1000年前の恋人が忘れられない吸血鬼の話

もちえなが

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メイ編 うっかり人間に恋に落ちた話

最愛

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ユエルは自信家でキザなやつだった。
そして、たしかに天才ヴァンパイアハンターだった。
この俺を落としたんだから。

ユエルと出会ってから、はや70年ほど。 

俺は相も変わらず、今にもくたばりそうなじじいになってもこいつを愛していて、
もう勃たないふにゃちんを虚しくしゃぶっていた。

「君は綺麗だなぁ、メイ」
「お前ずっとそればっかだな」
「うん、愛してる」

今日は、ユエルの88歳の誕生日で、ユエルの理論で言えば、俺は71歳だった。

ユエルが歳を重ねるたびに、俺だけが老いず、見た目の差が広がっていく。
かつて見上げるほど高かった背を、もう見上げる機会は訪れない。
 
ユエルが寝たきりになったからだ。

ユエルがしわしわになった手で俺の頭を撫でる。
弱々しい手には、毎日俺のと一緒に布で磨いてくれていた指輪が光る。
 
「…俺を愛してんなら、置いてくんじゃねえよ馬鹿」

俺は何年経っても、可愛く甘えることもできず、きつい言葉を吐いてしまう。

でも、俺は怒っていた。
こいつは一緒に死ぬことを許さなかったのだ。

俺はユエルが死んだら、一緒に後を追って死ぬと決めていた。
 
自力で死ぬことはできないが、
ヴァンパイアハンターが使う、特殊な加工をした銀剣を心臓に刺せば、俺は灰になって死ぬことができる。

なのに、
『次転生した時、君がいなかったら僕が寂しいだろう?』
っていいやがって。
 
なんて自分勝手なやつなんだ。
俺はそれまで寂しくてもいいのかよ。
何年待てば良いかわからない悠久の時を、孤独に震えながら待てって言うのかよ。
 
「ははごめん。次生まれてくる時は間違えないよ。
ちゃんと吸血鬼になって、もう君を置いていったりしないから」
 
「……あんまり遅いと、忘れちまうからな」

下を向いて、涙を耐える。
まだ突き放すようなことを言ってしまった。

しわしわの手が俺の頬を撫でる。
 
「メイ、君は僕を忘れられないよ」
 
「……そんなのわかんねえだろ」
「いーやわかるね、メイがこんなに泣いてくれるんだもの」

ユエルは自信満々に言い切った。
ポロポロと涙が溢れる。
しわしわの手では拭いきれない量の涙だった。

あぁ、なんで人間には寿命があるんだろう。
 
人間が吸血鬼になることはない。
なれたらそもそも吸血鬼を従えず、ハンター自身が吸血鬼になればいい話だ。
 
そしてどこかの伝説のように、吸血鬼の血を与えたって、不老不死になることも、万病を治すこともできるわけがない。
 
だから普通に老いて、寿命を迎えて死んでいく。

「メイ、久しぶりに、僕を抱いてくれよ」
「は……?」
「もう、こんな僕じゃ興奮しない?」

何言ってんだこいつ。
 
「しないわけないだろ、馬鹿」
「はは、よかった。もう僕のは役に立たないからさ」

セックスだけじゃない。
もう長らく、血を吸っていない。
そんなことしたら、お前が死んでしまうかもしれないから。

なのに、お前は残酷なことを言う。

「メイ、僕は君とセックスしたい」
「……ひどいな、お前。」

俺が、ユエルの望みを断れるわけがなかった。

「はぁ、あぁっ、あ、メイ、あぁ、好き」
「は、ユエル、は、はぁ、あ」

ユエルに挿入して、ゆっくりと動かす。
何十年ぶりの中は、とても温かくて柔らかくて、涙が出た。
 
あぁ、これで最後なんだ。
こいつと触れ合うの。
こいつと抱き合うの。
ユエルと愛し合うの。

「あぁ、あ、100まで、生きたかった、なぁ」
「馬鹿、馬鹿ユエル、生きろよ、約束しただろ」

「うん…ごめんね……、あぁ、綺麗だな、メイ」
「も、いい、それ…」
 
「綺麗な、メイを、ずっと、見ていたかったな……」
「ユエル?……あぁ、やだ……!」
 
「メイ、愛して、る…………」
「ユエル……ユエル!ユエル!」
「…………」

「うっ、うぅぅ、あああっ、ああああああっ!」

もう、ユエルは、目を覚まさなかった。

だんだんと冷たく、固くなっていく体に、泣きながら縋ることしかできなかった。

「ユエル、俺も愛してる……」

死んでから初めて言った言葉は、誰にも届かずに虚空に消える。

俺は首筋に牙を立て、最期の血を吸った。
 
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