虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと

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二章 誘拐と叛逆

50.強さの定義

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強さとはなんでしょうか?
性能の良い武器を持つものでしょうか、
全てを薙ぎ払う筋力のことでしょうか、
その場を切り抜ける知恵のことでしょうか。

私は、どれでもないと思います。
強さとはーー

「俺たちが釘付にできたのは、囮だけだった、ということか」

隙間からでも分かる、圧倒的な数。
武装動物集団。
空中には、先ほどより多少減った鳥さんたち。
それに対して、視界を埋め尽くす程の、圧倒的物量。
最初に見た集団が可愛く見える程の、戦力差。

お猿さん、
狼さん、
虎さん、
黒豹さん、
鼠さん、
蛇さん、
その他にも、色々。
それぞれに武装し、
それぞれが敵意と害意を持って私たちを取り囲んでいます。

進む場所など、
動く場所などないくらいに、空間を占有する物量。
逃げる事は叶わず、
戦う気力は消え失せます。

これが、マーテルロ家。
7つの大勢力の一つ。

「おいおいおい、これは参ったな。流石に参った」

額に手を当て、可笑しそうに黒い先輩さんは笑います。
現実から目を背けるように。
考えるのを諦めるように。

「どうするんですか?轢き殺すにも、限度がありますよ!」

「この動物捕まえて、動物園でもやるか?」

「冗談言っている場合じゃないですよ!」

「けど、冗談言うくらいしかできることはないからな。後は命乞いの算段がせいぜいか。けどなぁ……」

ため息混じりに、彼は持っていた袋を見つめます。
その中には妹様の残りパーツが入っています。

「これが見つかったら、命乞いとかのレベルじゃあないからな」

「先輩、変なこと考えないでくださいよ」

「変なこと?そんなことは考えないさ、俺が考えているのは、いつだって俺のことだけだ」

「それを聞いて安心しました」

「安心するのは早いぜ。お前は決めないといけないからな、これから自分がどうするのか」

黒い先輩さんは、そう言って刃物を取り出します。

「作戦は失敗だ」

そのまま、自身の首筋に当てて、

「レオリーゼ。お前は好きに生きろ。いや、別に好きに死んでもいいけどな」

「先輩?」

彼は苦笑して、刃物を動かします。

「あ、俺が言うのもどうかと思うが」

肉が裂け、
血が噴き出る。

「嬢ちゃん、幸せにな」

と、命が終わるその時に、事もなげに言いました。
それが、名前も知らない黒い先輩さんの最後でした。
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