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第二章

27.舐めるんだよ

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「ウトゥ。黙って下さい」
「キ国の神々全員が苦境に晒されようとしている。とりあえずこの焦げた土人形の皮膚を戻すぞ。お前がやらないなら、俺がやる」
「や、やるって何を?」
 ただならぬ雰囲気に怯えながら聞くと、ウトゥがベロンと舌を出す。
「舐めるんだよ。神々の唾液で皮膚の再生が俄然早くなる。お前、鎮静効果のある軟膏が身体に吸収されるまで相当苦しんだろ?軟膏よりも回復が早い治療法があったらならそっちを使えよって恨んでもいいぐらいだ」
 何だか皮膚が少し熱くなり始めた。鎮痛効果の高い軟膏の効果が切れかけているのかもしれない。
 いや、スエンに舐められている自分を想像してしまったせいもある。
 身体の隅々を手当してくれるあの指の代わりに今度は舌が……。
「シンラ。こちらに」
 スエンに声をかけられはっとする。彼が立ち上がって廊下に出ていくので素直に付いていった。スエンは、森羅をこれまで入ったことのない部屋に連れて行く。
 作業台といってよさそうな大きな机。壁の本棚には乾いた粘土板がたくさん刺さっている。
「しばらくここにいてください。居間でウトゥと込み入った話をするので」
「あの」
「貴方をクルヌギアに連れてきたのは、私です。貴方が責任を感じる必要はありません」
「でも」
 スエンが森羅の夜着を黙ってずらした。懐から軟膏を出して森羅の背中側に周り塗り始める。
「ん……」
 いつもと違った変な感触。
 あの赤神が衝撃的なことをいったせいだ。
 これは舌なんかじゃない。
 先生の指。治療しているだけ。
 それでも、尻の付け根のあたりからゾクゾクとした震えが上がってくる。
「今、痛みますか?もう少し強いのを使う?」
 声を出したら裏返りそうだったので、首だけ振る。
 そうこうしているうちに手当が終わる。
 軟膏を手に握らされた。
「さあ、休んで下さい。痛むなら自分でこれを。背中の場合は声をかけてください。夜中でもかまいません」
「先生。あの……」
「はい?」
 ウトゥは友達なのか、それともそれ以上の関係なのか聞きたかった。
 でも、聞けなかった。
 それは、とても立ち入ったことで、迷惑な居候の立場では無理だったからだ。
「最善の治療をして上げられなくて申し訳ありませんね」
 扉が閉まる。
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