こんな時どうする? 異世界兄妹物語

くわっと

文字の大きさ
37 / 45

36.戦う前から相手の実力にビビるな、意外になんとかなる!

しおりを挟む
 とうとう妹がいる階に到着した。
 階段を登りきり、様子を確認する。
 兵士の数は、三階同様少ない。
 というか、目視で確認できるのは一人のみ。
 牢屋側を向いているということは、その話相手は囚人だろう。
 妹の話相手になっているのかもしれない。

「誰だ?」

 私の気配、あるいは足音に気づいたのか、兵士は槍の先端をこちらに向ける。
 不意打ちで、そのまま倒してしまおうという私の浅はかな作戦は実行できそうにない。
 先の兵士との戦闘で、私も随分と手傷を負った。
 体中が打撲で痛いし、
 胸からは出血はある程度落ち着いたとはいえ、穴が開きかけている。
 棒を振り回す体力は残っているが、熟練者相手ならば勝てる見込みは低い。

 とは言っても、私にできることなどそうはない。

「どっせいーっ!」

 雄叫びをあげ、兵士に向かい突撃する。
 横薙ぎに振れるよう、棒を構えて、兵士との距離を詰める。
 突然の状況に困惑しているのか、私の攻撃をカウンターする腹づもりなのか、兵士は構えたまま動かない。
 相手の考えなど、予測したところで始まらない。
 この一撃、
 この一振りで仕留める。
 技術を筋力でねじ伏せる。

「ぐ……ふ、あぁーー」

 兵士は痛みに呻きながら、吹き飛んだ。
 槍の持ち手部分で防御し、直撃は避けたようだが、先の兵士のような器用な真似はしていないようだ。
 プルプルと震えながら、立ち上がり、戦闘を続行しようと私に槍を向ける。
 だが、ダメージが大きいのかすぐに床に倒れ込んでしまう。

 私の目的は、敵の殲滅ではなく、妹を助けることだ。
 先の兵士の言葉では『首を刎ねるまで戦い』ということらしいが、フルプレートの鎧をつけられては、首の刎ねようがない。
 私はその鎧の外し方など知らないし、そもそも悠長に鎧を脱がしている時間などない。

「兄さん?」

 牢屋から私を呼ぶ声がする。
 その声の主は、私の妹、山野緋香里その人に間違いはなかった。
 まだ、捕縛から1日すら経っていないが、随分と久しぶりに会う気がする。
 
 妹は後ろ手に縛られたまま、不自由そうだ。
 てくてくと私の方に歩いてくる。

「男子三日会わざれば刮目して見よ、と諺にあるけれど、いくらなんでも成長しすぎじゃない?ファザさん並みの筋肉じゃん」

 ははっと妹は笑いかける。
 まだそんんあ余裕はあるらしい。
 死を目の前にして、ストレスでどうにかなっているのかと少し心配していたが、彼女には無用のようだ。
 また、右肩にパナップと同じような小鳥が乗っかっている。
 ……良かった、これでライナスさんは私たちに合流できる。

「色々あったんだよ、色々。説明は後だ。とにかく脱出が優先だ。この扉を破壊するから、少し離れてて」

「破壊って、いくら筋力上昇しても、人の力でこれを破壊するのは難しいと思うけれど」

 カンカンと、硬さを強調するように、妹は扉を叩いた。
 当然、素手で扉をこじ開ける、というのは困難だ。
 ぐにゃり、と妹が通れる隙間を開けるのは無理だろう。
 だから、ここは予定通りライナスさんからもらった爆発物を使用する。

「何それ?この世界観にそぐわない、近代的かつ暴力的な形をしているよ」

「その通りだ。出どころはライナスさんの彼女だから詳細は不明だけど、威力は保証済みだ」

「なるほど。外でどかんどかん言ってたのはその音か」

 妹はすたこらと部屋の隅へ移動し、壁に顔を向けて縮こまる。
 対ショック姿勢。
 両手が塞がれているから、十分ではないけれど仕方がない。

 ピンを抜いて、コックを外す。
 扉の前にちょこんと置いて、私を大急ぎで距離をとる。
 待つこと数秒。
 轟音と共に、扉は崩れ落ちた。

「プリズン……ブレイク!」

 妹は満足そうに笑った。
 
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi
ファンタジー
前世は日本で超絶貧乏家庭に育った美樹は、ひょんなことから異世界で覚醒。そして姫として生まれ変わっているのを知ったけど、その国は超絶貧乏王国。 美樹は貧乏生活でのノウハウで王国を救おうと心に決めた! ※エブリスタさん版をベースに、一部少し文字を足したり引いたり直したりしています

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...