みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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Girls☆Side Story ~大神士狼と彼女たちの日常~

第5話 ムラムラしてやった、今では反省している……

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 芽衣が士狼の部屋で己の欲望と戦い始める数分前の大神家にて。

 何とかトイレをやり終えた洋子は、芽衣が待つ2階の士狼の部屋へと上がろうと、階段をのぼろうとして、ハタッ! と気がついた。



「あっ、脱衣所に髪留かみどめ忘れちゃった」



 どうしよう?

 洋子はしばし考えて……脱衣所まで髪留めを取りに行く事にした。

 ししょー、身体冷えてたし、長湯するだろうから、今ならコッソリ取りに行けばバレないよね。

 うんっ! と1人静かにそう頷きながら、洋子は細心の注意を払いつつ、脱衣所の扉を開けた。



「~~~~♪ ~~~~~っ♪」



 脱衣所まで響く、士狼の上機嫌な鼻唄はなうたのおかげで、多少音を出しても、気づかれづらい状況が、彼女に魔を刺させたのかもしれない。



「あった、あった。よしっ、バレないうちに退散しよう。……うん?」



 洋子はお目当ての髪留めを見つけるなり、さっさと撤退しようと身をひるがえし、動きを止めた。

 彼女の視線の先、そこには――洗濯機という名の『宝物入れ』があった。



「…………」



 洋子は、何かに導かれるようにフラフラと宝物入れに近づくと、そこに投げ捨てられるように放り込まれていた、1枚の男物の下着を取り出した。

 今日1日履いていた、大神士狼の下着を取り出した。

 そのまま、こっちの水はスィーツ☆パラダイスと言わんばかりに、ゆっくりと彼女のヒクヒク鼻が、士狼の下着に近づいていき……。



「――ハッ!? ぼ、ボクは一体ナニをっ!?」



 寸前のところで我に返った。



「こ、こんな変態さんみたいコトをしている場合じゃないよっ! は、はやくメイちゃんと合流しないと! いてててっ!? うぅ~、相変わらず邪魔だなぁ、コレ?」



 洋子は薬の影響で『アレ』が生えた、自分の下半身へと視線を落とした。

 そこには絶賛、ヨウコ・コヒツジのエレクトリカル☆パレードが開催されていた。



「痛てててっ!? むぅ~、なんで勝手にムクムクするの、コレ? 意味分かんないよぉ」



 お願いだから、大人しくしててよぉ~?

 洋子は「めっ!」と、もう1人の自分を叱りつけながら、手に持っていた士狼のパンツを洗濯機に戻して……。



「……あ、あれ?」



 士狼のパンツを洗濯機に戻して……。



「あ、あれれ?」



 洗濯機に戻して……。



「あれれれぇ~?」



 戻して……。



「も、戻らないっ!? なんでっ!?」



 彼女の意志に反して『絶対に離さない!』とばかりに、洋子の手が士狼のパンツを力強く握りしめていた。

 それはまるで爺ちゃんの形見のように、大切そうに。

『この手は絶対に離さない! コレを手放したら、自分の中の大切なモノまで、手放してしまう気がするから』

 と言わんばかりだ。



「こ、こんなコトをしている場合じゃないんだってば!?」



 早くしないと、ししょーがお風呂から出て来てきちゃう!?

 事は一刻を争った。



「離れてっ! お願いっ!?」



 洋子は何度も下着を洗濯機の中に戻そうとするが、その度に彼女の手が「イヤイヤッ!?」と言わんばかりに、強く士狼のパンツを握り締める。

 そんな事をしている間に、



「ふぃ~♪ 温まった、温まった!」
「ッ!?」



 自己啓発中の男子中学生のように、全身警戒態勢だった洋子の耳に、りガラスの向こう側から、士狼の声が聞こえてきた。

 シャワーの音は……もう止まっている。



(ヤバイッ!?)



 洋子の毛穴という毛穴から、妙な変な汗が噴き出てくる。

 スローモーションな視界の中、ゆっくりと背後に振り返ると、そこには少しずつ開いていく磨りガラスの扉があり――。

 瞬間、洋子は彼女の人生で経験したことがないほど俊敏な動きで、間一髪、脱衣所を飛び出した。

 その姿はまさに、超一流のハリウッド・アクション顔負けの動きで、彼女自身、自分の動きに驚いていた。



「ハァ、ハァ……。ぼ、ボクって、こんなに動けたんだ……」



 自分の潜在能力ポテンシャルに驚きつつ、額に浮かんだ汗、持っていた士狼のパンツでぬぐおうとして、



「あぁっ!? ヤバい、持って来ちゃった!?」



 ガッツリ泥棒をしている自分に、もう1度驚いた。

 か、返しに行かなきゃっ!? 

 で、でも今、脱衣所にはししょーが居るし……。

 うぅ~っ!? と混乱している洋子に追い打ちをかけるかの如く、脱衣所から士狼の声が響いてきた。



「うん? あれっ? 誰か居る、そこ?」
「ッ!?」



 瞬間、洋子の脳裏に弾けた思考は、ほとんど反射的なモノだった。



 ――逃げなきゃっ!



 それはもう論理的な思考だとか、冷静な判断だとか、そんなモノは全てかなぐり捨てた、下着泥棒の行動だった。



「うひぃぃぃぃっ!?」



 洋子は士狼のパンツ片手に、逃げるように2階へと駆けて行く。

 そして助けを求めるように、士狼の部屋で待機している姉に向かって、声をかけた。



「た、助けてメイちゃん!? た、大変なことに――へっ?」
「えっ!? よ、洋子っ!?」



 洋子は勢いよく士狼の部屋の扉を開け……そこに鏡があるかのような錯覚を覚えた。

 士狼の部屋、そのタンスの前。

 そこには、洋子とまったく同じように、士狼のパンツ(洗濯済み)を握りしめ、額に冷や汗をかいている美少女の姿があった。

 古羊芽衣の姿があった。

 彼女の姉の変態チックな姿が、そこにはあった。
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