってあいつを解放すればいいのか。
自分の無力さに腹がたつ。
助けなくてはいけないのに、
妹を助けるのが兄なのに、
私は途方もなく無力だ。
リョクジンから逃げる時、
ミズーリ村から脱走する時、
罪を全て背負い込んで庇ってくれた時、
私はいつも助けられてばかりだ。
この世界に飛ばされる前も、
死んでいたはずの彼女は、いつも私を助けてくれた。
死んだように生きている私を、
生き生きと、楽しそうに笑いながら一緒にいてくれた。
『大丈夫、兄さん?』
『私に任せて、兄さんはのんびりしてて』
『兄さんは頑張り過ぎなんだよ、ちょっとは肩の力を抜こう』
『兄さん』
妹の姿が頭の中で再生される。
繰り返し、
繰り返し。
思い出の彼女は笑っていて、
『さよなら、兄さん』
最期の言葉の時も、彼女は笑ってくれていた。
なのに私はそんな彼女を助けることができない。
彼女に報いることができない。
私は、
私は……。
ライナスさんは、項垂れる私の前にてくてくと歩み寄る。
そして、人差し指をピンと立てる。
「妹さんを助けるという問題から目を背けないでください。謝っても、悔やんでも現状は変わりません。それよりも、解決のために今できること。今タクミさんが持っている手札で何ができるかを考えましょう……彼女がいたら、たぶんそう言うと思います」
何ができるか。
何もできないからのこの状況だ。
ここにいるのは、私とライナスさんとアリシアだけ。
頼りになるかもしれないファザさんは未だ戻らない。そもそも、私たちがここにいるかも知らない可能性もある。
「タクミさん、僕の師匠兼恋人が何者だったかお忘れですか?」
ライナスさんは、ポンと軽快な効果音とともにどこからともなく箒と帽子を出現させた。
どことなく、魔女を連想するような装備。
私の世界でも一般的な、彼女たちが身につける道具。
「彼女の名前はアルベイス、魔法使いです。そして僕はその弟子兼恋人。才能はないですけど、下準備と頭数、それと知恵と勇気があればそれなりのことは可能にできる男のつもりです」
と、ライナスさんはふふんと得意げに笑った。
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