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第三章 慈眼寺の決戦
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「よく来たね。明日の対局までゆっくりしていってください」
今戸の慈眼寺の住職が温顔で言った。
「お世話になります」
おまさは緊張気味に頭を下げた。
「では、宿坊へご案内します」
若い僧が言った。
「お願いいたします」
容子のいい僧だったから、おまさは少しほおを染めた。
「夕餉の支度が整いましたら、お呼びします」
僧が言った。
「承知しました。よろしゅうお願いします」
おまさはまた頭を下げた。
夕餉になるまで、嚢に入れてきた棋書を読むことにした。
師の宗与が編んだ戦術書だ。
いくたびも読み返しているせいで、ところどころが破れそうになっている。
相手の八丁堀はるは力将棋ということだが、さすがに棋理に反する戦い方はしないだろう。おさらいをしておくのは有益のように思われた。
詰将棋の本も持ってきた。
父が買ってくれた大事な書物だ。
「ちょっとずつでいいから解いたら、力になるぞ」
亡き父弥助の声がなつかしく響く。
人は死んでもそれで終わりではない。残された者の心の中でずっと生きつづける。
棋書のおさらいをし、十五手詰の問題を解いた。簡単な詰将棋ではなかったが、流れるように解くことができた。
おまさは少し手ごたえを感じた。
そのとき、さきほどの僧がまた姿を現した。
「夕餉の支度が整いました。こちらへお越しください」
若い僧が身ぶりをまじえた。
「はい」
おまさは短く答えて腰を上げた。
二
おいしゅうございました……。
おまさは両手を合わせて箸を置いた。
胡麻豆腐や青菜のお浸し。小鉢も美味だったが、蕎麦がいままで食したことがないおいしさだった。
蕎麦の香りが強い、黒っぽい蕎麦だ。それでいて太すぎず、のど越しもいい。しっかりとこしも残っている。
寺方だから昆布のだしだが、これも風味豊かだった。
最後に、寒天もいただいた。
きなこと黒蜜をかけて食す寒天は、びっくりするほどおいしかった。
僧に礼を述べてから部屋に戻ると、おまさはまた棋書を繙いた。
そのうち眠くなってきたので床についた。
ただ、頭の芯が妙にさえていて、そのまま眠ることはできなかった。
明日の将棋はどの戦法にするか。
先手か後手か、それによっても変わってくる。いろいろ考えているときりがなかった。
それでも、ああでもない、こうでもないと思案しているうちに、いつのまにか眠くなってきた。
ややあって、おまさは眠りに落ちた。
そして、夢を見た。
対戦相手は八丁堀はるではなかった。意外な人物だった。
父の弥助だ。
変だなと思ったが、致し方ない。おまさは対局に臨んだ。
中盤の難所に差しかかったとき、父がしばらく思案してから馬を引いた。
「受けるとこは、しっかり受けなきゃいけねえ」
日ごろからの弥助の口癖だ。
そう言いながら底歩を打つときは、攻めているときより駒音が高かった。
馬を引くのも好きだった。敵陣でつくった馬を自陣に引きつけるときの父の得意げな表情はいまでも目に浮かぶ。
夢の中で、おまさはそんな父と戦った。
父の表情やしぐさ、そして言葉のすべてがなつかしく心にしみた。
夢の潮が引く前に、父はこう言った。
「気張って指せ。勝負は二の次だ」
渋く笑って、夢の中の弥助が言った。
「はい」
おまさは芯のある声で答えた。
三
その後はぐっすり眠れた。
おまさは顔を洗い、朝餉をいただいた。
「おはようございます」
昨日と同じ若い僧が給仕をしてくれた。
「おはようございます。本日もよろしくお願いいたします」
おまさはていねいに頭を下げた。
「いよいよですね。しっかり食べて、気張ってください」
僧が笑みを浮かべた。
朝餉の梅粥はとてもおいしかった。いままで生きてきて、いちばんおいしい梅干しだった。おまさは力をもらったような気がした。
仕度を整えていると、不鳴不飛が姿を現した。
住職にあいさつしてから、おまさのもとへ歩み寄る。
「宗与先生はお弟子さんたちと一緒に駕籠で来るから。どうだい、調子は」
将棋の競いについてかわら版に書くことになっている男が声をかけた。
「まあまあ眠れたので」
おまさは答えた。
「そうかい。相手もそろそろ来るだろう」
戯作者は笑みを浮かべた。
「心の臓が鳴ってます」
おまさは胸に手をやった。
「だれも取って食おうっていうわけじゃない。稽古将棋だと思って、いつもの心持ちで」
不鳴不飛は肩の力を抜くしぐさをした。
「はい」
おまさは小さくうなずいた。
いくらか経った。
一挺の駕籠がゆっくりと寺に着いた。
二人の弟子が急ぎ足で付き従っていたから分かる。到着したのは、大橋宗与だった。
「ようこそお越しくださいました」
慈眼寺の住職が両手を合わせた。
「世話になります」
宗与は穏やかな表情で言った。
おまさも不鳴不飛とともに師を出迎えた。
「いよいよだが、どうだ?」
宗与は優しい声音で問うた。
「はい、それなりに眠れましたので」
おまさは答えた。
「勝ち負けはともかく、良い将棋をな」
宗与が言った。
「はい」
芯に光のある目で、おまさは答えた。
四
ややあって、対局相手が慈眼寺に到着した。
八丁堀はるだ。
「八丁堀のはるでございます。遅くなりました」
片滝縞[かただきじま]の着物をまとった女がていねいに頭を下げた。
八丁堀は町方の与力や同心たちが多く住まう町だが、わずかながらも町場もある。はるはそこで暮らしているらしい。
「支度は調っています。どうぞこちらへ」
世話役の不鳴不飛が案内した。
「本郷のまさでございます。どうぞよろしゅうに」
おまさは緊張気味にあいさつした。
「こちらこそ。わたしの娘でもおかしくないお年頃で」
つややかな黄楊[つげ]の櫛を挿した女が笑みを浮かべた。
「こういう場は初めてで」
おまさは胸に手をやった。
「わたしもどきどきしてます」
おはるも同じしぐさをした。
対局場には宗与と二人の弟子がいた。
「よく来たね。わたしが立会人をつとめさせてもらう。弟子たちは時読み係と帳面係だ」
宗与が言った。
「どうぞよろしゅうお願いいたします」
おはるが先に頭を下げた。
「お願いいたします」
おまさも続く。
対局の支度が整うまで、茶を呑んで気をほぐすことになった。
驚いたことに、おまさも八丁堀の片隅で小料理屋を営んでいるらしい。小上がりには将棋盤も据えられているという話だ。
「今日は対局ですが、いずれお互いの見世へ行ってみたらいいでしょう」
世話役の不鳴不飛が言った。
「ええ。そうさせていただきます」
おはるが如才なく言った。
「ええ、お願いいたします」
おまさは頭を下げた。
その後はしばらく話をした。双方の見世でどういう料理を出しているかといった話題だが、おかげでだいぶ緊張がほぐれた。
「では、そろそろ始めますかな」
宗与が言った。
「はい」
おはるが湯呑みを置いた。
「承知しました」
おまさも続いた。
五
時読み係が振り駒の支度をした。
将棋の先後を決めるために、振り駒をするのが習いだ。
「では、八丁堀はるの振り先にて」
時読み係は両の掌に五枚の歩を入れ、小気味いい音を立てて振った。
歩が三枚以上出ればおはるの先手、と金が三枚以上出たらおまさの先手だ。
畳に広げた布の上に、ばっと開ける。
と金が四枚出た。
「と金が四枚ですので、本郷まさの先手にてお願いいたします」
時読み係が告げた。
「始めてください」
立会人の宗与が落ち着いた声で言った。
「お願いします」
おはるが先に声を発した。
「お願いします」
おまさも続いた。
心の臓が少し鳴っていた。
おのれを落ち着かせるべく、茶をゆっくりと啜る。
そのあたたかさと味が分かると、少し人心地がついた。
見てて、おとっつぁん。
しっかり戦うから。
おまさは心の裡で亡き父に向かって語りかけた。
そして、歩をゆっくりとつまんで角道を開けた。
少考後、おはるも同じように歩を突いて角道を開けた。
角換わりか否か。
おまさはいくらか考えた。
じっくりした駒組にしよう。
急戦にはしたくないから。
おまさは六六歩を突いて角交換を拒んだ。
一手指すごとに、時読み係が手を動かす。
対局場には大きな砂時計が二つ運びこまれていた。
この砂時計は知恵者がつくったもので、上下のつなぎ目に薄い板を差しこむと砂の流れを止めることができる。砂が落ち切ったら、一から十までの時読みになるという段取りだ。
駒組が進んだ。
おまさは二枚の銀が角のように見える陣形にした。
父から手ほどきを受けた得意の陣形だ。
一方のおはるは、がっしりした矢倉に組んだ。
どちらも堅陣だ。
おまさは玉方の端歩を突いた。
少し考え、おはるが受ける。
ややあって、おまさはもう一方の端歩を突いた。
おはるはこれも受けた。
おまさはあごに手をやった。
動かす駒がだんだん乏しくなってきた。
どちらも陣形は整っている。かと言って、いくさの火蓋を切るのはためらわれた。下手に動けば、それに乗じて攻めこまれてしまう。隙を見せてはならない。
ちらりと砂時計を見ると、おまさは玉を一つ寄った。
手待ちだ。
おはるは迷った。
同じように手待ちをするという手はある。双方ともに手が変わらなければ千日手になる。
同じ局面が三度現れれば千日手だ。先後を入れ替えて初めから指し直す。
しかし……。
おまさは先手番だ。
後手よりいくらか利があるとされる先手番をむざむざと捨てて、千日手にするには忍びなかった。
かと言って、ここで戦いの火蓋を切ってよいものか、なんとも悩ましい局面だった。
おまさは前かがみになって読みを入れた。
右四間飛車から攻めることはできるが、果たしてうまくいくかどうか、紙一重の攻防になりそうだ。
行くか、とどまるか。
ここが岐路だ。
迷ったら行け。
攻めろ、おまさ。
亡き父の声が聞こえた。
おまさは小さくうなずいた。
意を決して歩をつまみ、ぴしっといい音を立てて突く。
こうして、戦端が開かれた。
六
数手進んだ。
もはや双方ともに退くに退けないいくさになった。
初めは小駒同士だったが、やがて大駒の角が交換になった。手持ちの角をどう使い、局面を優位に導くか、早くも勝負どころになった。
おまさは思案に沈んだ。
ため息をつき、着実に流れ落ちる砂を見る。
背中に汗が流れた。
思い出したように茶を啜る。それはもうぬるくなっていた。
なおも前かがみになって読みを入れているうち、手ごたえのある筋が浮かんだ。
角を敵陣に打ち込み、馬になって自陣に成り返る。そうすれば、陣形が見違えるほど堅くなる。
おまさはその順を選んだ。
ちらり、とおはるの顔を見る。
馬をつくられた相手はいくらか嫌そうな顔つきをしていた。
手ごたえがあった。
勝負はまだまだ長い。
これからひと山もふた山もあるだろう。
それでも、馬をつくれたからには、容易に土俵を割ることはない。
おまさはいつもより少しだけ駒音高く、馬を自陣に引きつけた。
立会人の宗与がゆっくりとうなずく。
おはるがあごに手をやった。
じっと盤面を見る。
そのまなざしは鋭かった。
ややあって、おはるは歩を打った。
自陣の傷を消す守りの一手だ。
おまさも慎重に馬の位置を変えた。
それによって、金銀の守りとの連携がさらに緊密になった。
双方ともに堅陣だ。
馬ができている分だけおまさが指しやすそうだが、おはるは角を手持ちにしている。隙あらば打ちこもうと手ぐすねを引いている。
長い勝負になった。
七
せっかくつくった馬だが、おはるが巧みに角を打って馬を消した。
逆におまさが角を手持ちにした。ここからまた仕切り直しだ。
八つどきになった。
茶と甘いものが対局者に出された。
小豆と抹茶の羊羹だ。
初めのうちはどちらも手をつけなかったが、先におはるが小豆羊羹を口に運んだ。
それを見て、おはるは抹茶羊羹に匙を伸ばした。
疲れた脳に、甘さがしみわたるかのようだった。
砂時計を見る。
砂の残りは着実に少なくなっていた。
ふっ、と一つ、おはるは息をついた。
抹茶羊羹をさらに口に運ぶ。
ゆっくりと味わい、甘さを脳にしみわたらせる。
すると……。
だしぬけに頭の中の霧が晴れた。
これまで敵陣に打ちこむことばかり思案していた角の、意想外な打ち場所が見えた。
自陣に据えて、守りを固めるとともに、敵陣をにらむのだ。
おはるはいくたびも読みを入れた。
この手でいいのかどうか。ほかに手がないかどうか。
思案を重ねたが、その手はやがて動かしがたく定まった。
おはるは駒台の角をつかんだ。
そして、静かに自陣に据えた。
遠見の角だ。
その手を見た刹那、おはるは息を呑んだように見えた。
そればかりではない。立会人の宗与も、帳面係と時読み係も、一様に驚いたように感じられた。
おまさが指したのは、だれも予想できない手だった。
一見すると、何を狙っているのか分からない。
さりながら、読めば読むほどに底光りがしてくる。
そんな妙手だった。
おはるは長考に沈んだ。
砂時計の砂が着実に落ちていく。
やがて、おはるはやや力ない手つきで着手した。
玉の位置を少し変えただけの、狙いが那辺にあるのか分からない手だった。
いわゆる手渡しだ。
だが……。
いざ手を渡されてみると、次の着手が思いのほか悩ましかった。
今度はおまさが考えに沈んだ。
せっかく打った遠見の角をどう活かすか。
攻めをつなげて優勢に導いていくか。
考えれば考えるほど難しかった。いくら時があっても足りないほどだ。
いったん厠に立ち、時をかけて戻った。
砂時計を見る。
残りの砂は、おまさのほうが少なくなっていた。
八
熱戦はさらに続いた。
おまさは意を決し、いくさの火ぶたを切った。
せっかく据えた遠見の角だ。
この駒を働かさなければ申し訳ない。それに、勝ち目もない。
いくらか駒損になる。
それは分かっていたが、ここは行くしかない。
こうして、いくさの火ぶたが切られた。
ほどなく、のっぴきならぬ戦いになった。
駒と駒がぶつかり、火花を散らす。
互いの玉頭にさまざまな駒が密集し、ついには駒柱ができた。
一つの筋に、上から下まで駒が並ぶことを駒柱と呼ぶ。
どの駒がどこに利いているのか、見落としかねない複雑さになった。
そのうち、おまさの砂が先に切れた。
「先手の砂が切れました。時読みを始めます。……三、四……」
心の臓がずきりと鳴った。
時読みはたった十しかない。
すぐさま意を決して着手しなければならない。
「……七、八」
そこまで読まれたところで、おまさは桂馬で歩を払った。
駒損になるが、もはや終盤の難所だ。いかに敵玉に先んじて迫るか、そこが勝負だ。
数手進んだ。
後手のおはるの砂も尽きた。
双方ともに十までの時読みだ。
盤に覆いかぶさるようにして読みを入れる。
「……六、七」
おまさは迷った。
玉頭に打たれた嫌らしい歩を、どの駒で払うか。
玉か、龍か。
その二択だ。
「……八、九」
容赦なく時読みが進む。
迷っているいとまはなかった。
おまさは意を決し、歩を玉で払った。
最も強い手だ。
一歩も引かぬ。
そんな思いがこもっていた。
今度はおはるが岐路に立たされた。
どう受けるか、悩ましい局面だ。崖に沿った心細い道を歩いているかのようだった。一歩間違えば奈落の底だ。
「八、九……」
そこまで読まれて、おはるはあわてて着手した。
合駒に打った桂馬が少しゆがんだ。
しめた、とおまさは思った。
桂馬が手に入れば、角の利きを活かした頓死筋が生まれる。
おまさの着手に力がこもった。
「あっ」
おはるが短い声をあげた。
おのれの失着に気づいたのだ。
ほどなく、形勢は傾いた。
頓死筋から逃れるためには、駒損が避けられない。陣形も乱れる。
おまさはかさにかかって攻めた。
ここは一気呵成だ。
おはるの顔の憂色が濃くなった。
眉間にしわが浮かぶ。
一手もゆるめることなく、おまさは攻めつづけた。
そして、大勢が決した。
おはるは湯呑みに手を伸ばした。
茶を啜る。
短いあいだに、のどの具合を調える。
その様子を見て、立会人の大橋宗与が背筋を伸ばした。
伝わるものがあったのだ。
「六、七……」
そこまで時を読まれたとき、おはるは盤上に右手をかざした。
「負けました」
はっきりした声で、おはるは投了を告げた。
おまさが一礼する。
こうして、熱戦が終わった。
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