最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

まーくん

文字の大きさ
297 / 382
第14章 そして神になった

5【とある星の再建1】

しおりを挟む
<<日本から来た青年ケンジ視点>>

こんなはずじゃ無かったのに。
何が問題だったんだろう。

今彼が立っているのは、廃墟と化したビル群と紫色の薄暗い空が広がる草原。

人がいなくなったこの街だった場所で彼は途方に暮れていた。





鄙びた日本の原風景のようなどこかの片田舎に突然飛ばされて来たケンジは、当初不安よりもこれから始まるであろう自身の無双生活に期待を膨らませていた。

彼に与えられた能力は創造と時間操作。

自分が思い描いた風景を作り出すチート能力の『創造』と時間の流れを早める能力の『時間操作』を持って転移してきた彼は、得意の絶頂だったのだ。

村から一歩出た草原にビルを建ててみた。

テレビで見たことのある屋上に船のようなものが載っているツインタワー。

たしか屋上の船の部分にはプールがあったはず。

彼は屋上に登ろうとして唖然とする。

エレベーターがないのだ。

そう、この創造の能力は細部までしっかりと意識しないと、意識した部分しか作ってくれないのだ。

彼はこのビルを諦め、隣に新しいビルを建てようと考えた。

今度は屋上のプールとエレベーター、もちろんプールには水も忘れない。

「創造!」

間違いなく厨二病の彼は能力名を得意げに叫ぶタイプの少年だった。

いや厨二病はしょうがないだろう。

何故ならケンジは未だ14歳、正真正銘の中学2年生だったのだから。

果たしてビルはケンジの思い描くものだった。

エレベーターを降りた彼が見たものはテレビで若手芸人が拙いレポートをして、最後にプールに突き落とされたあの風景がそこにある。

綺麗な水を湛えた真っ白なプール。

その横にはビーチチェアとテーブルがあり、その上にはオレンジジュースがカクテルグラスに入っている。

彼は素っ裸になってプールに飛び込み、ひとしきり泳ぐとプールから上がってビーチチェアに寝そべりオレンジジュースに口をつける。

「美味い。最高ー。」

暑い日差しを遮るビーチパラソルを出したり、発電機と扇風機を出したりと、彼はこの異世界生活を満喫していたのだった。





<<村長の嫡男ムーア視点>>

村には十数人の住人がいた。

突然村の外に出来た見たことの無い巨大ななにかは、彼らにとって神の御業としか考えられなかった。

村長の息子で15歳のムーアは果敢にもこの奇怪なものの調査を始めた。

幾人かの手下を従えてビルに近づく。

どのくらいの高さか見当もつかないこの建物は見える範囲硬い壁に覆われている。

ケンジの創造力にはビルに窓を付けるところまでは無かった。

一周廻り終える頃、高さ2メートル、幅3メートルくらいの空いた場所があり、中を見ることが出来た。

「(ごくっ) よ、よし、ここから入れそうだ。みんな続け!」

怖さを紛らわすかのように全速力で突っ込むムーアとその仲間。

ガシーン!

入口の分厚いガラス戸の無残にもはじき返された彼らは後ろに吹っ飛んだ。

そう、この世界にまだガラスは無い。ましてこんな透明度の高いガラスなど想像もつかないため、ただの空いた空間としてしか見えていなかったのだ。

全員、いや1人だけ最後尾で遅れていた者がいた。彼だけは自動ドアが開く時間に間に合ったのだろう。勢い余ってエレベータの入口にぶち当たっていた。

「いてててて」

起き上がったムーアは音を立てて閉まりかける自動ドアを見て、そこに先程は見えなかった透明な壁があることに気付いた。

見たこともない勝手に動く透明な何か。

恐怖心がムーアを襲う。

後ろでは彼が率いる自称手下どもが起き上がりつつあった。

彼はその向こうに驚く光景を目の当たりにする。

彼の手下で最弱の少年ミンがその中にいたからだった。

続々と立ち上がってくる手下達。前にはミン。ムーアは恐怖に震える心を奮い立たせて前に進むしかなかった。

既に自動ドアは閉まっている。

ムーアは全員が起き上がったことを確認して慎重に自動ドアの前へと進む。

見えない何かがあるのは分かっている。慎重に一歩づつ進んでいくと シュー っという音と共にそれが開いた。

「いまだ、急げ!」

いつ閉まってしまうか分からないので全員を急がせて中に入った。

「ふうー」

全員が中に入ってミンのところに向かう。

背後で シュー と音がして自動ドアが閉まる。

「しまった。」

ムーアは後悔していた。
無様にも透明な何かにはじかれたこと。自分が入れなかったのに最弱のミンが入っていたこと。

彼のどうでも良い自尊心がみんなを危険に巻き込んでしまったのだ。

先に入っていたミンは、まだ事態の把握が出来ていなかった。

自動ドアの存在にすら気付いていなかった彼は、普通に浅い洞穴にいるような気でいた。

目の前には見たこともない綺麗な色の壁があり、宝石のように光るボタンがある。

彼はその光るボタンを押してみた。

ちょうどムーア達がそばに来た時、目の前の綺麗な壁が2つに割れ、明るい空間が広がる。

中には何人かの人が入っており、武器を持っている。

「危ない。伏せろ!」

ムーアが声を掛けると全員がその場に伏せる。

ムーアは彼らが襲って来ないことを不思議に思い、顔をあげた。

そこには自分達同様に伏せた者達がいた。

その先頭にいるのは自分と同様伏せたまま前をにらみつけている少年。

鏡のないこの村では、みな自分の顔を知らない。

見たことのない相手の顔を凝視する2人。

しばらくにらみ合っていたが、後ろから声がした。

「ムーアが中にいるぞ。」

後ろにいたレンが立ち上がったと同時にあちらにもレンがいた。

レンが慌てて伏せるとあちらのレンも伏せる。

ムーアは伝説の化かし狐の話しを思い出していた。

化かし狐は、旅人の姿に化けて同じ動きをするという。

すっかりエレベータ内の鏡を化かし狐と思ったムーアは、決死の覚悟で化かし狐を退治しようと立ち上がった。

そして中にミンの姿を見た。

そう、ムーア達が鏡と格闘している間にミンはエレベータの中に入っていたのだ。

ミンを助けようと咄嗟にエレベータの中に飛び込むムーア達。

「ミン大丈夫か?」

ムーアはミンを抱き上げて異常が無いか確かめる。

後ろでは無情にもエレベータの扉が閉まっていくのであった。




しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...