1000年前の恋人が忘れられない吸血鬼の話

もちえなが

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レン編 同居人が吸血鬼だった話

同居人

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レナード・フォスター 18歳。

大都会ロンドンの芸術大学に通うために、ノーフォーク州の田舎からはるばる上京してきた冴えない田舎者。

「わ、わぁ……」
 
オリエンテーションに参加するために、大学へ来たが、あまりの人の多さにめまいがする。
田舎じゃこんな数の人を見たことがなかった。

それに同年代である学生達が、キラキラと眩しくて、自分がひどく浮いているように感じる。
思わず目まで覆った黒い前髪を押さえて顔を隠した。

「あっ、ご、ごめんなさい。ひ、す、すみません」

誰にも話しかけられないように、なるべく存在を消して、猫背になりながら下を向いて歩く。
多くの人にぶつかりながらも、なんとか授業の登録をして、大学を脱出した。

「僕、無理かもしれない……」

絵を習っている先生の推薦で、ロンドンまでのこのこ来てしまったけど、僕には場違いに思えてならない。

大学に飾ってある作品を見て思った。
ここには、僕よりもずっと才能がある人たちがたくさんいる。

でも、僕は絵を描くこと以外何もできなくて、他に何をしていいのかもわからない。
このまま絵を描き続けていたって、就職できるかもわからないのに…。

「はぁ……」

下宿先のアパートの前でため息を吐いた。
 
大学の学費は奨学金でなんとかなったけれど、ロンドンの家賃は信じられないくらい高くて、とても一人で住めるような額じゃなかった。
だから大学が寮として契約しているアパートを借りた。

でも、一番の問題は相部屋だということだ。
人見知りの僕が、見ず知らずの人と共同生活など送れるのだろうか…。

できれば、相手も僕と同じくらい地味で静かな人であってほしい。
間違っても日夜彼女を連れ込みそうなパーティーピーポーではありませんように!


10回くらい深呼吸して、玄関のドアノックを鳴らす。

「ぁ、あの……、ごめんください……」

か細い声で伺いを立てる。
しかし、5分くらい待っても何も音沙汰がない。

まだ同居人が帰ってきていない可能性もある。

そうだ、僕はさっさと大学を出てしまったけれど、普通はそこで友達を作ったりして、みんなでパブにくりだしたりするのだろう。

やっぱり、パーティーピーポーでもいいから、なるべく帰ってこないでほしいかも。

大家さんが同居人が不在だったら、ポストの中にスペアの鍵を入れてあると言っていた。

家の前のポストを覗くと、鍵が入れてある。
鍵で扉を開けると、中へ入った。

部屋は1ルームで、小さなバス・トイレ・キッチンがある。
1ルームの部屋には、シングルベッドが2つ、両側の壁に設置してあった。
ちょうど部屋を真ん中に区切って使えるだろう。

カバンを下ろして、どっちのベッドを使ったらいいんだろうと、右のベッドを見たその時、人が眠っていた。

「ひっ……!」

部屋が暗くて全然気づかなかった。
急いで距離をとって向かい側の壁に背中をつける。
驚いてうっかり声を出してしまった。

なるべく音を立てないようじっと様子を窺った。

その人は、深く眠っているのか、全く起きる気配がない。
ふーっと、息を吐いて肩の力を抜く。

そうしてようやく同居人を観察することができた。

「っ……!」

艶のある金髪に、ぬけるような白い肌。固く閉ざされた目は長いまつ毛で覆われていて、息をしているのが不思議なほど人形のように整った顔をしていた。

生まれて初めてこんなに綺麗な人を見た。

あまりの美しさに魅入っていると、その人が身じろぎをする。
その瞬間、肩までかかっていたブランケットがずれて、白い素肌がのぞいた。

「ぇっ……!」

この人裸で寝てる?!
ドクドクと心臓が鳴るのを感じながら、白い素肌に視線を滑らせる。

長くて綺麗な手足がブランケットからはみ出し、クロスしている。細い首の下には鎖骨が浮き出て、白い肌にポツンとピンクの乳首――

――ガンッ!!

「いっ……!!」

思いっきりすねをぶつけて痛みにもがく。
 
「ん……?」

しゃがんで痛みを堪えていると、同居人が目を覚ましたのか、目をこすりながら身体を起こした。

「……あ?なにしてんだお前」
「あっ、ぁ、あのっ、ぼ、僕は、ど、同居人で」

「同居人?」
「れ、レナード・フォスターですっ!き、今日から失礼しますっ」

「あー、なんかババアが言ってたかも」
「ひっ!」

彼が立ち上がると、ブランケットが外れ恥部が丸見えになった。
こちらに背を向け、丸いお尻を向ける。
均整のとれたモデルみたいに綺麗な身体だ。

床に落ちていたズボンを拾って、こちらを向くと、目を細めて口角を上げた。

「見すぎ」
「ぴゃっ!す、すみませんっ!あまりにも綺麗で…」

「……綺麗?」

同居人がじっと僕を見つめてくる。
美人に見つめられて動揺しない童貞などいない。

何か気に障ることを言ってしまっただろうか。
しどろもどろになりながら、目を泳がせる。
 
「あ、あのっ、あの」
「……ま、そんなわけねえか。」

ふいっと視線を逸らされる。
一気に緊張が解けるとともに、少し残念な気にもなる。
いや残念とか、何考えんだ僕。

「あーそうだ。俺は、メイ・フェレス。よろしく」
 
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