1000年前の恋人が忘れられない吸血鬼の話

もちえなが

文字の大きさ
6 / 29
メイ編 うっかり人間に恋に落ちた話

しおりを挟む

「ここが僕の家だよ!そして今日から君の家にもなる」

ユエルの家は、街から離れた郊外にポツンと建っていた。
初めてのデートで行った森にも近い。

石造りになっていて、平民にしては裕福そうな家だった。

「へー、良い家だな」
「そうでしょう!案内するよ!」

外から見るよりも、中は広々としていた。

1階は、暖炉のある居間とキッチン。
半地下は、武器庫として使っていて、2階は寝室なようだった。
 
確かに1人で暮らすには広い家だ。
 
「裕福だったのか?」

「うーん、そうかもしれない。祖父がハンターだったと言ったことがあるだろう?結構偉い人だったんだよ。両親は幼い頃にはもう亡くなっていたから、そのじいちゃんが育て親だったのさ」
「そうか」

「じいちゃんには厳しく育てられたよ。隠すことでもないから言うと、両親は吸血鬼に殺されたのさ。ばあちゃんもね、会ったことはないけれど」
「それは……」

初めて聞く話だった。
 
「あ、別に僕は吸血鬼を恨んでないよ!両親のことを何も覚えてないのさ。
それにこの仕事をしてるんだ。僕だって吸血鬼を殺してるわけだし仕方ないと思うよ。
まぁそんな事情があって、じいちゃんは僕の教育に厳しくて、それで毎日逃げ出しては怒られたなー」

俺でもわかる。

俺たちにとっては、たかが人間の命なんてどうでもいい。
だが誰かにとってはそうではなくて、ユエルのように割りきれる者はあまり多くないのだろう。

俺もユエルが殺されたら、そいつが憎くて仕方なくなるだろうから。

「ハンター内じゃこんな話珍しくないけどさ、伴侶と子供を亡くしたんじゃ無理はないよねー。じいちゃんは可哀想な人なのさ」

まさか、その大切に育てた孫が、憎き吸血鬼にプロポーズをしているとは夢にも思わないだろう。
 
俺は、ユエルの祖父に少し同情した。
 
「じいさんは?」
「ん?あぁ、じいちゃんは普通に寿命で亡くなったよ。もう3年前になるかな」
「……そう」

寿命か。
もし祖父が吸血鬼に殺されてたら、それでも憎まずにいられたのだろうか。
俺のことを好きになっていたのだろうか。

「メイに出会う前で良かったよ!じいちゃんを説得するのは骨が折れただろうから」
「じいさんが認めるわけないだろ」
「えーそうかな。僕が頑固なの知ってるからいつか諦めそうだけれど」

馬鹿だな。
じいさんが生きてたら、きっと俺を殺しにきてたよ。




 
「め、メイは僕の寝室を一緒に使うので良いよね…?
ベッドは狭いけど、いや思ったより狭くないよ!」

ユエルと一緒に2階へ上がる。

2階には寝室が2つあって、ユエルの寝室と、もう一つは使われていないようだった。

「こっちは?」
「こ、こっちはじいちゃんが使ってたままなんだ!
まだ片付けてなくて、掃除もずっとしてないし、だ、だからその……」

ユエルは顔を真っ赤にし、視線を彷徨わせながら、もじもじと指を合わせた。

「ふ、一緒に寝たいって言えよ。それとも俺が他の男のベッドを使うのが嫌か?」
「あぅ……、ど、どっちも」

キザで自信家なくせに、変なところで照れる。

「可愛いやつ」

ユエルを置いて、寝室に入る。

一人用のベッドと、木箱チェスト、蝋燭を置いた小さいテーブルのあるこぢんまりとした部屋だった。

部屋は暗く、窓から差し込む月明かりと、蝋燭の灯りがかろうじて室内を照らしていた。
 
俺は、大の男2人が寝るには窮屈そうなベッドに腰掛けて足を組む。

「ユエル?」
「……」

ユエルは、入り口に突っ立ったまま、ぼーっと俺を見ていた。

「メイ……」
「ん?」
「今日は、君にお願いがあるんだ」

「なんだ?」

ユエルが神妙な面持ちで部屋に入ってくる。
何を考えているのかわからず、眉をひそめた。

「メイ、僕は君を、抱いてみたい」
「……は?」

「ずっと綺麗だと思ってた。初めはメイと繋がれるなら上でも下でもどっちでも良いって思ってた。
でも、僕の下でよがるメイはどんなに綺麗だろうって、最近はそればっかり考えてしまうんだ」
「……」
「お願い、一度だけでいいから。メイを抱きたい」

俺はこれまで、誰かに後ろを許したことはない。
当たり前のように、俺は奪う者で、強者で、俺より上などいないのだから。

ユエルに真っ直ぐ目を向けられる。

俺を抱きたい、犯したいと顔に書いてある。
こいつは俺に抱かれながら、俺を抱く妄想をしてたのか。

ユエルが、立派な雄の顔をして俺に欲情している。
それが、正直ぞくっとした。
 
――いいね、興奮する。

「……メイ?」

着ている服に手をかける。
ベルトを外し、シャツとズボンを脱ぐ。

ごくんっと息を呑む声がして見上げると、ユエルが顔を真っ赤にして、こちらを凝視していた。

もう何回見たと思ってんだよ。飽きねえな。

素っ裸になって、もう一度ベッドへ腰掛けて足を組んだ。

「ほら、来いよ。童貞が」
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

下っ端公務員の俺は派遣のαに恋してる【完結済】

tii
BL
市役所勤めの野々宮は、どこにでもいる平凡なβ。 仕事は無難、恋愛は停滞、毎夜の癒しはゲームとストゼロだけ。 そんな日々に現れたのは、派遣職員として配属された青年――朝比奈。 背が高く、音大卒で、いっけん冷たそうに見えるが、 話せば驚くほど穏やかで優しい。 ただひとつ、彼は自己紹介のときに言った。 「僕、αなんです。迷惑をかけるかもしれませんが……」 軽く流されたその言葉が、 野々宮の中でじわりと残り続ける。 残業続きの夜、偶然居酒屋でふたりきりになり―― その指先が触れた瞬間、世界が音を立てて軋んだ。 「……野々宮さんって、本当にβなんですか?」 揺らぎ始めた日常、 “立場”と“本能”の境界が、静かに崩れていく。 ☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。 【第13回BL小説大賞】にエントリーさせて頂きました! まこxゆず の応援 ぜひよろしくお願いします! ☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。

琥珀の檻

万里
BL
砂漠の王国の離宮「琥珀の間」で、王・ジャファルは、異母弟であるアザルを強引に抱き、自らの所有物であることを誇示していた。踊り子の息子として蔑まれ、日陰の存在として生きてきたアザルにとって、兄は憎悪と恐怖の対象でしかなかった。 しかし、その密事を見つめる影があった。ジャファルの息子であり、次期王位継承者のサリムである。サリムは叔父であるアザルに対し、憧憬を超えた歪な独占欲を抱いていた。 父から子へ。親子二人の狂おしい執着の視線に晒されたアザルは、砂漠の夜よりも深い愛憎の檻に囚われていく。

神様は僕に笑ってくれない

一片澪
BL
――高宮 恭一は手料理が食べられない。 それは、幸せだった頃の記憶と直結するからだ。 過去のトラウマから地元を切り捨て、一人で暮らしていた恭一はある日体調を崩し道端でしゃがみ込んだ所を喫茶店のオーナー李壱に助けられる。 その事をきっかけに二人は知り合い、李壱の持つ独特の空気感に恭一はゆっくりと自覚無く惹かれ優しく癒されていく。 初期愛情度は見せていないだけで攻め→→→(←?)受けです。 ※元外資系エリート現喫茶店オーナーの口調だけオネェ攻め×過去のトラウマから手料理が食べられなくなったちょっと卑屈な受けの恋から愛になるお話。 ※最初だけシリアスぶっていますが必ずハッピーエンドになります。 ※基本的に穏やかな流れでゆっくりと進む平和なお話です。

今さら嘘とは言いにくい

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO
BL
オレ、蓮田陽介と大津晃は、同じ独身男子寮に住む仲間だ。学生気分も抜けずに互いにイタズラばかりしている。 ある日、オレは酔いつぶれた晃に、「酔った勢いでヤっちゃったドッキリ」を仕掛けた。 驚くアイツの顔を見て笑ってやろうと思ったのに、目が覚めた晃が発したのは、「責任取る」の一言で――。 真面目な返事をする晃に、今さら嘘とは言いにくくて……。 イタズラから始まる、ハイテンション誤解ラブコメ!

給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!

永川さき
BL
 魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。  ただ、その食事風景は特殊なもので……。  元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師  まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。  他サイトにも掲載しています。

【完結】名前のない皇后 −記憶を失ったSubオメガはもう一度愛を知る−

社菘
BL
息子を産んで3年。 瀕死の状態で見つかったエリアスは、それ以前の記憶をすっかり失っていた。 自分の名前も覚えていなかったが唯一所持品のハンカチに刺繍されていた名前を名乗り、森の中にひっそりと存在する地図上から消された村で医師として働く人間と竜の混血種。 ある日、診療所に運ばれてきた重病人との出会いがエリアスの止まっていた時を動かすことになる。 「――お前が俺の元から逃げたからだ、エリアス!」 「本当に、本当になにも覚えていないんだっ!」 「ととさま、かかさまをいじめちゃメッ!」 破滅を歩む純白竜の皇帝《Domアルファ》× 記憶がない混血竜《Subオメガ》 「俺の皇后……」 ――前の俺?それとも、今の俺? 俺は一体、何者なのだろうか? ※オメガバース、ドムサブユニバース特殊設定あり(かなり好き勝手に詳細設定をしています) ※本作では第二性→オメガバース、第三性(稀)→ドムサブユニバース、二つをまとめてSubオメガ、などの総称にしています ※作中のセリフで「〈〉」この中のセリフはコマンドになります。読みやすいよう、コマンドは英語表記ではなく、本作では言葉として表記しています ※性的な描写がある話数に*をつけています ✧毎日7時40分+17時40分に更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

【完結】エデンの住処

社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。 それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。 ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。 『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。 「兄さん、僕のオメガになって」 由利とYURI、義兄と義弟。 重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は―― 執着系義弟α×不憫系義兄α 義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか? ◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·

甘くてほろ苦い、恋は蜜やかに。

米粉あげぱん
BL
紅い唇は、物足りなさそうに震えるーー。 御堂 和樹(みどう かずき)と三神峯 景(みかみね けい)は、都内の大手有名製薬会社に勤める営業部の主任と薬事研究課で日々研究を重ねる薬剤師。 普段の業務ではなかなか関わらない二人だが、大阪での仕事で一緒になったことがきっかけで互いに惹かれ合う。 同じ会社の社員同士で、男同士。これ以上踏み込んではいけないと思いつつ、その感情は止まることを知らない。感情のままに噛みついた唇は、拒まれればすぐに離すつもりだった。 彼に会うたび、触れるたび、夢中になっていく。 ーー嬉しいことも辛いことも、一緒に背負っていきたい。 甘くほろ苦い、二人だけの秘密の恋。 ※表紙は漫画家の星埜いろ様に描いていただきました!!

処理中です...