紅茶と悪魔を【R18】

くわっと

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好きを仕事にする。
それは難しい。
適性があるし、市場もある。

好きな人が好きになってくれる。
これも難しい。
相手の好みがあるし、状況もある。

望みを叶える。
それは人の身には困難で、
神にとっては些末で、
悪魔にとっては契約で。

故に。
人は神に縋るか。
悪魔に頼る。

世界の平和とか、
大事な人を蘇らせるとか、
流行病を根絶するとか。
そういった、大仰かつ正しさに満ち溢れた願いは神の縋る。
ただ、叶えてくれない場合が圧倒多数。
だって、人にとっては重要であっても、神にとって重要とは限らない。
所詮は愛玩対象でしかない。
故に、放置され、放任される。

単純な、それでいてビジネスライクな関係ならば、悪魔が確実である。
彼らは約束は破らない。
嘘はつかない。
ただ、言語化された契約内容の範囲内にて、嘘偽りなく騙すだけ。
それも、気紛れで。
でも、彼らは神様とは違う。
人に寄り添い、間近でことの成り行きを見守る。
楽しみ、
嘲り、
悔しがる。
本質は人のそれに近い。

だからこそ、人と悪魔はーー

×××



「またのご来店、お待ちしております」

丁寧にお辞儀をして、客を見送る女性が一つ。
天使が如き、優しい微笑み。

大きな瞳。
西洋的な顔立ち。
さらさらと動作に合わせて靡く、長い髪。
ふんわりとした感触を想像させる、豊かな双丘。
すらりと伸びた足。
さらりと着こなしたエプロンが、どこ性的な魅力を醸し出すのか。
それは彼女の出自故か、それともーー

一言でまとめると、美人だ。
大層な装飾を付け加えるなら、悪魔的な美貌。
それが彼女の外面的評価。

これは、一人の男と一人の女の物語。
いや、正しくは独りの男と一つの悪魔の物語。
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