みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

文字の大きさ
407 / 414
真・最終部 みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

第22話 プチデビルと呼ばれている学校1カワイイ後輩が、何の取り柄もない俺のことが『大好き』すぎで【エンジェル】化しました!?

しおりを挟む
「――というワケで、芽衣は俺とは付き合えないんだってさ」
「そっか。そういう事か……なるほどねぇ」



 10分か、はたまた1時間かは分からないが、俺が全てを話終えると、大和田ちゃんはいつもの調子で小さく頷いてくれた。

 憐れんだり、同情したりしない。

 そのフラットな距離感に、俺は心の底から感謝した。



「……らしくないね、シロパイ」
「えっ? な、なにが? ゴメン、もう1回言ってくんない?」
「『シロパイらしくないね』って言ったの」



 そして大和田ちゃんは、そのフラットな距離感から、ほんの少しだけ身を乗り出して、俺が作った溝を簡単に飛び越えてきた。



「ウチの知ってる『いつもの』シロパイなら、そんな腐るほどウジウジ考えたりせず、とにかく自分の心に正直になって、相手が折れるまで何度だってアタックする、超大バカ野郎のハズなんだけど? シロパイ、ほんとにシロパイなの? 実は入れ替わっていたりとか、してない?」

「い、いやいや!? いやいやいや!? ちょっと待ってくれ、大和田ちゃん? いくら女々めめしい事に定評のある俺でも、そんな粘着質な気持ちワリィ男じゃねぇぞ? ……フラれたのに付きまとうとか、鷹野よりウザいだろ?」

「それはそうかもね。……でも、会長もシロパイのことが好きだって、そう言ったんっしょ?」
「……でも、それでも『付き合えない』って言われた」
「なら、シロパイはそれで納得できるの?」



 どこか俺を試すような彼女の瞳。

 ふわふわと桃色に染めた髪を風にさらわせながら、射抜くように俺だけを真っ直ぐ見据える大和田ちゃん。

 納得できるか、どうかだって?

 そんなの考えるまでもない。





 ――納得なんて出来るワケがない。





 俺のことが世界で1番大好きだから、幸せになってほしい。

 だから付き合うことは出来ない。

 そんな言葉で突き放されて、簡単に引き下がれるほど、俺は人間が出来ちゃいない。

 けど。



『アタシと居ても、士狼は幸せになれない。……アタシじゃ、士狼を幸せにする事が出来ない』



 どうしても、この言葉が耳からこびりついて離れない。

 芽衣がどれほどの決意をもって、こんな事を言ったのか、分からないほど無神経でも、鈍感でもない。

 これ以上踏み込めば、俺はさらに芽衣を苦しめ――



「ねぇシロパイ」



 そんな俺の思考をぶった切るように、大和田ちゃんがこう言った。



「ウチさ、シロパイのことが好きだよ」
「……えっ? えっ!?」



 あまりにも自然に、日常会話でもするかのように後輩から告白される俺。

 その瞬間、堂々巡りへ陥ろうとした思考が、強制的に打ち切られた。

 真っ白になる頭。

 きっとさぞ、今の俺はアホ面を世間様と、この可愛い後輩に披露している事だろう。

 そんな俺のアホ面全開の顔が面白かったのか、大和田ちゃんはクスクス♪ と笑いながら、からかうように、



「――なんてことを言ったらさ、シロパイはウチと付き合ってくれる?」
「それは……」



 口調こそ冗談のソレだが、俺は知っている。

 俺の愛しの後輩は、おふざけ半分でこんな事は絶対に言わない。

 それはつまり――そういう事なのだ。

 だから俺も、精一杯の誠意をもって、彼女に応えなければならない。

 例えその『答え』が、彼女を傷つけるモノだとしても。



「ゴメン……俺、大和田ちゃんとは付き合えない」
「……そっか」



 大和田ちゃんは口角を緩めながら、安堵したように口を開いた。



「あぁ~、よかった! これで『付き合おう』なんてシロパイが言ったら、本気で軽蔑けいべつする所だったし!」
「えっ、うそ? このタイミングで、まさかの引っかけ? 女性不信になるよ、俺?」



 ゴメン、ゴメン! と、イタズラ小僧のようにニシシシッ! と笑う後輩。

 ソレが強がりであることは、俺にも分かっていた。

 が、それでも俺には、もう彼女の好感度を上げる選択肢は出てこないし、選べない……選んじゃいけない。



「シロパイの中ではさ、もう『答え』が出てるんだよね? だったら何を迷う必要があるし?」
「……いくら『答え』が出ていようが、芽衣は俺とは付き合えないよ」
「それは何で?」
「……芽衣と一緒に居ると、俺が幸せになれないから……だって」
「ふぅ~ん。じゃあ質問を変えるね?」



 大和田ちゃんは、そのダイヤモンドのように固い意思を宿した瞳を俺に寄越よこし、こう言った。



「――シロパイは、会長を幸せにする自信がないの?」

「ッ!?」



 彼女の質問が轟音となって、俺の身体を駆け抜けた。

 俺が芽衣を幸せにする自信が『ある』か『無い』かだって?

 そんなの……1+1=200と答えるよりも簡単な質問だった。



「――そんなワケ、ねぇ!」



 そう口にした瞬間、俺は改めて自分の想いを自覚した。

 あぁ……俺はやっぱり、芽衣の事が好きなんだ。

 あの腹黒で、猫かぶりで、おまけに超パッドでおっぱいをギガ盛りしている、あの悪魔みたいな女の事が、大好きなんだ!

 どれだけゴタクを並べようが、その事実は変わらない。

 抱いた想いは、変わらない!



「ねぇ、シロパイ? 会長のことが――古羊芽衣先輩のコトが好き?」
「あぁっ」



 大和田ちゃんの問いに、今度はなんの躊躇ためらいもなく頷いていた。

 どれだけ小難しいことを並べようが、結局はそこに行き着くのだ。

 こんなもん、子どもでも分かる、簡単な答えじゃないか。

 芽衣と一緒に居ると幸せになれない?

 逆だ。

 逆なんだ!



 ――芽衣が一緒じゃないと、俺は幸せになれないんだ!



 俺の1番の不幸は、女神さまの隣に居られない事だ!

 もはや考えるまでもなかったハズなのに、そんな簡単すぎる真理に、バカな俺はようやく到達した。



「ハァァァァァ~……まったく。知的でクールなナイスガイの俺とした事が、自分の単純シンプルさを見失っていたらしい。考えなしもイカンが、考えすぎはもっとイカンな」



 ようやく思い出したか! とばかりに、大和田ちゃんが「フッ」と笑った。



「『粘着質な気持ちワリィ男』? 上等だしっ! 『フラれたのに付き纏うとか、鷹野よりウザい』? それが何だし! シロパイはそんな事、気にしなくていいんだっての! だってシロパイは、もともと女々しいし、粘着質だし、翼さん何かよりも100倍ウザいんだから! 自信を持て、男の子!」

「ねぇ? ソレを聞いて、俺はどこに自信を持てばいいの?」



 俺じゃなければ今頃、心が砕けている所だよ?



「でも、あんがとな、大和田ちゃん!」



 おかげで気合が入った!

 もちろんまだ、整理がついたワケじゃないし、答えが見えたワケでもない。

 先も見えなければ、展望も何も無い。

『ないない』尽くしの俺の道だが、今、これだけはハッキリと言える。





 ――このままでは、終われない!





 諦めきれない。

 諦められるワケがない!

 このままじゃ、死んでも、死にきれない!



「シロパイは会長が好きで、会長はシロパイのことが好き。『誰か』が道をはばんでいるワケじゃない。なら――行ってこい、大神士狼っ!」



 バシッ! と、俺を鼓舞するように大和田ちゃんが背中を叩く。

 彼女の熱が、想いが、感情が、ビリビリと身体中の細胞を叩き起こしていく。

 進め! と体が叫びだす。



「大丈夫! 案外『通行止め』は看板だけで、道は続いているモンだからさ!」
「サンキュー大和田ちゃん! さすがは俺の未来の妹! 愛してるぜ!」
「誰が妹だし! あと、言う相手が違うっしょ?」



 バーカッ! と、彼女の声援が背中を押し、俺は大地を蹴り上げた。

 もう踏み出す足に迷いはない。

 背後でグングンと小さくなっていく後輩を置いて、俺は駆ける。



「走れ、大神士狼っ!」



 彼女の声を追い風に、俺の身体は加速する。

 走れ、走れ、走れ!

 もっとだ、もっと速く!

 風よりも速く。

 音よりも速く!

 光よりも速く!!

 過去も未来も現在も、すべて置き去りにして。

 1分1秒でもはやく……誰よりもはやく。

 走れ!



 ――芽衣の、ところへ!


 未来へと進む俺の足は、少しも震えていなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...