こんな時どうする? 異世界兄妹物語

くわっと

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30.目的を達成するためには、時に愚者の振りをするのも必要だ!

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「見えてきたました、あれが妹さんが囚われている場所です!」

 禍々しくそびえ立つ、古びた塔。
 街の入り口で見たときは、ただのアンティークっぽい建物にしか見えなかったが。
 間近で……妹が囚われているという理由がつくと、こうもイメージが変わるものか。

「では、僕は先行します!」

 ライナスさんはそう告げると、ポックルのスピードを上げ、前に出る。
 
「パナップの合図が出るまで、物陰に潜んでいてくださいね」

 走り去るライナスさんを見送り、私はポックルを止める。
 辺りを見回し、適当な物陰に潜む。
 周囲は廃墟、まではいかないが寂れた建物がいくつかあった。
 隠れるのには十分だ。
 私は、塔の入り口が確認できる場所まで移動し、ポックルを一時解除した。ライナスさんが教えてくれたように、頭を三回撫でると砂煙と共に姿を消した。
 念のため、再出現の確認もしてみた。
 三回、パンパンとお参りでもするかのように手を叩く。
 すると、ボンと鈍い音とともにポックルは現れた。
 ……便利な術だな。
 私は感心しつつ、再びポックルの頭を三回撫で、姿を消した。


 呼吸を整え、武器である謎の棒に力を込める。
 そして、しゅん、しゅんと軽く振ってみる。
 風切り音が気持ちいい。
 元の私の身体能力では、ここまで軽やかに扱うことは難しかっただろう。
 剣道の竹刀でさえ、うまく扱えない程の非力さとセンスの無さを持つ私だ。ここは素直にファザさんに感謝である。

 遠目に、入り口を確認する。
 槍と剣で武装した兵士が二人。
 見慣れたフルプレートの鎧。
 あれが塔の門番なのだろう。だが、あくまで門を守っているだけであり、中にはライナスさんが指摘した通り看守や非常時用の兵士が何十人もいるに違いない。

 塔、と表現しているものの、細長い外見であるだけで、その収容スペースはそれなりにありそうだ。
 加えて、空間が広いということはそれだけ人がいるということだ。囚人も、それを管理する人間も。
 だが、単純に法を破ったものが即日死刑になるなら、囚人の数はそうはいないはずだ。併せて、犯罪イコール即死刑、というルールならば尚更。ルールを破るのは、私みたいな無知な旅人か、あるいはそれを破るだけの『動機』を持つ人だけ。
……まあ、思考を巡らせても仕方ないことかもしれないが。

 死にたくないから誰も法を破ろうとしない。
 自由を守るための、非情な抑止力。
 破った人は処刑されいなくなるから、自然と街の秩序は保たれる。
 腐ったみかんは、すぐに取り除く、
 それがこの街のルール。
 平和のための、暴力的なルール。
 
ーー

「おらおらおら!監獄破りだ!」

 派手な叫び声とともに、ライナスさんが入り口に駆け込む姿が視界に入る。
 彼らしくもない、宣言通りの派手な登場。
 門番たる兵士は、武器の切っ先をライナスさんに向け、侵入を阻もうと身構える。
 ライナスさんは薄く笑い、騎乗しているポックルを解除する。
 そして、両手から例の爆発物を出現させた。
 どこかの傭兵のように、ワイルドに口でピンを抜き、コックも外し、入り口に投擲する。
 兵士たちは手榴弾の概念を知らないのか、はたまた突然の投擲に怯んだのか、キョトンとしている。
 数秒後、無情の爆発と轟音が辺りに響く。
 塔の入り口は無残に煤けて、爆発の直撃をくらった兵士は数メートル先へと吹き飛ばされていた。
 
「かかってこいやー!」

 らしくもない叫びを上げ、土煙上がる塔の入り口にライナスさんは侵入する。
 ライナスさん、フルスロットルである。
 爆発音と煙が10秒毎に鳴り響く。
 塔は小刻みに揺れ、
 兵士たちの悲鳴と、
 ライナスさんの雄叫びが聞こえる。

 パナップを通じての、突入の合図はまだない。
 ライナスさんは、塔の中の兵士をできるだけあぶり出して、妹の周りの警備を手薄にする考えらしい。
 まさか爆発物をふんだんに使っての囮、とは予想もしなかったが。
 囮どころか殲滅行動をしているようにしか見えない。
 私が倒すべき敵は残っていないのかもしれないな。

 待つこと数分、もくもくと土煙が吹き出す入り口からライナスさんが現れる。
 続いて、兵士たちも続々と中から出てくる。
 一、二、三……数えるのが面倒になるほど、なかから次々に出てくる。

「やっぱりまた今度にしますー!」

 情けない風に、ライナスさんは叫ぶ。
 両手をばたばたと振り上げ、精一杯自身の存在を目出せながら、兵士たちの注意をひく。ライナスさんの目論見通り、彼らは重そうな鎧を揺らしながら、追いかけていく。

『ユケ、タクミ』

 悪魔の囁きのような、重々しい声質が耳に響く。
 
『イモウト、タスケル』

 その声の主は、可愛らしい小鳥の見た目のパナップであった。
 声質は予想外だったが、私は立ち上がり、塔へ向かい走り出す。
 私のターンが、始まった。
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