1000年前の恋人が忘れられない吸血鬼の話

もちえなが

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レン編 同居人が吸血鬼だった話

出血

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それから3ヶ月、
僕たちはほぼ毎日、大学の登下校とランチを一緒にすることになった。

ほぼ毎日というのは、メイが一日中起きない日があるからだ。

そもそも朝が苦手なのだというが、最近はなんだかだるそうにしていて、とても心配だ。
帰ったら野菜スープを作ってあげよう。

「ねえ、それいつも一緒にいる人?」
「わっ!」

大学でぼんやりとデッサンしていたら、真後ろからいきなり声がかけられた。

「私ジュディ、よろしく」
「あ、ぼ、僕はレナードです」

手が差し出されて、恐る恐る握り返す。

そばかすの乗った赤毛の女の子だった。
大きな丸眼鏡でよく顔が見えないが、なんだか僕と同じ陰の空気を感じて安心する。

「で、どうなの?」
「あ、う、そ、そう…。で、でも内緒にして」

彫刻のデッサンをする時間だったのに、隠れてメイを描いていたのがバレたら、公開処刑で軽く死ねる。

僕の大学生活が早くも終わりを迎えそうで青ざめていると、ジュディがカラッと笑った。
 
「別に言いふらさないよ!君たちとても目立つから話してみたかったんだよね」
「あ、ありがとう……そ、そうだよね」

なるべく影に徹してたけど、やっぱり目立ってるんだ。もっと空気にならないと…。

「悪い意味じゃないよ?2人とも背が高いから!」
「あ、う、うん」

異様に縦に伸びた身長を恨めしく思って、余計に背中を丸める。

「あはは逆効果か。別に自信を持ったらいいのに。私なんてチビすぎて絵を描くにも不便なことだらけよ」

たしかに大きなキャンバスに絵を描く時は、多少背があると楽なのかもしれない。
でも結局脚立を使うし、どうなんだろう。
 
「君はち、チビじゃないと思うけど」
「ふは、優しいね。」

別に女性なら普通くらいではないだろうか。

「そういえばいつも一緒にいるけど、金髪の彼は、絵画をやってないの?」
「うん、カレッジ専攻も違うよ。」

あぁ、彼女もメイのことが好きなのかな。
 
メイと歩いていて、高嶺の花はかえって声をかけられないのだと知った。

メイが誰かと一緒にいるところをあまり見かけない。

そして、きっと僕の方が話しかけやすいから、たまにこうやってメイのことを聞きに来る人がいる。

「へーあのお洒落集団カレッジか、さすがだね」
「うん、ジュエリーデザインが専攻だって」
「え、意外」

僕も初めは驚いた。
てっきりファッションとか舞台とか、なんか華やかなものをやってそうだなという偏見があった。

でもメイにはきっとジュエリーが似合う。
自分ではあまりつけてるところを見ないけど、容易に想像ができた。

「あ、ごめんね?彼に好意があるとかじゃないんだ。ちょっと気になることがあって……」
「え?」
「なんか顔色が悪そうだなって、元々白いんだけど、蒼白いっていうか」

やっぱり、メイは他の人にもわかるほど具合が悪いんだ!
 
「そ、そうなんだ……!最近だるそうでとても心配で……」
「もしかしてなんだけど、彼貧血だったりしない?」
「え……?」

「ほら女子ってそういう日あるからなんとなくわかるっていうか」
「な、なるほど…。確かに血色がないし、そうかも」

「おせっかいかもしれないけど、貧血って放っておくと危険なの。ちゃんと、サポートしてあげてね?」
 
今日は、メイは学校を休み家で寝ていた。
最近特に寝込む日が多い。
本人は病院を拒むし、どうしようって思ってたけどとても助かった。

帰りに、奮発して赤身の牛肉を買う。
付け合わせのポテトとにんじんも買って家へ帰った。

「ただいま…め、メイ、大丈夫?」
「ん……、おかえり。朝よりはマシ」

レジ袋を持ってキッチンに行くと、メイのお昼用に作ったサンドイッチが食べられずそのままだった。

「え、今日何も食べてないんじゃ…」
「わりぃ、ちょっと食欲なくて……それ夜ご飯?」
 
「うん。どうしよう、ステーキなんてがっつりしたもの買ってきちゃった。やっぱりスープを――」
「ううん、ステーキがいい。」
「本当?今用意する」

メイの美貌に慣れることはないけど、さすがに3ヶ月も一緒にいれば、あまりどもらずに話せるようになった。
 
メイとの日々は意外にも穏やかだ。
メイは僕の吃音や見た目を揶揄わないし、静かに話すからとても居心地が良い。

メイが、料理が壊滅的にできないことを知ってからは、ずっと僕の担当だ。
その分食費を多く出してくれる。
いや、料理というか家事全般だろうか。
 
メイは洗濯機の使い方もわからず、叩いて壊したことがあった。
あの時は、大家さんにひたすら謝って交換してもらえたからよかったけど。

今までどうしていたのかと聞けば、汚くなったら捨てればいいだろう?と真顔で言われて、頭を抱えた。

実家では祖父と二人暮らしだったから、僕が家事をやっていて良かった。そうじゃなきゃ大変なことになっていた気がする。

牛肉をフォークで刺して塩胡椒で下ごしらえをする。
野菜を洗って茹でると、付け合わせの準備をした。
 
「なんか珍しいな。ステーキなんて」
「うん、ちょっと奮発しちゃった。」

メイが起きてきて、僕の後ろに立つと水を飲む。
 
「ふーん?あぁいくらだった?出すよ」
「ありがと、でも後でいいよ、メイは休んでて――」

メイがすっと首筋に顔を近づける。
すんっと匂いを嗅いで離れた。
ドクンドクンと心臓がうるさい。

「なんか、香水の匂いがする」
「あ、え、え?そ、そう……?わっ、い、いたっ」
「おい、大丈夫――」

にんじんを切っていたら、動揺して指を切ってしまった。
左の人差し指にじんわりと血が滲む。

あ、メイを心配させてしまった。

「ご、ごめん、だいじょ――え?」
 
メイがじっと指を見つめると、そのまま口に含まれる。

メイの瞳が赤く光ったと思った瞬間、床に押し倒されていた。

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