婚約破棄された腹いせに適当な隣国を滅ぼします

くわっと

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6.眩む光

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レイピアが無実の兵士を虐殺している間に、かの者について話そう。
彼女がこの気晴らしを断行する理由を作った男だ。
だが、彼は別段悪くない。
自身の気持ちに正直に、
自身の野望に忠実に、
自身だけを想って素直に行動しただけに過ぎない。

それは生き物として当然の行動である。
例え、彼の行動ーーつまりはレイピア=アントワーズという女を捨てた結果、彼とも彼女とも何の関係のない、ただ彼女の住まう国のお隣の国、という理由だけで滅ぼされる民衆がいても、彼は何も悪くない。

悪いのは、失敗も敗北も拒絶も知らないレイピア=アントワーズであり、
彼女にそれらを教え、適切な立ち直り方を教えなかった周囲の連中、
あるいは、たまたま隣国で生活を確立してしまった民衆の『運』がなかったこと。

ただ、それだけだ。
それだけなのだ。

それに、かの者ーールパイン=デンタークという男はどうしようもなく不幸だったのだ。
親に恵まれず、
機会に恵まれず、
運に恵まれず。
日々、飢えと痛みを友と思い過ごした少年時代。

生き残るためには、自分の力を高めるしかなかった。
這い上がるためには、他者を蹴落とすしかなかった。
自分を磨き、他者を利用する日々。
何も与えられず、持たなかった彼の思考は当然のように歪んだ。
あくまで、周囲の価値観から、という前提つきではあるが。

だから、彼が彼女を利用しようと考えるのも当然であった。
何もかもから愛され、
何もかもを与えられた女。
努力もせず、苦しみもせず、ただそこにいるだけで幸福を享受し続けた女。

彼は彼女のことを心底憎んだ。
髪の先から足の爪先まで、全てを嫌った。
だが、自身の望みのために彼女を愛した。
正しくは、愛の言葉を吐いた。
自身の感情に嘘をついて、
自身の感情を曲げて。
生きるために、
這い上がるために、
自分を殺して、恵まれた女の隣にい続けた。

幸せそうに笑う彼女がいつも横にいた。
いつ切り捨てようと、常に考えていた。
いつ逃げ出そうと、常に怯えていた。
いつか彼女の愛に絆されてしまうのではないか、常に震えていた。

結果、ルパイン=デンタークは耐えられなかった。
目的を果たす前に、
利用する前に、
彼は彼女の前から逃げ出したのだ。

『断る。もう終わったのだ』

最大限の虚勢を吐いて。

『貴様が我のためにできることはただ一つ』

できるだけ、彼女の心に傷を残して。

『我の前に二度と姿を現さないことだけだ』

自分は頑張ったと、自身に言い訳するための言葉を吐いて。
壊れる前に、逃げ出したのだ。
何もかも捨てて、全力で。
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