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終章
110.本心
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私は、一体なにがしたかったのだろう?
わからない、分からない。
自分を曲げて、
他者を傷つけ、
勝利と実績を積み上げてきたというのに。
最後の最後でどうしようもなく、惨めに全てを話してしまった。
これまでの努力が、
これまでの計画が、
私の忍耐が、
彼らの我慢が、
彼女らの痛みが、
全て無に帰すようなことを言ってしまった。
私は、最後に縋ってしまったのだ。
こんな状態でも、
これ程までに酷い仕打ちをしたとしても、
最後の最後には、愛娘が情に満ちた言葉をかけてくれるのではないか、という淡い、甘い願望に。
本当に、どうしようもない男だ。
ここで改心したところで、過去は変えられない。
むしろ、混乱させるだけだ。
そもそも、子供たちは、そうあれかしと育てたはずだ。
強く、
美しく、
小賢しく、
絶対的な自己を、
何物にも揺らがない自己を持つように育てたはずだ。
だけれど、自身の欲望には抗いきれなかった。
所詮、私も人の子だった。
ただの1人の父親だった、ということだろう。
生まれがどうだとか、
才能がどうだとか、
器量がどうだとは言っても。
世間で言うところの『父親』という枠に収まる程度の人間だったということだ。
こんな男は、王になる資格はない。
人民を、
獣たちを、
支配する器ではないのだ。
道半ばで倒れて当然。
病如きに侵されるのも、理解できようものだ。
半端ものの最後としては、当然の報い。
この醜悪な見た目も、私の所業と比べてみれば、随分と可愛い。
……まあ、使用人如きに反逆され、命を落とすのは惨めの極みだった故に、多少は奮闘したが。
従って、眼前の愛娘には大人しく殺されることしかできない。
殺しの作法を改めて手解きしてやろう、なんて思う余裕すらない。
それに、そんな必要もなく愛娘は殺しに浸っているはずだ。
妹を殺しているし、
民も幾らかその手にかけている。
故に、現役を退いた私が教えるものは特段ないのだ。
その瞳には憎悪が満ちているはずだ。
その手には復讐の炎が宿っているはずだ。
その口からは呪詛の言葉がでるはずだ。
後は、その心に従うままに、私の命を奪えばいい。
その末に、望む未来を掴めばいい。
だがーー
「最後まで、悪い人でいてください」
娘は言った。
顔をぐしゃぐしゃに歪めながら。
私の言葉を否定するように。
「まあ、それもそうだな。すまなかったよ」
ーーだから、私はもう少し、頑張ることにした。
私は終わる。
ここで終わる。
先はない。
本当に最後だ。
だが、娘は違う。
まだ戦い続けなければならない。
他者を蹴落とし、蹂躙し、自身の望む世界を作るために闘争を続けなければならない。
「これはただの時間稼ぎだよ、フォルテシア」
だから、私は告げたのだ。
彼女の記憶に、狡猾で残忍な、ただの最悪な父親のまま、残り続けるために。
彼女の未来に幸あれと、
言葉をかけたのだ。
わからない、分からない。
自分を曲げて、
他者を傷つけ、
勝利と実績を積み上げてきたというのに。
最後の最後でどうしようもなく、惨めに全てを話してしまった。
これまでの努力が、
これまでの計画が、
私の忍耐が、
彼らの我慢が、
彼女らの痛みが、
全て無に帰すようなことを言ってしまった。
私は、最後に縋ってしまったのだ。
こんな状態でも、
これ程までに酷い仕打ちをしたとしても、
最後の最後には、愛娘が情に満ちた言葉をかけてくれるのではないか、という淡い、甘い願望に。
本当に、どうしようもない男だ。
ここで改心したところで、過去は変えられない。
むしろ、混乱させるだけだ。
そもそも、子供たちは、そうあれかしと育てたはずだ。
強く、
美しく、
小賢しく、
絶対的な自己を、
何物にも揺らがない自己を持つように育てたはずだ。
だけれど、自身の欲望には抗いきれなかった。
所詮、私も人の子だった。
ただの1人の父親だった、ということだろう。
生まれがどうだとか、
才能がどうだとか、
器量がどうだとは言っても。
世間で言うところの『父親』という枠に収まる程度の人間だったということだ。
こんな男は、王になる資格はない。
人民を、
獣たちを、
支配する器ではないのだ。
道半ばで倒れて当然。
病如きに侵されるのも、理解できようものだ。
半端ものの最後としては、当然の報い。
この醜悪な見た目も、私の所業と比べてみれば、随分と可愛い。
……まあ、使用人如きに反逆され、命を落とすのは惨めの極みだった故に、多少は奮闘したが。
従って、眼前の愛娘には大人しく殺されることしかできない。
殺しの作法を改めて手解きしてやろう、なんて思う余裕すらない。
それに、そんな必要もなく愛娘は殺しに浸っているはずだ。
妹を殺しているし、
民も幾らかその手にかけている。
故に、現役を退いた私が教えるものは特段ないのだ。
その瞳には憎悪が満ちているはずだ。
その手には復讐の炎が宿っているはずだ。
その口からは呪詛の言葉がでるはずだ。
後は、その心に従うままに、私の命を奪えばいい。
その末に、望む未来を掴めばいい。
だがーー
「最後まで、悪い人でいてください」
娘は言った。
顔をぐしゃぐしゃに歪めながら。
私の言葉を否定するように。
「まあ、それもそうだな。すまなかったよ」
ーーだから、私はもう少し、頑張ることにした。
私は終わる。
ここで終わる。
先はない。
本当に最後だ。
だが、娘は違う。
まだ戦い続けなければならない。
他者を蹴落とし、蹂躙し、自身の望む世界を作るために闘争を続けなければならない。
「これはただの時間稼ぎだよ、フォルテシア」
だから、私は告げたのだ。
彼女の記憶に、狡猾で残忍な、ただの最悪な父親のまま、残り続けるために。
彼女の未来に幸あれと、
言葉をかけたのだ。
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