みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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真・最終部 みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

第21話 大神くんと恋の病

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 清掃活動が始まって1時間と少しが過ぎようとした、午前10時。

 俺は大和田ちゃんと一緒に、森実高校へと続く坂道を下りながらヒョイヒョイっ! と道端に落ちていたゴミを拾っていく。



「あぁ~ん♪ ワイをゴミ扱いなんて酷いぜよ喧嘩狼ぃ~❤ でも、この雑な感じ……たまらんぬ♪ アカン、イクッ!?」

「落ち着いてください、タカさん。とりあえず、まずはパンツを履き替えましょう」
「ねぇ、なんで2人がココに居るの? 呼んでないよね?」



 俺のお尻を墾田永年私財法にしようとした鷹野ゴミと、我らがタマキン兄さんこと大和田信愛兄たまが、何故か一緒にゴミ拾いをしていた。

 なんかね? 気がついたら、いつの間にか横に居たんだよね、このハードゲイ。

 しかもね、オタサーの姫を囲む童貞並みにギンギラギンッ! に欲望に満ちた目で俺を見てくるのよね。

 マジで掘られる5秒前!

 誰か助けて!



「ほらほら、タカさん? 大神様の方ばかり見てないで、コッチに来てください。着替えますよ?」
「むぅぅ……しょうがないのぅ」



 もうすぐ春だからか、いつもに増して変態に磨きがかかっている鷹野を小脇に、物陰へと移動するタマキン兄さん。

 ガサゴソと、鷹野のケツらしき肌色の物体が見え隠れしていたが、俺は気にせずゴミを拾い続けた。



「でもそっかぁ、もう春かぁ……。変態が大量発生する時期だなぁ」

「そんな『花粉がいっぱい飛ぶなぁ』みたいな感覚で変態を表現すんなし……。気が滅入めいるっしょ?」

「ちょっ、大和田ちゃん!? 女の子が『花粉』なんて卑猥な言葉を言っちゃいけません! お兄ちゃん、そんな娘に育てた覚えはありません子とよ!」

「いや、育てられてないし。つぅか誰が『お兄ちゃん』だ。……まぁいいや、それで? 花粉のどこが卑猥なワケ? 卑猥じゃないっしょ、アレ?」

「いやいや、花粉は卑猥の塊だって!? だってあいつら『花粉』なんて気取った呼び方をしているけどさ? 用は草木の子種、精子なんだぜ? そんな精子が大量にお空を我が物顔で闊歩かっぽし、俺たちヒューマンを、女の子を けがれを知らない女子校生たちを汁まみれにするんだぞ? もう変態の代名詞と言ってもいいくらいだわ、あいつら!」

「うぐっ!? そ、そう言われたら、何かそんな気がしてきたし……」



 空飛ぶ精子(花粉)をぶっかけられ、顔がドロドロになる女の子……うん。

 自分で言っておいてアレだが、なんかオラ、ワクワクすっぞ!

 俺の股間にハチャメチャが押し寄せて来ようとした矢先、いつの間にかパンツを履き替え終えて戻って来ていた鷹野が「なぁ~んや」と、ホッとしたような表情を浮かべていた。



「思った以上に元気やないか喧嘩狼! ノブリンが今朝『シロパイが元気ない、どうしよう?』って相談してきたから、てっきり喧嘩狼のお尻の穴がワシを求めて一際(ひときわ)トロピカルしているのかと思っとったのに……ガッカリぜよ」

「あっ、バカ!? 翼さんのおバカ! それはナイショって約束っしょ!?」
「はいタカさん、1回こちらにけましょうか」



 あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? と、名残惜しそうな悲鳴を上げながら、ズルズルと兄者に引きずられて行く、我らがハードゲイ。

 ……そんなあからさまに落ち込んでいるように見えたのだろうか?

 基本的に大和田ちゃんの前では『いつも通り』に振る舞ったつもりだったんだけどなぁ。

 まあ、空元気だけど。

 いや、だってさ?

 こうでもしないと、初セクロスに失敗した男子高校生並みに、気分が落ちていくだけだし……。

 でも、そんな芽衣の虚乳のような虚勢も、大和田ちゃんにはマルっとお見通しだったらしい。



「……そんなに朝、元気が無いように見えた、俺?」
「朝というか、現在進行形で元気が無いように見えるし」
「マジでかぁ……。もしかして、股間にローターを仕込んでいる女の子並みにバレバレだった?」
「いや、そんな特殊な変態にはった事ないから分かんないし……。でも、古羊パイセンは気づいていたっぽいけど?」



 そっかぁ、よこたんにはバレてたかぁ。

 俺は1度、ゴミを拾う手を止め、空を仰ぐ。

 今日も今日とて、こちらがムカつくくらい快晴な青空だ。

 そんな俺に同調するように、大和田ちゃんは何てことない風を装いながら、



「ねぇシロパイ? ……もしかして会長と何かあった?」
「……なんで芽衣限定?」

「そりゃだって、今朝からシロパイの呼び方が『大神くん』に変わってるし。それになにより、昨日会長、泣きながら家に帰ってたし」

「えっ? 芽衣のヤツ、昨日泣いてたのか!? い、いつ!?」
「時間はちょっと曖昧だけど、放課後の5時過ぎくらいかなぁ」
「…………」



 昨日の5時過ぎという事は、十中ファック――違う、十中八九、間違いなく俺が芽衣に告白した後のことだろう。

 俺が告白したせいで、芽衣が泣いた……。

 その事実に、今さらながらナイフで胸をえぐられたような痛みが走った。

 そんな顔をさせたくなかったのに……。



「……シロパイ、ウチでよければ相談に乗るけど? 解決できなくても、案外話してみればスッキリするかもしれないし」
「賢者タイムみたいに?」
「今日は下ネタがキツイなぁ……。まぁ、それだけ追い込まれているって事なんだろうけど」



 大和田ちゃんが「話してみ?」とばかりに、優しい笑みを俺に寄越す。

 その笑みがあまりにも慈愛に満ちていたせいか、俺はほとんど葛藤かっとうもなく、気がつくと昨日の出来事について口を開いていた。



「……実は昨日さ、フラれちゃったんだよ、俺」
「フラれたって、シロパイが?」
「あぁ……。昨日告白して、それで……付き合えないってさ」



 言葉にしてみると、なんと陳腐ちんぷな台詞だろうか。

 自分の器の小ささを改めて再確認しているようで、頭をむしりたくなった。

 大和田ちゃんは、そんな俺の心の内を見透かしたように、目を細め、



「告白した相手って、会長だよね?」



 俺が小さく頷くと、大和田ちゃんは一瞬『何か』をこらえるように顔をしかめたが、すぐさま真面目な表情で言葉を吟味ぎんみしていくように、口をひらいていく。



「意外だし……。てっきり会長は、シロパイのことが好きなんだと思ってた」
「いや、実際に『好きだ』って言われたよ」
「……はいっ?」



 想定外の言葉に、大和田ちゃんの瞳が「どうして?」とばかりに大きく見開く。

 が、それでも先をかしたりせず、辛抱強く黙って、俺の言葉を待ってくれていた。

 そんな彼女の優しさに甘えるように、俺はゆっくりと唇を動かした。



 ――どうして芽衣が俺と付き合えないのか。



 昨日のことを思い返しながら、芽衣の言葉をなぞっていく。

 芽衣が今まで秘めてきた想いや、俺と一緒に居られない理由。

 それを口にしていく度に、胸の奥がジュクジュク!? と熟れた果実のように腐っていくのが分かる。

 そして、ほぼ同時に、なんで芽衣がしきりに爆乳わんの事をすすめてきたのかも理解した。

 あぁそうか……。

 あれも全ては――
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