こんな時どうする? 異世界兄妹物語

くわっと

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32.力に酔いしれて目的を忘れてはいけない!目的と手段の逆転に気をつけろ!

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 塔内は煙が立ち込めて視界が悪かった。
 目を細めつつ、周囲を確認すると爆発の影響がこれでもか、というくらい出ている。
 地面に倒れ、動かない兵士、 
 崩壊している牢の扉、
 黒く煤けた壁。
 ライナスさんの突入だけで十二分に救出準備は整えられていた。
 私、山野巧は彼への感謝の気持ちを胸に進む。

『イモウト、ウエ、イモウト、ウエ』

 パナップの指示に従い、階段を探す。
 併せて、周囲の状況を確認する。
 崩壊しかけの牢獄には、囚人はやはりいなかった。
 がらんどうの空間が広がっている。
 私たちの襲撃に合わせて、一部の囚人も蜂起することを若干期待もしていたが、そもそも囚人自体がいないのならば蜂起のしようがない。

「階段発見」

 小さく声に出して、状況を確認する。
 言語化するのは状況認識をする上で重要だ。
 だから、独り言は悪いことじゃないんだよ、と妹がよく言っていた。
 ……併せて、相槌をしてくれる相方がいないのは寂しいことだけど、とも言っていたが。

ーー

 二階に到着。
 この階は爆発の影響が少ない。
 崩壊しているのは階段付近だけで、その奥には大した影響は見られない。
 たぶん、ライナスさんはここで引き返したのだろう。
 それでも、十分すぎる成果を上げてくれたが。

 ここからは注意して進まなくては。
 私は武器である棒に力を込めた。
 今こうしている間にも、ライナスさんは囮を頑張ってくれている。
 私も頑張らなくては。

「いたぞ!侵入者だ!」

「何、また戻ってきたのか!」

「また変な技を使うかもしれない、気をつけろ!」

 見つかった。
 フルプレートの兵士が数人、こちらめがけて走ってくる。
 注意しても、しなくても大した意味はなかったらしい。
 ならば、と私は足に力を込める。
 
「山野巧、推して参る!」

 精一杯格好をつけて、
 彼らに向けて突撃する。

 相手の武装は槍と剣。
 リーチとしては、若干こちらが有利だが、一撃でももらえば状況は一転する。
 刃物というのは厄介だ。
 鎧で防御していない分、余計に。
 二人の兵士が先行して、攻撃をしかける。
 切っ先を私に向け、叫びながら突っ込んでくる。 

「どっせい!」

 私も叫びつつ、兵士に向かって棒を横薙ぎに放った。
 右と左に二回。
 ファザさんの筋力、
 棒の長さ、
 物理法則。

 がん、がんと短く鈍い音が響く。
 兵士たちは呻き声を上げ、それぞれ壁に吹き飛ぶ。
 ぐったりとして動かない。
 一撃でこの威力、我ながらーーいや、私の力ではないが、この筋力は恐ろしい。

「なんて力だ……武装しているあいつらを一撃で」

「怯むな、俺たちがここで倒さないと被害は拡大する。やるぞっ」

 背後に控えてきた兵士も突撃してくる。
 恐怖を拭い去るためか、「ぬぉぉおおー!」と声を上げて。

 私のやることは変わらなかった。
 力を入れて、棒を薙ぐ。
 あるいは、
 力を入れて、棒を振り下ろす。

 どちらも私の前に一撃で、倒れ伏した。
 ……なんだろう、この高揚感。
 この達成感。
 胸をすくような、この爽快感は。
 暴力に、酔っているとでも言うのか。

『イモウト、モット、ウエ』

 パナップの低音ボイスで我に帰る。

「いかん、今は妹を助けに行かねばっ」

 私は痛みで床に悶えている兵士を置いて、牢獄の牢屋を走る。
 急がねば、
 この力で妹を救わねば。
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