こんな時どうする? 異世界兄妹物語

くわっと

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29.何かを始めるに場所も時間も関係ない。今、ここで始めるのが最良かつ最速!

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 ダチョウ……否、ポックルの乗り心地は良かった。
 バイクも乗馬も乗ったことがない私でも、十分に乗りこなすことができた。

 現在、ライナスさんと共に妹が囚われている塔に向けて爆走中である。
 右肩には通信用の小鳥(名称不明)を乗せ、
 左手にはライナスさんから渡された謎の硬い棒(名称不明)を持っている。
 見た感じはただの金属製の棒だ。それなり重い。ファザさんの筋力のお陰で、もちつづけても疲労感を感じないが。
 中国の武将になったような気分。

 慣れない乗り物に、知らない道、加えて片手運転というのは安全上どうなのかと突っ込みたくなのるが、今から監獄襲撃という十二分に危険な行為を実行するため、その手の細かい不安は無視した。

 いつもなら、それでも気になっていただろうがファザさんから借り受けた『力』の効果で私も舞い上がっているのかもしれない。
 健全な精神は健全な肉体に宿る。
 それは強固な肉体を得れば、強固な精神を手に入れる、ということも示唆している。
 これが終わったら、筋トレでも始めてみようか。
 異世界にきて、新たに始めることが筋トレとか、なんとも笑えない冗談だが。
 けど、妹がいたら『何かを始めるに場所も時間も関係ない。今、ここで始めるのが最良かつ最速なんだよ』とか言いそうだ。

 そんな姿を思い描き、私は一人笑う。
 だが、先のライナスさんのようにうっかりミスをしないよう気は引き締める。
 これは遊びではないのだ。
 命がけの救出劇なのだ。

「タクミさん、移動しながらで申し訳ありませんが、作戦の確認をします」

 私に並走するライナスさんは言う。

「このまま、二人で塔までポックルで駆け抜けます。塔までのルートは把握していますし、妹さんがどの辺に囚われているかは、分かり次第その右肩のパナップが教えてくれます」

 この子の名前はパナップと言うのか。
 どことなく、美味しそうな名前だ。
 ……食べないけど。
 パナップは、睨むように私を見た。だが、ベースが可愛い小鳥なので迫力はまるでない。
 食べないから安心してくれ。

「塔が見えたら、僕が先行します。派手に囮になりますが、タクミさんはその場に待機してください。十分に敵兵を塔から引き離したら、パナップ経由で伝えます」

 便利な小鳥、パナップ。
 見て癒され、
 言葉を伝え、
 偵察でもできる。

 だが、『派手』という言葉が引っかかった。
 映画でも漫画でも、『派手』という単語がつくとろくなことにならない。
 本人がいいなら、仕方がないけれど。
 
「また、ポックルは頭を三回撫でると数秒で消えます。僕が囮になっている間に、それで消して走って塔内に侵入してください。妹さんの所に辿り着いたら、部屋で渡した『アレ』で扉を破壊してください」

 アレ、とはポケットに入っているアレのことだ。
 爆発物。
 ピンを抜いて、コックを外す。
 するとあら不思議、爆発が起こって扉が開くーー予定だ。
 現代では化学の、ここでは魔術の産物。

「手錠を破壊する手段はないので、そのまま脱出です。塔内を全力で駆け抜けて、外に出てください。ポックルは三回手を叩けば、タクミさんの前に再度出現します。帰りはそれで妹さんと逃げてください。二人分の重量なら、ポックルは今のスピードは維持できるはずです。僕はタクミさんたちが逃げ切ったら、その後を追います。パナップで大まかな位置は確認できるので、街の外へ好きに脱出してください」

 彼とは別々に逃げるのか。
 相手取る数に差がある分、不安がある。
 彼に申し訳無さを感じてしまう。
 ここまでしてもらっておいて、そんな感情を思う資格は、本来はないのだろうが。

「やっぱり、ライナスさんの負担が大きすぎないか」

「大きいとか小さいの問題ではないです。できるか、できないか。大事なところはそこです。今のタクミさんはファザさんの力で近接戦は最強です。けど、僕は肉弾戦になったらアリシアちゃん相手でも勝てないくらい貧弱です。塔内には何人か兵士が残っているはずです。その相手は、今のタクミさんにしかできません。だから、お願いします。僕は逃げる事は得意なんです。こうやって、魔術生命体を出したりすることもできますしね。適材適所、です。」

 それに、とライナスさんは続ける。

「妹を助ける、というのはいつの時代、どんな世界でもお兄さんの役割です。僕がその役目を横取りしたら、彼女もがっかりするでしょう」

 と笑いかけた。
 私もそれに同意し、笑った。
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