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第二章

32.つ、つまり結婚ってことですか?オレと先生が??

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「今なんて?」
「セ・イ・コ・ン。また、耳の不具合か?」
 森羅は慌てた。
「つまり結婚ってことですか?オレと先生が??」
「へえ。お前らの国じゃそう言うの?」
 脳裏に、教会の鐘が響く。タキシードを着たスエンと自分が浮かんでくる。
「そもそも、神様と結婚できるわけないじゃないですか!」
「意外。丸く収まるとは?から始まって、持論を展開させるのかと思ったら答えは出ずか。俺としてはちょっといい気分。ああ、分かったぞ。お前、自分の感情が絡むと淀みなく話すことができなくなるんだな」
「ほっといてくいださいっっっ!!!」
「でっけえ声」
 スエンは高笑い。
 完全に主導権を取られてしまった気分だ。
 さらに悔しいことに、
「まあ、スエンと話してみろよ。もしくは「先生。オレと聖婚して」って直球で言うとかさ。まあ、あいつは素直じゃねえから、一筋縄ではいかないだろうが」
と突き放された。
 私室を出て、うーうー唸りながら居間を通過。
 スエンの姿は無い。野草園に行っているのかもしれない。
 壁にかけてあったローブを羽織って外に出る。
 クルヌギアはいつも夜で太陽に焼かれることは無いが、真っ黒に焼け焦げた悪魔が徘徊していると誰かに見られては困る。
「クルヌギアに調査団がいつ来るかも解らないっていうのに、ウトゥさんのあの落ち着きぶり。きっと、調査団がキ国の出発したら連絡をしてくるような土人形を手懐けているんだ。でも、先発隊がいたらまずいから」
 タシタシと背後では草を踏む音がする。茶トラのニャーゴが付いてきているのだ。
 夜の平原を歩いて歩いて、やがて見えてきたのはオーロラみたいな何かだ。
 それが、天から地上まで半透明の葡萄色みたいな幕が降りていて、ゆらゆらと揺れている。
「すげえ。ここが昼と夜の境目か」
 初めてクルヌギア入りした時は、意識が無かった。だから、こんな物があるのを今日初めて知った。
「世界を別ける幕なんだろうな、これ。やっぱりキ国とクルヌギアは別世界だ。悪魔の原型すらまだ出来上がっていないキ国じゃ、クルヌギアは死の世界って思われても当然かもな」
 手を伸ばそうとすると、腕に茶と白のシマシマの太い尻尾がすぐさま絡みついてくる。まるで、やめろと言っているようだ。
 ニャーゴは、草原に腹ばいになって森羅の背もたれ役をかって出てくれた。
「向こう側には行きやしないって。これ以上黒焦げになるのは御免だ」
 星が瞬く群青色の天空を見上げる。
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