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メイ編 うっかり人間に恋に落ちた話
家
しおりを挟む「ここが僕の家だよ!そして今日から君の家にもなる」
ユエルの家は、街から離れた郊外にポツンと建っていた。
初めてのデートで行った森にも近い。
石造りになっていて、平民にしては裕福そうな家だった。
「へー、良い家だな」
「そうでしょう!案内するよ!」
外から見るよりも、中は広々としていた。
1階は、暖炉のある居間とキッチン。
半地下は、武器庫として使っていて、2階は寝室なようだった。
確かに1人で暮らすには広い家だ。
「裕福だったのか?」
「うーん、そうかもしれない。祖父がハンターだったと言ったことがあるだろう?結構偉い人だったんだよ。両親は幼い頃にはもう亡くなっていたから、そのじいちゃんが育て親だったのさ」
「そうか」
「じいちゃんには厳しく育てられたよ。隠すことでもないから言うと、両親は吸血鬼に殺されたのさ。ばあちゃんもね、会ったことはないけれど」
「それは……」
初めて聞く話だった。
「あ、別に僕は吸血鬼を恨んでないよ!両親のことを何も覚えてないのさ。
それにこの仕事をしてるんだ。僕だって吸血鬼を殺してるわけだし仕方ないと思うよ。
まぁそんな事情があって、じいちゃんは僕の教育に厳しくて、それで毎日逃げ出しては怒られたなー」
俺でもわかる。
俺たちにとっては、たかが人間の命なんてどうでもいい。
だが誰かにとってはそうではなくて、ユエルのように割りきれる者はあまり多くないのだろう。
俺もユエルが殺されたら、そいつが憎くて仕方なくなるだろうから。
「ハンター内じゃこんな話珍しくないけどさ、伴侶と子供を亡くしたんじゃ無理はないよねー。じいちゃんは可哀想な人なのさ」
まさか、その大切に育てた孫が、憎き吸血鬼にプロポーズをしているとは夢にも思わないだろう。
俺は、ユエルの祖父に少し同情した。
「じいさんは?」
「ん?あぁ、じいちゃんは普通に寿命で亡くなったよ。もう3年前になるかな」
「……そう」
寿命か。
もし祖父が吸血鬼に殺されてたら、それでも憎まずにいられたのだろうか。
俺のことを好きになっていたのだろうか。
「メイに出会う前で良かったよ!じいちゃんを説得するのは骨が折れただろうから」
「じいさんが認めるわけないだろ」
「えーそうかな。僕が頑固なの知ってるからいつか諦めそうだけれど」
馬鹿だな。
じいさんが生きてたら、きっと俺を殺しにきてたよ。
◇
「め、メイは僕の寝室を一緒に使うので良いよね…?
ベッドは狭いけど、いや思ったより狭くないよ!」
ユエルと一緒に2階へ上がる。
2階には寝室が2つあって、ユエルの寝室と、もう一つは使われていないようだった。
「こっちは?」
「こ、こっちはじいちゃんが使ってたままなんだ!
まだ片付けてなくて、掃除もずっとしてないし、だ、だからその……」
ユエルは顔を真っ赤にし、視線を彷徨わせながら、もじもじと指を合わせた。
「ふ、一緒に寝たいって言えよ。それとも俺が他の男のベッドを使うのが嫌か?」
「あぅ……、ど、どっちも」
キザで自信家なくせに、変なところで照れる。
「可愛いやつ」
ユエルを置いて、寝室に入る。
一人用のベッドと、木箱、蝋燭を置いた小さいテーブルのあるこぢんまりとした部屋だった。
部屋は暗く、窓から差し込む月明かりと、蝋燭の灯りがかろうじて室内を照らしていた。
俺は、大の男2人が寝るには窮屈そうなベッドに腰掛けて足を組む。
「ユエル?」
「……」
ユエルは、入り口に突っ立ったまま、ぼーっと俺を見ていた。
「メイ……」
「ん?」
「今日は、君にお願いがあるんだ」
「なんだ?」
ユエルが神妙な面持ちで部屋に入ってくる。
何を考えているのかわからず、眉をひそめた。
「メイ、僕は君を、抱いてみたい」
「……は?」
「ずっと綺麗だと思ってた。初めはメイと繋がれるなら上でも下でもどっちでも良いって思ってた。
でも、僕の下でよがるメイはどんなに綺麗だろうって、最近はそればっかり考えてしまうんだ」
「……」
「お願い、一度だけでいいから。メイを抱きたい」
俺はこれまで、誰かに後ろを許したことはない。
当たり前のように、俺は奪う者で、強者で、俺より上などいないのだから。
ユエルに真っ直ぐ目を向けられる。
俺を抱きたい、犯したいと顔に書いてある。
こいつは俺に抱かれながら、俺を抱く妄想をしてたのか。
ユエルが、立派な雄の顔をして俺に欲情している。
それが、正直ぞくっとした。
――いいね、興奮する。
「……メイ?」
着ている服に手をかける。
ベルトを外し、シャツとズボンを脱ぐ。
ごくんっと息を呑む声がして見上げると、ユエルが顔を真っ赤にして、こちらを凝視していた。
もう何回見たと思ってんだよ。飽きねえな。
素っ裸になって、もう一度ベッドへ腰掛けて足を組んだ。
「ほら、来いよ。童貞が」
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