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一章 黒髪令嬢の日常

21.同情

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私の願いは叶いません。
当然です、私は家族どころか神さまにすら嫌われているのですから。


なので、犬さんたちは、私に貪りついています。
現在進行形です。

牙で、
爪で、
舌で、
私の体をずたずたのぼろぼろにしていきます。

既に衣類は半分以上刻まれて、
古傷にまみれた肢体が露わになっています。
薄布一枚でも、多少の防御力アップにはなっていたと思いますか、そこの装備も解除ーーというか破壊されました。

だけどそれは自身の意思ではなく、
本能で私に食らいついている。
いや、少し違います。

そのように仕向けられている。
お父様に、そのように躾けられている。

可哀想、
私は痛みを感じつつも、そう思いました。

ただ、犬さんとしてこの世に生を受けただけで。
ただ、マーテルロ家の飼犬になっただけで。

彼らの自由は奪われ、
行動を制限される。

この子たちも私と同じ、悲しい運命を背負った被害者。
黒い髪、というだけで虐げられている私と同じ。
自分ではどうにもできない環境を背負わされた、囚人。

「よしよし」

私は喰らいつかれたまま、犬さんたちを撫でます。
ゆっくり、
丁寧に、
愛情と慈愛のようなものを込めて。
その二つは、実際に受けたものではないので、本で読み知った程度の紛い物かもしれませんが。

せめて、少しくらいは私の気持ちが伝わるように。

「あなたたちも、大変ですね」

私は、意識が続く限り、彼らの頭を撫でました。
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