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25.先の読めない未来を考えるより、今を全力で生きよう!それが望む未来にきっとつながる
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「魔法が使えるなら、早く緋香里を助けてくれよ!」
無力な私は叫ぶ。
どうしてあの場で見殺しにしたんだ、と。
魔法なんて都合のいいものが使えるんだったら、
あの場で助けてくれればいいじゃないか、と。
詰め寄る私に、ライナスさんは苦笑で答えた。
「ごめんなさい。得意げに名乗っておいてアレですが、僕の魔法ーーというか魔術はアルベイスのそれとはレベルとジャンルが違うのです。彼女と違って攻撃的なものは一切使えないんです」
ただ、とライナスさんはポンと再び軽快な音とともに何かを出現させる。
小鳥だった。
つぶらな瞳の、白いふわふわとした小鳥。
シマエナガのような、ステータスを可愛さに全振りしたような外見。
確かに戦闘力はまるで期待できそうにない。
ぱたぱたと羽音をたてながら、彼の肩にとまった。
「こんな感じに魔術生命体を生み出したり、さっきみたいに物を出したり、他人の能力を移し替えるとかーー補助系の魔術しか使えないのです」
魔法・魔術と言っても『何でも』できるわけではないか。
それが叶うなら、彼は彼女と死に別れることはなかっただろう。
あくまで、私が知らない法則を使っているというだけ。
高度に科学が発展していた私の世界でも、
携帯電話や飛行機、
核爆弾や生物兵器は実用化されても、
人体練成や不老不死は実現されなかった。
過去の人にとってみれば魔法のような『道具』も、彼らがずっと願い続けたものを叶えることはできなかった。
何でもはできない。
出来ることだけ、出来たことだけ。
相変わらず、私は自分のことを棚にあげて非難ばかりしている。
自己嫌悪だけが、胸に満ちる。
だが、そうしていても始まらない。
今できることを、妹を救うためにできることを考えて実行する。
自己嫌悪に浸るのは、その後でいくらでもできる。
成功しようと、失敗しようと。
呼吸を整え、冷静さを取り戻そうとする。
妹が囚われていることの焦りと苛立ち、
自分の無力感。
邪魔にしかならない感情を、呼吸とともに吐き出す。
そういえば、この世界に飛ばされたばかりの時に妹に教えてもらった気がする。
呼吸は大事だと、
深呼吸にはリラックス効果があると。
まずは全力で息を吐き切る、
体中から絞り出すように、
限界まで吐き切る。
脳内があ呼吸のことで頭が満たされるほどに、
限界まで吐く。
すると、その反動で自然に吸える。
体中に酸素が供給されるのを感じる。
生きていると実感できる。
思考が少しクリアになるのを感じる。
ーー
「でも、ちゃんと戦術を立てれば、妹さんを助けることは十分に可能……だと思います」
自信無さげなライナスさんは言う。
先の口調は、絶望に沈む私を鼓舞するために頑張ってくれていたのかもしれない。
彼だって、心苦しいのだ。
彼だって自身の無力さを嘆いているのだ。
それは黙って話を聞いているアリシアも同じこと。
辛いのは、私だけじゃない。
「すまない。急に怒鳴って悪かった」
私の謝罪にライナスさんは苦笑する。
「気にしないでください。大事な人が大変なんですから、当然の反応です」
ではとりあえず、とライナスさんは肩に乗っていた小鳥を外に向けて飛ばした。
小鳥はパタパタと、思いの外スピード感のある動きで移動していく。
「戦力を増やしましょう。あの子には旧青空お悩み相談室に行ってもらいました。簡単な言葉なら喋ることができるので、ファザさんをここに呼んできてもらいます」
だが、いざファザさんが戻ってきたところでどうすべきか。
『戦力』という言葉がぴったりとはまる屈強な男である。
数人くらいの兵士が相手なら、武装していようと素手でも圧倒することができるだろう。
しかし、牢獄から妹を救い出し、さらに街から逃げるとなると、相手は数人で済むとは思えない。
十数人、
いや数十人。
数の暴力、
体力の限界。
ファザさん一人に頼り切る戦略は取るべきではなさそうだ。
それに、逃げるということはあの二人を危険な目に合わせることになる。
私たちの都合で、また脱走者にすることになる。
村を捨て去り、
街を逃げ去る。
少女ならトラウマになりかねない逃避行。
それを私は強いろうとしている。
「お兄……さん……どう……したの?」
目の前の少女は、無垢な瞳で私を見る。
妹を助ける大義のために、彼女の人生の可能性を奪おうとしている。
うまくいけばいい。
万事順調に成功して、昨日までの日々のような幸せの日々を取り戻すことができればいい。
だけれど、失敗したときはどうなる。
妹も救えず、
逃げた先での生活もうまくいかないとき、
彼女は私をなんと思うだろうか。
「大……丈夫……お兄さん……頑張……ろ」
アリシアはてとてとと私の近くに歩みより、そう激励した。
小さな両手を握りしめ、
精一杯の大きな声で、
私に伝える。
儚げな少女の目には、私よりずっと強い意志が宿っていると感じた。
失敗できないないなら、失敗しなければいい。
そうならないために、全力を尽くす。
今に集中して、今できることだけをする。
未来が成功するか、失敗するか、
どうなるかは考えない。
みんなで、今を生きる。
「ありがとう、アリシア」
私は彼女の頭を撫でて、感謝した。
無力な私は叫ぶ。
どうしてあの場で見殺しにしたんだ、と。
魔法なんて都合のいいものが使えるんだったら、
あの場で助けてくれればいいじゃないか、と。
詰め寄る私に、ライナスさんは苦笑で答えた。
「ごめんなさい。得意げに名乗っておいてアレですが、僕の魔法ーーというか魔術はアルベイスのそれとはレベルとジャンルが違うのです。彼女と違って攻撃的なものは一切使えないんです」
ただ、とライナスさんはポンと再び軽快な音とともに何かを出現させる。
小鳥だった。
つぶらな瞳の、白いふわふわとした小鳥。
シマエナガのような、ステータスを可愛さに全振りしたような外見。
確かに戦闘力はまるで期待できそうにない。
ぱたぱたと羽音をたてながら、彼の肩にとまった。
「こんな感じに魔術生命体を生み出したり、さっきみたいに物を出したり、他人の能力を移し替えるとかーー補助系の魔術しか使えないのです」
魔法・魔術と言っても『何でも』できるわけではないか。
それが叶うなら、彼は彼女と死に別れることはなかっただろう。
あくまで、私が知らない法則を使っているというだけ。
高度に科学が発展していた私の世界でも、
携帯電話や飛行機、
核爆弾や生物兵器は実用化されても、
人体練成や不老不死は実現されなかった。
過去の人にとってみれば魔法のような『道具』も、彼らがずっと願い続けたものを叶えることはできなかった。
何でもはできない。
出来ることだけ、出来たことだけ。
相変わらず、私は自分のことを棚にあげて非難ばかりしている。
自己嫌悪だけが、胸に満ちる。
だが、そうしていても始まらない。
今できることを、妹を救うためにできることを考えて実行する。
自己嫌悪に浸るのは、その後でいくらでもできる。
成功しようと、失敗しようと。
呼吸を整え、冷静さを取り戻そうとする。
妹が囚われていることの焦りと苛立ち、
自分の無力感。
邪魔にしかならない感情を、呼吸とともに吐き出す。
そういえば、この世界に飛ばされたばかりの時に妹に教えてもらった気がする。
呼吸は大事だと、
深呼吸にはリラックス効果があると。
まずは全力で息を吐き切る、
体中から絞り出すように、
限界まで吐き切る。
脳内があ呼吸のことで頭が満たされるほどに、
限界まで吐く。
すると、その反動で自然に吸える。
体中に酸素が供給されるのを感じる。
生きていると実感できる。
思考が少しクリアになるのを感じる。
ーー
「でも、ちゃんと戦術を立てれば、妹さんを助けることは十分に可能……だと思います」
自信無さげなライナスさんは言う。
先の口調は、絶望に沈む私を鼓舞するために頑張ってくれていたのかもしれない。
彼だって、心苦しいのだ。
彼だって自身の無力さを嘆いているのだ。
それは黙って話を聞いているアリシアも同じこと。
辛いのは、私だけじゃない。
「すまない。急に怒鳴って悪かった」
私の謝罪にライナスさんは苦笑する。
「気にしないでください。大事な人が大変なんですから、当然の反応です」
ではとりあえず、とライナスさんは肩に乗っていた小鳥を外に向けて飛ばした。
小鳥はパタパタと、思いの外スピード感のある動きで移動していく。
「戦力を増やしましょう。あの子には旧青空お悩み相談室に行ってもらいました。簡単な言葉なら喋ることができるので、ファザさんをここに呼んできてもらいます」
だが、いざファザさんが戻ってきたところでどうすべきか。
『戦力』という言葉がぴったりとはまる屈強な男である。
数人くらいの兵士が相手なら、武装していようと素手でも圧倒することができるだろう。
しかし、牢獄から妹を救い出し、さらに街から逃げるとなると、相手は数人で済むとは思えない。
十数人、
いや数十人。
数の暴力、
体力の限界。
ファザさん一人に頼り切る戦略は取るべきではなさそうだ。
それに、逃げるということはあの二人を危険な目に合わせることになる。
私たちの都合で、また脱走者にすることになる。
村を捨て去り、
街を逃げ去る。
少女ならトラウマになりかねない逃避行。
それを私は強いろうとしている。
「お兄……さん……どう……したの?」
目の前の少女は、無垢な瞳で私を見る。
妹を助ける大義のために、彼女の人生の可能性を奪おうとしている。
うまくいけばいい。
万事順調に成功して、昨日までの日々のような幸せの日々を取り戻すことができればいい。
だけれど、失敗したときはどうなる。
妹も救えず、
逃げた先での生活もうまくいかないとき、
彼女は私をなんと思うだろうか。
「大……丈夫……お兄さん……頑張……ろ」
アリシアはてとてとと私の近くに歩みより、そう激励した。
小さな両手を握りしめ、
精一杯の大きな声で、
私に伝える。
儚げな少女の目には、私よりずっと強い意志が宿っていると感じた。
失敗できないないなら、失敗しなければいい。
そうならないために、全力を尽くす。
今に集中して、今できることだけをする。
未来が成功するか、失敗するか、
どうなるかは考えない。
みんなで、今を生きる。
「ありがとう、アリシア」
私は彼女の頭を撫でて、感謝した。
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