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第11章 ランスの恋
7 【セラフお手伝いする】
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<<侍女頭メアリ視点>>
カトウ家に新しいお客様が増えました。
リザベート奥様の古い知り合いの娘さんでセラフ様とおっしゃいます。
わたしの第一印象は口数の少ない、良家のお嬢様という感じでした。
服は地味なものですが、動きやすくデザインも悪くありませし、生地は、肌理が細かく上等なものだと思われます。
お屋敷に入られても特に驚くこともなく、普通にしておられましたし、王族であるランス様とも親しげにお話しだったので、こういう王族や貴族様との交流もおありなのでしょう。
ランス様が最近、仕事から戻って、またお出かけになっておられるのは存じておりました。
すぐに戻ってこられるのであまり気にしておりませんでしたが、今日はその帰りにセラフ様をお連れになったようです。
その後ランス様が、仕事終わりにお出かけになることはなくなりましたので、もしかするとランス様とセラフ様は昔馴染みで、ランス様はセラフ様の到着をお待ちになっておられたのかもしれません。
セラフ様は、セイル様やハリー様とも旧知のご様子です。
貴族様の交友関係は複雑だとお聞きしますので、あまり詮索しないようにいたしましょう。
さて、このお屋敷も3人の小さなお客様をお迎えして、大変賑やかになっています。
ランス様やイリヤ様も同年代の方が増えて楽しそうです。
いくら勉強ができて大人以上にしっかりされていても、やはり同年代と一緒におられるのがよいのでしょう。
セラフ様がお屋敷に来られてから1週間くらい経ったころ、セラフ様が厨房に来られました。
「セラフ様、何かご入用でございましょうか?」
「いえ、料理を作るところを見たいと思って。」
言葉少なですが、料理に興味があることが伺えます。
きっと今まで食べたことのない料理に興味を持ったのでしょうね。
だって、このお屋敷で食べられる料理は、世界中どこに行っても食べられないものが多いですもの。
決して高価な食材じゃないんです。
家宰のクリスさんに聞いたところ、このお屋敷で使われている食材は、種類としては貴族どころか上級商人以下のものらしいのですが、その品質は抜群に良いらしいとのこと。
お屋敷で作られた野菜や飼われている家畜、定期的に間引きされている魔物等から採れる食材はどれも一級品で、市場で買うそれとは味が全く違います。
また、醤油や味噌等、未だ市場では稀少な調味料も自家製で、ふんだんに使用されていることも、料理の味を高めている大きな要因です。
でも最大の要因は、調理方法でしょう。
焼く、茹でるくらいしか調理方法が無かったのに、蒸す、発酵させる、薫製、揚げる等新しい調理方法が取り入れられました。
これにより、一般的な食材が全然違った料理に化けたのです。
これらは旦那様からもたらされ、奥様やお屋敷の調理長が工夫された結果です。
カトウ家の料理人は、各国の王家から引き抜きが来るほどの人気ぶりで、このお屋敷を巣立った料理人で、王家の料理長を務めている者達も多くいます。
当然、セラフ様が料理方法に興味を持たれても当然のことだと思います。
「セラフ様、どうぞご案内致しますね。」
わたしは少し嬉しそうな表情のセラフ様を料理長の元に案内しました。
料理長はお茶受けのスフレケーキを焼いているところです。
これもこのお屋敷発で、爆発的な人気商品になった物のひとつですね。
「セラフ様、これはスフレケーキというものです。」
料理長のでの動きを、セラフ様は熱心に見入っておられます。
「わたしも手伝って良いですか?」
セラフ様の突然の申し出に、使用人一同戸惑いを隠せません。
するとそこにリザベート様が通り掛かられました。
「あらセラフちゃん、こんなところでどうしたの?」
「料理をお手伝いしようと思って。」
リザベート様は少し考えた後、ニッコリ笑って、料理長とわたしに仰られます。
「セラフちゃんを手伝わせてあげて下さいね。
セラフちゃんが希望するものならば何でも良いわ。
たぶん、ウチの子達やセイルちゃんもハリー君も、外で働いているからじゃないかしら。
セラフちゃん、別に気にしなくて良いのよ。
自分の気の向いた時だけでいいからね。」
「分かった。」
セラフ様は短くそう言うと、わたしがセラフ様用に用意したエプロンを着けて、厨房に入って行かれました。
「さあ、後は料理長に任せて、我々は仕事に戻りましょうか。」
わたしはリザベート様の言葉で、仕掛かり中であった庭の清掃に戻ったのです。
しばらくして、わたしが使用人休憩室にいると、料理長が入って来ました。
「メアリさん、あのセラフってお方、大した腕を持っておられたよ。
まるでウチの調理方法を熟知しているように、当たり前のように料理を作っていくんです。
ありゃ、この前モーグル王国の王家料理長に引き抜かれたヤハルよりも、料理の腕は確かかも知れねえ。」
料理長の言葉を聞いてわたしは少し驚きましたが、すぐに立ち直ることができました。
だって、この程度で驚いていたら、このお屋敷で侍女頭なんてやっていられないのですから。
カトウ家に新しいお客様が増えました。
リザベート奥様の古い知り合いの娘さんでセラフ様とおっしゃいます。
わたしの第一印象は口数の少ない、良家のお嬢様という感じでした。
服は地味なものですが、動きやすくデザインも悪くありませし、生地は、肌理が細かく上等なものだと思われます。
お屋敷に入られても特に驚くこともなく、普通にしておられましたし、王族であるランス様とも親しげにお話しだったので、こういう王族や貴族様との交流もおありなのでしょう。
ランス様が最近、仕事から戻って、またお出かけになっておられるのは存じておりました。
すぐに戻ってこられるのであまり気にしておりませんでしたが、今日はその帰りにセラフ様をお連れになったようです。
その後ランス様が、仕事終わりにお出かけになることはなくなりましたので、もしかするとランス様とセラフ様は昔馴染みで、ランス様はセラフ様の到着をお待ちになっておられたのかもしれません。
セラフ様は、セイル様やハリー様とも旧知のご様子です。
貴族様の交友関係は複雑だとお聞きしますので、あまり詮索しないようにいたしましょう。
さて、このお屋敷も3人の小さなお客様をお迎えして、大変賑やかになっています。
ランス様やイリヤ様も同年代の方が増えて楽しそうです。
いくら勉強ができて大人以上にしっかりされていても、やはり同年代と一緒におられるのがよいのでしょう。
セラフ様がお屋敷に来られてから1週間くらい経ったころ、セラフ様が厨房に来られました。
「セラフ様、何かご入用でございましょうか?」
「いえ、料理を作るところを見たいと思って。」
言葉少なですが、料理に興味があることが伺えます。
きっと今まで食べたことのない料理に興味を持ったのでしょうね。
だって、このお屋敷で食べられる料理は、世界中どこに行っても食べられないものが多いですもの。
決して高価な食材じゃないんです。
家宰のクリスさんに聞いたところ、このお屋敷で使われている食材は、種類としては貴族どころか上級商人以下のものらしいのですが、その品質は抜群に良いらしいとのこと。
お屋敷で作られた野菜や飼われている家畜、定期的に間引きされている魔物等から採れる食材はどれも一級品で、市場で買うそれとは味が全く違います。
また、醤油や味噌等、未だ市場では稀少な調味料も自家製で、ふんだんに使用されていることも、料理の味を高めている大きな要因です。
でも最大の要因は、調理方法でしょう。
焼く、茹でるくらいしか調理方法が無かったのに、蒸す、発酵させる、薫製、揚げる等新しい調理方法が取り入れられました。
これにより、一般的な食材が全然違った料理に化けたのです。
これらは旦那様からもたらされ、奥様やお屋敷の調理長が工夫された結果です。
カトウ家の料理人は、各国の王家から引き抜きが来るほどの人気ぶりで、このお屋敷を巣立った料理人で、王家の料理長を務めている者達も多くいます。
当然、セラフ様が料理方法に興味を持たれても当然のことだと思います。
「セラフ様、どうぞご案内致しますね。」
わたしは少し嬉しそうな表情のセラフ様を料理長の元に案内しました。
料理長はお茶受けのスフレケーキを焼いているところです。
これもこのお屋敷発で、爆発的な人気商品になった物のひとつですね。
「セラフ様、これはスフレケーキというものです。」
料理長のでの動きを、セラフ様は熱心に見入っておられます。
「わたしも手伝って良いですか?」
セラフ様の突然の申し出に、使用人一同戸惑いを隠せません。
するとそこにリザベート様が通り掛かられました。
「あらセラフちゃん、こんなところでどうしたの?」
「料理をお手伝いしようと思って。」
リザベート様は少し考えた後、ニッコリ笑って、料理長とわたしに仰られます。
「セラフちゃんを手伝わせてあげて下さいね。
セラフちゃんが希望するものならば何でも良いわ。
たぶん、ウチの子達やセイルちゃんもハリー君も、外で働いているからじゃないかしら。
セラフちゃん、別に気にしなくて良いのよ。
自分の気の向いた時だけでいいからね。」
「分かった。」
セラフ様は短くそう言うと、わたしがセラフ様用に用意したエプロンを着けて、厨房に入って行かれました。
「さあ、後は料理長に任せて、我々は仕事に戻りましょうか。」
わたしはリザベート様の言葉で、仕掛かり中であった庭の清掃に戻ったのです。
しばらくして、わたしが使用人休憩室にいると、料理長が入って来ました。
「メアリさん、あのセラフってお方、大した腕を持っておられたよ。
まるでウチの調理方法を熟知しているように、当たり前のように料理を作っていくんです。
ありゃ、この前モーグル王国の王家料理長に引き抜かれたヤハルよりも、料理の腕は確かかも知れねえ。」
料理長の言葉を聞いてわたしは少し驚きましたが、すぐに立ち直ることができました。
だって、この程度で驚いていたら、このお屋敷で侍女頭なんてやっていられないのですから。
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