17 / 29
レン編 同居人が吸血鬼だった話
同居人
しおりを挟むレナード・フォスター 18歳。
大都会ロンドンの芸術大学に通うために、ノーフォーク州の田舎からはるばる上京してきた冴えない田舎者。
「わ、わぁ……」
オリエンテーションに参加するために、大学へ来たが、あまりの人の多さにめまいがする。
田舎じゃこんな数の人を見たことがなかった。
それに同年代である学生達が、キラキラと眩しくて、自分がひどく浮いているように感じる。
思わず目まで覆った黒い前髪を押さえて顔を隠した。
「あっ、ご、ごめんなさい。ひ、す、すみません」
誰にも話しかけられないように、なるべく存在を消して、猫背になりながら下を向いて歩く。
多くの人にぶつかりながらも、なんとか授業の登録をして、大学を脱出した。
「僕、無理かもしれない……」
絵を習っている先生の推薦で、ロンドンまでのこのこ来てしまったけど、僕には場違いに思えてならない。
大学に飾ってある作品を見て思った。
ここには、僕よりもずっと才能がある人たちがたくさんいる。
でも、僕は絵を描くこと以外何もできなくて、他に何をしていいのかもわからない。
このまま絵を描き続けていたって、就職できるかもわからないのに…。
「はぁ……」
下宿先のアパートの前でため息を吐いた。
大学の学費は奨学金でなんとかなったけれど、ロンドンの家賃は信じられないくらい高くて、とても一人で住めるような額じゃなかった。
だから大学が寮として契約しているアパートを借りた。
でも、一番の問題は相部屋だということだ。
人見知りの僕が、見ず知らずの人と共同生活など送れるのだろうか…。
できれば、相手も僕と同じくらい地味で静かな人であってほしい。
間違っても日夜彼女を連れ込みそうなパーティーピーポーではありませんように!
10回くらい深呼吸して、玄関のドアノックを鳴らす。
「ぁ、あの……、ごめんください……」
か細い声で伺いを立てる。
しかし、5分くらい待っても何も音沙汰がない。
まだ同居人が帰ってきていない可能性もある。
そうだ、僕はさっさと大学を出てしまったけれど、普通はそこで友達を作ったりして、みんなでパブにくりだしたりするのだろう。
やっぱり、パーティーピーポーでもいいから、なるべく帰ってこないでほしいかも。
大家さんが同居人が不在だったら、ポストの中にスペアの鍵を入れてあると言っていた。
家の前のポストを覗くと、鍵が入れてある。
鍵で扉を開けると、中へ入った。
部屋は1ルームで、小さなバス・トイレ・キッチンがある。
1ルームの部屋には、シングルベッドが2つ、両側の壁に設置してあった。
ちょうど部屋を真ん中に区切って使えるだろう。
カバンを下ろして、どっちのベッドを使ったらいいんだろうと、右のベッドを見たその時、人が眠っていた。
「ひっ……!」
部屋が暗くて全然気づかなかった。
急いで距離をとって向かい側の壁に背中をつける。
驚いてうっかり声を出してしまった。
なるべく音を立てないようじっと様子を窺った。
その人は、深く眠っているのか、全く起きる気配がない。
ふーっと、息を吐いて肩の力を抜く。
そうしてようやく同居人を観察することができた。
「っ……!」
艶のある金髪に、ぬけるような白い肌。固く閉ざされた目は長いまつ毛で覆われていて、息をしているのが不思議なほど人形のように整った顔をしていた。
生まれて初めてこんなに綺麗な人を見た。
あまりの美しさに魅入っていると、その人が身じろぎをする。
その瞬間、肩までかかっていたブランケットがずれて、白い素肌がのぞいた。
「ぇっ……!」
この人裸で寝てる?!
ドクドクと心臓が鳴るのを感じながら、白い素肌に視線を滑らせる。
長くて綺麗な手足がブランケットからはみ出し、クロスしている。細い首の下には鎖骨が浮き出て、白い肌にポツンとピンクの乳首――
――ガンッ!!
「いっ……!!」
思いっきりすねをぶつけて痛みにもがく。
「ん……?」
しゃがんで痛みを堪えていると、同居人が目を覚ましたのか、目をこすりながら身体を起こした。
「……あ?なにしてんだお前」
「あっ、ぁ、あのっ、ぼ、僕は、ど、同居人で」
「同居人?」
「れ、レナード・フォスターですっ!き、今日から失礼しますっ」
「あー、なんかババアが言ってたかも」
「ひっ!」
彼が立ち上がると、ブランケットが外れ恥部が丸見えになった。
こちらに背を向け、丸いお尻を向ける。
均整のとれたモデルみたいに綺麗な身体だ。
床に落ちていたズボンを拾って、こちらを向くと、目を細めて口角を上げた。
「見すぎ」
「ぴゃっ!す、すみませんっ!あまりにも綺麗で…」
「……綺麗?」
同居人がじっと僕を見つめてくる。
美人に見つめられて動揺しない童貞などいない。
何か気に障ることを言ってしまっただろうか。
しどろもどろになりながら、目を泳がせる。
「あ、あのっ、あの」
「……ま、そんなわけねえか。」
ふいっと視線を逸らされる。
一気に緊張が解けるとともに、少し残念な気にもなる。
いや残念とか、何考えんだ僕。
「あーそうだ。俺は、メイ・フェレス。よろしく」
0
あなたにおすすめの小説
下っ端公務員の俺は派遣のαに恋してる【完結済】
tii
BL
市役所勤めの野々宮は、どこにでもいる平凡なβ。
仕事は無難、恋愛は停滞、毎夜の癒しはゲームとストゼロだけ。
そんな日々に現れたのは、派遣職員として配属された青年――朝比奈。
背が高く、音大卒で、いっけん冷たそうに見えるが、
話せば驚くほど穏やかで優しい。
ただひとつ、彼は自己紹介のときに言った。
「僕、αなんです。迷惑をかけるかもしれませんが……」
軽く流されたその言葉が、
野々宮の中でじわりと残り続ける。
残業続きの夜、偶然居酒屋でふたりきりになり――
その指先が触れた瞬間、世界が音を立てて軋んだ。
「……野々宮さんって、本当にβなんですか?」
揺らぎ始めた日常、
“立場”と“本能”の境界が、静かに崩れていく。
☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。
【第13回BL小説大賞】にエントリーさせて頂きました!
まこxゆず の応援 ぜひよろしくお願いします!
☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。
琥珀の檻
万里
BL
砂漠の王国の離宮「琥珀の間」で、王・ジャファルは、異母弟であるアザルを強引に抱き、自らの所有物であることを誇示していた。踊り子の息子として蔑まれ、日陰の存在として生きてきたアザルにとって、兄は憎悪と恐怖の対象でしかなかった。 しかし、その密事を見つめる影があった。ジャファルの息子であり、次期王位継承者のサリムである。サリムは叔父であるアザルに対し、憧憬を超えた歪な独占欲を抱いていた。 父から子へ。親子二人の狂おしい執着の視線に晒されたアザルは、砂漠の夜よりも深い愛憎の檻に囚われていく。
神様は僕に笑ってくれない
一片澪
BL
――高宮 恭一は手料理が食べられない。
それは、幸せだった頃の記憶と直結するからだ。
過去のトラウマから地元を切り捨て、一人で暮らしていた恭一はある日体調を崩し道端でしゃがみ込んだ所を喫茶店のオーナー李壱に助けられる。
その事をきっかけに二人は知り合い、李壱の持つ独特の空気感に恭一はゆっくりと自覚無く惹かれ優しく癒されていく。
初期愛情度は見せていないだけで攻め→→→(←?)受けです。
※元外資系エリート現喫茶店オーナーの口調だけオネェ攻め×過去のトラウマから手料理が食べられなくなったちょっと卑屈な受けの恋から愛になるお話。
※最初だけシリアスぶっていますが必ずハッピーエンドになります。
※基本的に穏やかな流れでゆっくりと進む平和なお話です。
今さら嘘とは言いにくい
藤掛ヒメノ@Pro-ZELO
BL
オレ、蓮田陽介と大津晃は、同じ独身男子寮に住む仲間だ。学生気分も抜けずに互いにイタズラばかりしている。
ある日、オレは酔いつぶれた晃に、「酔った勢いでヤっちゃったドッキリ」を仕掛けた。
驚くアイツの顔を見て笑ってやろうと思ったのに、目が覚めた晃が発したのは、「責任取る」の一言で――。
真面目な返事をする晃に、今さら嘘とは言いにくくて……。
イタズラから始まる、ハイテンション誤解ラブコメ!
給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!
永川さき
BL
魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。
ただ、その食事風景は特殊なもので……。
元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師
まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。
他サイトにも掲載しています。
【完結】名前のない皇后 −記憶を失ったSubオメガはもう一度愛を知る−
社菘
BL
息子を産んで3年。
瀕死の状態で見つかったエリアスは、それ以前の記憶をすっかり失っていた。
自分の名前も覚えていなかったが唯一所持品のハンカチに刺繍されていた名前を名乗り、森の中にひっそりと存在する地図上から消された村で医師として働く人間と竜の混血種。
ある日、診療所に運ばれてきた重病人との出会いがエリアスの止まっていた時を動かすことになる。
「――お前が俺の元から逃げたからだ、エリアス!」
「本当に、本当になにも覚えていないんだっ!」
「ととさま、かかさまをいじめちゃメッ!」
破滅を歩む純白竜の皇帝《Domアルファ》× 記憶がない混血竜《Subオメガ》
「俺の皇后……」
――前の俺?それとも、今の俺?
俺は一体、何者なのだろうか?
※オメガバース、ドムサブユニバース特殊設定あり(かなり好き勝手に詳細設定をしています)
※本作では第二性→オメガバース、第三性(稀)→ドムサブユニバース、二つをまとめてSubオメガ、などの総称にしています
※作中のセリフで「〈〉」この中のセリフはコマンドになります。読みやすいよう、コマンドは英語表記ではなく、本作では言葉として表記しています
※性的な描写がある話数に*をつけています
✧毎日7時40分+17時40分に更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
【完結】エデンの住処
社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。
それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。
ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。
『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。
「兄さん、僕のオメガになって」
由利とYURI、義兄と義弟。
重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は――
執着系義弟α×不憫系義兄α
義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか?
◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·
甘くてほろ苦い、恋は蜜やかに。
米粉あげぱん
BL
紅い唇は、物足りなさそうに震えるーー。
御堂 和樹(みどう かずき)と三神峯 景(みかみね けい)は、都内の大手有名製薬会社に勤める営業部の主任と薬事研究課で日々研究を重ねる薬剤師。 普段の業務ではなかなか関わらない二人だが、大阪での仕事で一緒になったことがきっかけで互いに惹かれ合う。
同じ会社の社員同士で、男同士。これ以上踏み込んではいけないと思いつつ、その感情は止まることを知らない。感情のままに噛みついた唇は、拒まれればすぐに離すつもりだった。 彼に会うたび、触れるたび、夢中になっていく。 ーー嬉しいことも辛いことも、一緒に背負っていきたい。
甘くほろ苦い、二人だけの秘密の恋。
※表紙は漫画家の星埜いろ様に描いていただきました!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる