97 / 382
第4章 リザベートの結婚狂想曲
18【もどかしい恋の行方4】
しおりを挟む
<<リザベート視点>>
マサルさんが言っていた刻限が、だんだん近づいてきました。
マサルさんは、いつも通り飄々としながら、ロケット作成の指揮に当たっています。
ロケットには誰かが乗り込んで、最終的に隕石に極大魔法を打ち込む必要があります。
マサルさんは、自分がロケットに搭乗すると言っています。
マサルさんは何も言いませんが、密かに覚悟を決めているようです。
わたしにはよくわかりませんが、一旦空気の無い世界まで飛び出して隕石を壊した後、戻って来る時に空気の摩擦で高温が発生するようです。
その熱に耐えられるかどうかをマサルさんは懸念しています。
空気の摩擦ってよくわからないのですが、マサルさんの前世の世界では、その空気の無い世界まで行く技術があるそうです。
だから、マサルさんが心配するということは、それだけ危険を伴うということなのでしょう。
マサルさんはその対策として、なにか繭のようなものを作っているみたいですが、その仕上がりに不安があるのかもしれません。
行って欲しくないです。
少しでも不安があるのなら。
でも、わかっているんです。
誰かを犠牲にするのであれば、自分が犠牲になることを選ぶ人なのですから。
そんなマサルさんが大好きなんです。
わかっているから、止められない。
でも行かないで欲しい。
わたしの中で葛藤が交錯します。
魔族の方々が魔石に魔力を注いでいます。
これが終わると、マサルさんが行ってしまう。
気がつくと、わたしはマサルさんの胸の中で泣いていました。
「マサルさん行かないで。」
「リズ、誰かが行かなきゃいけないんだ。
一番成功する可能性が高い俺が行くべきだろう。」
「嫌だ。嫌だ。」
泣きじゃくるわたしに、マサルさんは優しく声を掛けてくれます。
「必ずリズの元へ帰ってくるよ。
約束するよ。
そして、帰って来たら結婚しよう。
待っていてくれるかい。」
わたしは頷くことしか出来ませんでした。
マサルさんは俯くわたしのあごを優しく持ち上げ、キスをしてくれました。
やがて、打ち上げの時が来ました。
魔族の方々が、魔石の魔力量の最終チェックに入っています。
マサルさんは既にロケットに搭乗しています。
マサルさんの合図で、最後の魔力が注がれ、ロケットが飛び立ちました。
巨大なロケットは、そのまま徐々に小さくなり、そして見えなくなった時、わたしの目からは涙が溢れて止まりませんでした。
<<マサル視点>>
ロケットが発射された。
目標となる隕石まで後1時間程度と予測している。
既に、身体の周りには薄い結界を張り、ポーチ型収納魔道具に入れた酸素ボンベから酸素供給を受けている。
大気圏ギリギリのところに着いたら外に出て、極大魔法をとにかく打ち込むだけだ。
多段階ロケットを次々切り離し、どんどん登っていく。
空の色が濃くなっていき、やがて真っ暗になった。
探知魔法を使い、隕石を探る。
ものすごい勢いでこちらに向かってくるのがわかる。
隕石の軌道から少しズレて、斜めから魔法を当てるように調整する。
やがて隕石が見えてきた。
いまだ。
無属性の衝撃波を連続して数え切れない程連発する。
空気中の魔素を取り込む魔方陣を使って、自分の魔力に変換 している。
ちょうど大気圏のギリギリのところにいるため、魔力の枯渇も心配ない。
何百発打ち込んだだろう。
ドーン!!
遂に隕石を粉々に粉砕できた。
この世界を守れたことに安堵する。
さて、リズが待っているあの場所に帰ろう。
俺は、ポーチ型収納魔道具からセラミックタイルを貼った楕円形のカプセルを取り出す。
理論上は、このカプセルで、大気圏再突入が可能になるはずだ。
カプセルには重力を軽減する魔方陣を刻んである。
意を決して、カプセルに乗り込み大気圏に再突入した。
<<リザベート視点>>
マサルさんが飛び立って3時間が経過した。
少し前に、大きな音がして、大量の彗星が見えたが、あれがマサルさんの言っていた、隕石の残骸なのだろうか。
しばらくして、暗くなりかけた空にひときわ明るい光が見え、それはだんだん大きくなって、頭上を通過し、飛んでいっしまった。
そして遠くの方でものすごい爆発音が聞こえこの辺りにも水が降り注ぐ。
まさかマサルさんが海に落ちたんじゃ、と不安がよぎる。
その時、頭上からわたしの名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「リズ、ただいま。成功したよ。結婚しよう。」
その声の主は、いつもの飄々とした顔つきで降り立ち、そっとキスしてくれました。
第4章完
マサルさんが言っていた刻限が、だんだん近づいてきました。
マサルさんは、いつも通り飄々としながら、ロケット作成の指揮に当たっています。
ロケットには誰かが乗り込んで、最終的に隕石に極大魔法を打ち込む必要があります。
マサルさんは、自分がロケットに搭乗すると言っています。
マサルさんは何も言いませんが、密かに覚悟を決めているようです。
わたしにはよくわかりませんが、一旦空気の無い世界まで飛び出して隕石を壊した後、戻って来る時に空気の摩擦で高温が発生するようです。
その熱に耐えられるかどうかをマサルさんは懸念しています。
空気の摩擦ってよくわからないのですが、マサルさんの前世の世界では、その空気の無い世界まで行く技術があるそうです。
だから、マサルさんが心配するということは、それだけ危険を伴うということなのでしょう。
マサルさんはその対策として、なにか繭のようなものを作っているみたいですが、その仕上がりに不安があるのかもしれません。
行って欲しくないです。
少しでも不安があるのなら。
でも、わかっているんです。
誰かを犠牲にするのであれば、自分が犠牲になることを選ぶ人なのですから。
そんなマサルさんが大好きなんです。
わかっているから、止められない。
でも行かないで欲しい。
わたしの中で葛藤が交錯します。
魔族の方々が魔石に魔力を注いでいます。
これが終わると、マサルさんが行ってしまう。
気がつくと、わたしはマサルさんの胸の中で泣いていました。
「マサルさん行かないで。」
「リズ、誰かが行かなきゃいけないんだ。
一番成功する可能性が高い俺が行くべきだろう。」
「嫌だ。嫌だ。」
泣きじゃくるわたしに、マサルさんは優しく声を掛けてくれます。
「必ずリズの元へ帰ってくるよ。
約束するよ。
そして、帰って来たら結婚しよう。
待っていてくれるかい。」
わたしは頷くことしか出来ませんでした。
マサルさんは俯くわたしのあごを優しく持ち上げ、キスをしてくれました。
やがて、打ち上げの時が来ました。
魔族の方々が、魔石の魔力量の最終チェックに入っています。
マサルさんは既にロケットに搭乗しています。
マサルさんの合図で、最後の魔力が注がれ、ロケットが飛び立ちました。
巨大なロケットは、そのまま徐々に小さくなり、そして見えなくなった時、わたしの目からは涙が溢れて止まりませんでした。
<<マサル視点>>
ロケットが発射された。
目標となる隕石まで後1時間程度と予測している。
既に、身体の周りには薄い結界を張り、ポーチ型収納魔道具に入れた酸素ボンベから酸素供給を受けている。
大気圏ギリギリのところに着いたら外に出て、極大魔法をとにかく打ち込むだけだ。
多段階ロケットを次々切り離し、どんどん登っていく。
空の色が濃くなっていき、やがて真っ暗になった。
探知魔法を使い、隕石を探る。
ものすごい勢いでこちらに向かってくるのがわかる。
隕石の軌道から少しズレて、斜めから魔法を当てるように調整する。
やがて隕石が見えてきた。
いまだ。
無属性の衝撃波を連続して数え切れない程連発する。
空気中の魔素を取り込む魔方陣を使って、自分の魔力に変換 している。
ちょうど大気圏のギリギリのところにいるため、魔力の枯渇も心配ない。
何百発打ち込んだだろう。
ドーン!!
遂に隕石を粉々に粉砕できた。
この世界を守れたことに安堵する。
さて、リズが待っているあの場所に帰ろう。
俺は、ポーチ型収納魔道具からセラミックタイルを貼った楕円形のカプセルを取り出す。
理論上は、このカプセルで、大気圏再突入が可能になるはずだ。
カプセルには重力を軽減する魔方陣を刻んである。
意を決して、カプセルに乗り込み大気圏に再突入した。
<<リザベート視点>>
マサルさんが飛び立って3時間が経過した。
少し前に、大きな音がして、大量の彗星が見えたが、あれがマサルさんの言っていた、隕石の残骸なのだろうか。
しばらくして、暗くなりかけた空にひときわ明るい光が見え、それはだんだん大きくなって、頭上を通過し、飛んでいっしまった。
そして遠くの方でものすごい爆発音が聞こえこの辺りにも水が降り注ぐ。
まさかマサルさんが海に落ちたんじゃ、と不安がよぎる。
その時、頭上からわたしの名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「リズ、ただいま。成功したよ。結婚しよう。」
その声の主は、いつもの飄々とした顔つきで降り立ち、そっとキスしてくれました。
第4章完
10
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命
yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~
中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」
唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。
人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。
目的は一つ。充実した人生を送ること。
異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」
その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ!
「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた!
俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる