1000年前の恋人が忘れられない吸血鬼の話

もちえなが

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メイ編 うっかり人間に恋に落ちた話

18歳

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「ハッピーバースデートゥーミー!」

ユエルは18歳になった。

見下ろしていたはずの背は、今や俺が見上げる高さにある。
一年も経たず、手のひらひとつ分も背を延ばしたのだ。

「なんと、僕はついに、18歳になりました~!おめでとう僕!ますます男前に磨きがかかっちゃったかな?」

パチパチと手を叩いて自分を祝っている。
まったく、でかくなっても騒がしいのは変わらない。
 
「ねぇ、メイって何歳なの?」
「さぁ」

「誕生日も知らないのかい?」
「知らないな」

俺に誕生日を教えてくれる親などいないし、いつから生きているのかをいちいち数えたこともない。
吸血鬼は、皆そんなもんだろうと思う。

「そっかぁ、それじゃあ今日から僕の誕生日を君の誕生日ってことにしよう」
「はぁ?」

「歳を重ねるたびに、祝う日があった方がいいだろう?でもそうなると、君は1歳ってことだね、あはは!おめでとう、ベイビー!」

小さくため息をつき、呆れたように肩を落とす。

全く意味のわからない理論だが、ユエルが楽しそうならそれでいいか。

「それじゃあ、メイと僕の誕生日に乾杯!」
「乾杯」

ユエルが持ってきた赤ワインをグラスに注ぎ、ゆっくり味わう。

「これは僕と同じ18年ものなのさ。ちょっと奮発しちゃった~」
「ふーん、たしかに美味いな」
「えへへ、それは良かった!」

ワインの芳醇さは、血に少し似ている。
新しいものも爽やかで好きだが、年数が経つと味と香りに深みが出てもっと好きだ。

ユエルは俺の好物をわかっていて、持ってきたのだろう。

「今日はメイにプレゼントがあるよ」
「今日もだろ」
「うん、でも今日はもっと特別!」

プレゼントの趣味の悪さは、いまだに治らない。
あまり期待せずに待っていると、ユエルがポケットから小さな布袋を取り出した。

「左手を出して、メイ」
「あぁ」

ユエルの前に左手を出すと、薬指に指輪が嵌められる。

「これは……?」
「じゃじゃーん、僕特製の指輪でーす!」

「工房にいって修業したのだけど、結構難しかったよー。力が強すぎて何度も潰しちゃってさ。もう出てけー!って親方に何度も怒られたなー」

左手の薬指に銀の指輪が光る。
特に飾りのないシンプルなものだった。

これは、人間が結婚の証として送るものではないだろうか。

「あ、一緒に僕のも作ったんだ。えへへ、お揃いー!」

ユエルが自分の左手にも指輪をつけると嬉しそうに見せてくる。
なんだかそれだけで胸がいっぱいになった。

ユエルは何も言わない俺の左手を掴むと、跪いた。
 
「メイ、僕たち一緒に住まないかい」
「え…」
 
「僕は100まで生きるつもりだけどさ、メイにとっては短い時間を、少しでも一緒に過ごしたいんだ」  

「ユエル……」
「僕の家族はもういないから、広い家に一人で暮らしてるのさ。そこならメイも不自由しないよ」

ユエルが、俺の指輪の上にキスを落とす。

「だから、メイに僕の家族になってほしい」

ユエルの精一杯のプロポーズだった。

高いワインを用意して、慣れない指輪作りをして、俺に跪いて、一生懸命かっこつけている。

それなのに、ワインを飲んだからか、顔が赤らんでいて、様になっていないのがおかしい。

「……そんなに俺が好きか、ユエル」

ユエルは俺の言葉に驚いて、当たり前だという顔で笑う。

「あぁ、大好きだ!君を愛してる」

いつだって、俺を真っ直ぐ見つめて、好きでいっぱいだという態度を隠さない。

こいつ、俺が断っても、死ぬまで諦めないんだろうな。
まったく自信家でとことんキザな奴だ。

「俺も好きだ。一緒に住もう」

「……えっ!?待って、メイが初めて好きって言ってくれた!うそ、嘘じゃないよね!もう一回言ってよメイ!ねえ!ねえ!」
「うるさい……」

「えーケチー!もう一回くらい良いだろう!ねぇメイったら!」
「やだ」
「うっ、可愛い…。可愛いけれどさ!お願いお願い~!」

ユエルが腰に抱きついて、駄々を捏ねている。
 
ユエルは可愛い。
失うのが、怖くなるほどに――。
 
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