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エピローグ
子供達は成長していくものです
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スペルさんが中の世界を去ってから半年。
俺はやっぱりスペルさんの最期を笑って見送ることが出来なかった。
既に余命短く寝たきりになり、自分が養育してきた数多の子供達に囲まれて楽しそうな顔をしているスぺルさんを見て居ても立ってもいられなくなった俺達は、スペルさんの元に駆けつけた。
「ヒロシ殿、皆んな来てくれたのか。
皆んなありがとう。お陰で楽しい人生を送れたよ。
戦うことしか能の無かった俺が、こうして立派になった子供達を目の当たりにして、やっと兄上と同じように民を想えるようになったと思う。
ヒロシ殿、あの時あなたが背中を押してくれたから俺は救われた。
兄上に連なる数多の者達が兄上の意志を脈々と繋ぎ、そして死んでいった。
あの時俺はそれをずっと見ていたんだ。
そして最後となるであろうユリアが不治の病に罹っており、彼女に子供がいないことがわかった時俺は迷っていた。
そして決断したのだ。
彼女と共に生き、彼女の最期を看取ると。
そして兄上の意思であり、彼女の意思でもある民への想いを俺が受け継ごうと。」
細い息をしながらもしっかりと話すスペルさん。
その姿は魔物のスタンピードで初めて会った時の力強さを思い出させた。
イリヤやミーアの咽び泣く声が聞こえる。
「ヒロシ殿、安心してくれ。
ユリアと俺の想いはこの子達が引き継いでくれる。
ユリアが一生涯をかけて育てたこの子達が。」
上は50歳くらいから下は赤ん坊まで、50人は居るだろうか。
スペルさんがモニターで見ていた時はまだ5人くらいしかいなかったから、ユリアさん亡き後スペルさんが頑張って育てたのだろう。
スペルさんが育てた子供達の目に涙は無い。
その代わりスペルさんによく似た強い意志が感じられる。
彼らならユリアさん、そしてスペルさんの意志を受け継いでくれるだろう。
実際、彼らの中には聖職者もいれば商人、職人もいる。様々な分野で活躍する彼らは、彼らがそうであったように身寄りのない子供達をそれぞれが養育しているのだ。
「ヒロシ殿、俺はあなたと出会って本当に幸せだった。
国について、民の幸福について、我々一族が追求してきたそれらの本当の姿を教えてもらい、そしてそれが現実に実現されたのだと思う。
たしかに未だ恵まれない子供達は存在するだろう。
俺達が育てられなかった子供達の方が圧倒的に多いだろうしな。
ただ俺達の世界が正しい方向に向かっていることだけは確かだ。
40年間外の世界で暮らしてみてわかったことだ。
俺は兄上やユリアのところへ行こう。
お別れだな。楽しかったぞ、ヒロシど………」
近くで見守っていたスペルさんの子供達の啜り泣く声が聞こえる。
イリヤやミーア、その他中の世界の住人達も泣いているが、俺は不思議と涙が出てこなかった。
スペルさん、あちらの世界でも無双しながら楽しんで下さいね。
さようなら。
スペルさんの臨終に立ち合い、葬儀に参列した俺達はそれぞれの想いを胸に外の世界を後にした。
「お帰りなさいませ。」
子供達の面倒を見ていてくれたノアさんが迎えてくれる。
「ただいま。ノアさん、子供達をありがとう。」
本当の幸せって何だろう。
スペルさんの最後に見せた幸せそうな顔に俺は少し嫉妬していた。
イリヤとミーア、そして3人の子供に囲まれた幸せな生活。
食べるものにも住むところにも不自由しない現状、これ以上何を望むことがあるのかと思っていた。
でも、俺が死ぬ時にはあのスペルさんの笑顔は出来ないだろう。
漫然とそう思う。
充実感?達成感?
よくわからないや。
「ヒロシ様、夕食のご用意が出来ましたが。」
ノアさんが声を掛けてきた。
気が付けば夕暮れ時、家に戻ってから既に2時間が過ぎている。
外の世界では1週間が経過しているので、あそこにいた人達は既にスペルさんの死を乗り越えて平常の生活に戻っていることだろう。
俺は夕食を頂くために家族が待つ食堂へと急いだ。
月日は流れていく。
3人の子供達も大きくなり既に思春期を迎える年齢だ。
ちょうど俺がミケツカミ様にこの世界にほおりこまれた年齢と同じくらいか。
デニスはシルベスタさんに剣術を習っている。
マリヤはノアさんやオハルさんから家事全般を、レーサはクルステさんから魔法をそれぞれ習っているようだ。
性格もそれぞれ違う。
デニスは飽きっぽいが、一旦気に入るととてつもなくのめり込むタイプにようだ。
マリヤはしっかり者で、ノアさんと家の中の切り盛りしてくれている。
お嬢様育ちのイリヤやミーアは既にたじたじだ。
レーサはミーアに似ておっとりタイプ。
魔人の血が濃いため魔力量が豊富で、魔法の才能をクルステさんに見込まれたみたいだな。
いづれ彼らがこの世界を担っていくだろうから、しっかりと頑張って欲しいと思う。
外の世界では定期的な伝染病や大規模な自然災害が発生しているようだが、向こうの政府だけで上手く乗り切っているようだ。
俺はというと、相変わらずのんびりしている。
時たま観察室に行き、以前スペルさんがそうしていたようにモニターを見つめることが多くなったくらいかな。
俺はやっぱりスペルさんの最期を笑って見送ることが出来なかった。
既に余命短く寝たきりになり、自分が養育してきた数多の子供達に囲まれて楽しそうな顔をしているスぺルさんを見て居ても立ってもいられなくなった俺達は、スペルさんの元に駆けつけた。
「ヒロシ殿、皆んな来てくれたのか。
皆んなありがとう。お陰で楽しい人生を送れたよ。
戦うことしか能の無かった俺が、こうして立派になった子供達を目の当たりにして、やっと兄上と同じように民を想えるようになったと思う。
ヒロシ殿、あの時あなたが背中を押してくれたから俺は救われた。
兄上に連なる数多の者達が兄上の意志を脈々と繋ぎ、そして死んでいった。
あの時俺はそれをずっと見ていたんだ。
そして最後となるであろうユリアが不治の病に罹っており、彼女に子供がいないことがわかった時俺は迷っていた。
そして決断したのだ。
彼女と共に生き、彼女の最期を看取ると。
そして兄上の意思であり、彼女の意思でもある民への想いを俺が受け継ごうと。」
細い息をしながらもしっかりと話すスペルさん。
その姿は魔物のスタンピードで初めて会った時の力強さを思い出させた。
イリヤやミーアの咽び泣く声が聞こえる。
「ヒロシ殿、安心してくれ。
ユリアと俺の想いはこの子達が引き継いでくれる。
ユリアが一生涯をかけて育てたこの子達が。」
上は50歳くらいから下は赤ん坊まで、50人は居るだろうか。
スペルさんがモニターで見ていた時はまだ5人くらいしかいなかったから、ユリアさん亡き後スペルさんが頑張って育てたのだろう。
スペルさんが育てた子供達の目に涙は無い。
その代わりスペルさんによく似た強い意志が感じられる。
彼らならユリアさん、そしてスペルさんの意志を受け継いでくれるだろう。
実際、彼らの中には聖職者もいれば商人、職人もいる。様々な分野で活躍する彼らは、彼らがそうであったように身寄りのない子供達をそれぞれが養育しているのだ。
「ヒロシ殿、俺はあなたと出会って本当に幸せだった。
国について、民の幸福について、我々一族が追求してきたそれらの本当の姿を教えてもらい、そしてそれが現実に実現されたのだと思う。
たしかに未だ恵まれない子供達は存在するだろう。
俺達が育てられなかった子供達の方が圧倒的に多いだろうしな。
ただ俺達の世界が正しい方向に向かっていることだけは確かだ。
40年間外の世界で暮らしてみてわかったことだ。
俺は兄上やユリアのところへ行こう。
お別れだな。楽しかったぞ、ヒロシど………」
近くで見守っていたスペルさんの子供達の啜り泣く声が聞こえる。
イリヤやミーア、その他中の世界の住人達も泣いているが、俺は不思議と涙が出てこなかった。
スペルさん、あちらの世界でも無双しながら楽しんで下さいね。
さようなら。
スペルさんの臨終に立ち合い、葬儀に参列した俺達はそれぞれの想いを胸に外の世界を後にした。
「お帰りなさいませ。」
子供達の面倒を見ていてくれたノアさんが迎えてくれる。
「ただいま。ノアさん、子供達をありがとう。」
本当の幸せって何だろう。
スペルさんの最後に見せた幸せそうな顔に俺は少し嫉妬していた。
イリヤとミーア、そして3人の子供に囲まれた幸せな生活。
食べるものにも住むところにも不自由しない現状、これ以上何を望むことがあるのかと思っていた。
でも、俺が死ぬ時にはあのスペルさんの笑顔は出来ないだろう。
漫然とそう思う。
充実感?達成感?
よくわからないや。
「ヒロシ様、夕食のご用意が出来ましたが。」
ノアさんが声を掛けてきた。
気が付けば夕暮れ時、家に戻ってから既に2時間が過ぎている。
外の世界では1週間が経過しているので、あそこにいた人達は既にスペルさんの死を乗り越えて平常の生活に戻っていることだろう。
俺は夕食を頂くために家族が待つ食堂へと急いだ。
月日は流れていく。
3人の子供達も大きくなり既に思春期を迎える年齢だ。
ちょうど俺がミケツカミ様にこの世界にほおりこまれた年齢と同じくらいか。
デニスはシルベスタさんに剣術を習っている。
マリヤはノアさんやオハルさんから家事全般を、レーサはクルステさんから魔法をそれぞれ習っているようだ。
性格もそれぞれ違う。
デニスは飽きっぽいが、一旦気に入るととてつもなくのめり込むタイプにようだ。
マリヤはしっかり者で、ノアさんと家の中の切り盛りしてくれている。
お嬢様育ちのイリヤやミーアは既にたじたじだ。
レーサはミーアに似ておっとりタイプ。
魔人の血が濃いため魔力量が豊富で、魔法の才能をクルステさんに見込まれたみたいだな。
いづれ彼らがこの世界を担っていくだろうから、しっかりと頑張って欲しいと思う。
外の世界では定期的な伝染病や大規模な自然災害が発生しているようだが、向こうの政府だけで上手く乗り切っているようだ。
俺はというと、相変わらずのんびりしている。
時たま観察室に行き、以前スペルさんがそうしていたようにモニターを見つめることが多くなったくらいかな。
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