虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと

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三章 領主と領民

54.束の間の平和

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あれから数日、私は平穏無事に自室で時間を過ごしました。
好きな本を、
好きなだけ、
誰にも邪魔されることなく読むことができました。

お兄様は、これまでのように乱暴することもなくなりました。
どころか、私に声かけることもないです。
というより、ここ数日、彼の姿を私は一度も見ていません。
ーー私が自室からほぼ出ていない、ということもあると思いますが。

ですが、これは大きな変化です。
妹様がいなくなったことで、状況が変わったのかも知れません。
お父様にとっての重要性が、より高まったことで、私に構っている余裕がなくなったのかもしれません。
理由はどうあれ、私にとっては好ましいことです。
このまま、私はこの部屋に引きこもって、静かに朽ちていきたいです。
痛みもなく、
苦しみもなく、
本の中の幻想に溺れながら。

そういえば、オルコットへ変身するための被り物ですが、お父様に没収されてしまいました。
もうあの金髪になれないと思うと、ちょっぴり残念です。
ですが、この部屋から出る必要がないというのなら、あれは必要のないものです。

本は私が黒くても攻撃してくることはありませんし、
文字は私が金髪でなくても情報を隠すことはしません。
平等に、人として物語と知識を授けてくれます。

「フォルテシア」

この時間はいつまで続くのでしょうか?

「フォルテシア」

限りある平和とは分かっています。

「フォルテシア」

だけれど、もう少しぐらいはーー

「フォルテシア、入るぞ」

お父様の登場です。
追加することの、頬への平手。
パシャリと、瞬間的な痛みが体に走ります。

「呼んだら返事をせんか、愚か者が」

だけれど、ちょっと不思議です。
今までお父様は、私の部屋に入る時に名前なんて呼んだことはなかったと思います。

どうしてでしょうか?
どうしてでしょう?
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