こんな時どうする? 異世界兄妹物語

くわっと

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37.新しい出会いはどこにあるか分からない!

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「待て……ここからは……逃さないっ」

 息も絶え絶えに、
 振り絞るように、
 先程まで床に伏せていた兵士は、私たちに向かい言った。
 震える腕で槍を持ちながら、
 痛みを耐える体を支えながら、
 私たちに相対する。

「ヘーゲルさん、終わりにしましょう。命は大事にするもんですよ。仕事は大事だけれど、それはあなたの全てじゃないでしょ?」

「黙っ……れ!」

 妹の言葉に兵士はーーヘーゲルは苛立ちを隠さない。
 槍の先端を妹の方に向け、精一杯の威嚇をする。
 だが、満身創痍の彼に私も妹も何の恐怖も感じない。
 ただ、哀れと虚しさを感じるだけだ。

「俺は……戦わなくちゃいけないっ、ここでお前らと戦って死のうと、生き残って処刑されようと……同じだ! なら、俺はお前らを倒す、倒さなくちゃいけないーー倒れた仲間たちのためにも、お前らの息の根を止めなくては、いけないっ!」

 ヘーゲルはそう言うと、自らフルプレートの鎧を剥いでいく。
 パチパチと、
 カランコロンと、
 接合部を順にといて、無造作にその亡骸を床に捨てていく。
 彼の、
 いやの姿が徐々に露わになっていく。
 女性特有の滑らかなボディラインが視界に現れる。 

 隙丸出しの様子だったが、何故だか私たちはその場に立ち尽くしてしまった。
 彼の覚悟のせいか、
 フルプレートの鎧の脱ぎ方に興味があったのか、
 彼の素顔を見てみたかったのか、
 
 どちらにしても、その選択は取るべきではなかった。
 妹の救出、という一番の目的を果たした以上、その他の行動は蛇足。
 即時撤退し、街の外でライナスさんと合流すべきなのだ。
 
 ガラン、とヘーゲルは兜も脱ぎ捨てる。
 鎧を捨てる、ということは防御を捨てるということだ。
 だが、同時に身軽になって攻撃力と敏捷性を手に入れるということでもある。
 
「兜の下のお顔はそんなんだったんだね、これは驚き」

 妹はあっけらかんと言う。
 私は唖然としていた。

 目も眩むような金色の長い髪。
 西洋風の青い瞳。
 ハリウッドセレブのような、戦場にいるのは相応しくない、外見。
 射抜くような鋭い眼力で、私にプレッシャーを与える。

 ヘーゲルは、槍を構えなおし覚悟を持った瞳で私たちを見据える。
 呼吸を整え、集中して、見据える。
 隙だらけの私たちを。

「お前らの反応は予想通りだ。言いたいこともわかる。これまで、嫌と言うほど言われてきたからな」

「すっごい美人だね!こんなとこで働くには惜しい人材だよ!だよね、兄さん!モデルだよ、モデル! こんなに綺麗な顔しているなら、もっと早く見せて欲しかったな! 道中のお話も盛り上がったろうしーーというか女の子なら早く言ってよ、女子トーク、いっぱいできたのに」

 変なスイッチが入る妹。
 敵意むき出しの相手を誉め殺し。
 心なしか、ヘーゲルの顔も恥ずかしさで赤らんでいる気がする。
 妹の発言は予想とは違ったらしい。

「うるっさい、黙れ! お前らは今から私が殺す! お前の攻撃は確かに強い、だが、当たらなければ意味はない。受けずに全て躱す! そして息の根を止める!」

 ヘーゲルはそう言うと、私に向けて特攻を仕掛けてくる。
 横道それずに真っ直ぐに。
 たしかに、その動きは敏捷性に飛んでいた。
 ものの数秒もかからず、私との距離を詰めてくる。
 だが、全力には程遠いのだろう。
 速い、というのはあくまで鎧を脱ぐ前との比較だ。
 棒という、攻撃範囲の広い武器を装備している私に、対応できない速度ではない。
 上下の振り下ろしではなく、
 左右への横薙ぎ。

「なにっ?」

 驚嘆の声を上げたのは、私だった。
 ヘーゲルは俊敏に身をかがめて、私の横薙ぎを回避したのだ。
 たしかに、重い鎧を身に纏っていてはできなかった動き。
 
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