おまさの歩 本郷将棋料理屋

白塚ゆき

文字の大きさ
7 / 11

第七章 御城将棋

しおりを挟む



   一

 その日が来た。
 次の辰の日だ。
 おまさはずいぶん朝早くに目を覚ました。
 今日はいよいよ駕籠が来る。それに乗って、老中の屋敷へ行かなければならない。
 そう思うと、目が冴えてしまい、もう眠ることができなかった。
 おまさは思い切って起きることにした。
 厠を済ませ、母を起こさぬように気をつけながら顔を洗う。
 頭の芯が冴えた。
 それから、仏壇に向かって両手を合わせた。

 おとっつあん……

 亡き父に語りかける。

 これからご老中のお屋敷へ行って、将棋を指すことになったの。
 おとっつぁんから教わった戦法で、気張って指すから、力を貸してね。

 おまさは心の中でそう告げた。
 遠くで一番鶏が鳴いた。
 その声が、心にしみた。
 身の引き締まる思いがした。

 負けてもともとだ。
 精一杯、指してこい。

 父の声が聞こえたような気がした。


   二

 迎えの駕籠が来るまでに、不鳴不飛が八一屋に姿を現した。
 紋付き袴のいでたちだ。
「ここまで来るのに難儀しましたな」
 戯作者が言った。
「見違えるかのようで」
 おたつが笑みを浮かべた。
「そりゃあ、大事な将棋の帳面係だから」
 不鳴不飛がいつもより引き締まった顔つきで言った。
 ほどなく、家主の善吉が姿を現した。
「いよいよだね」
 いつもの温顔で言う。
「ええ。もう胸がどきどきしています」
 おまさは胸に手をやった。
「勝負は時の運だから、気楽に」
 不鳴不飛が肩の力を抜くしぐさをした。
「そうは言っても、ご老中のお屋敷へ行くんだから大変だよ。わたしなんか、考えただけでくらくらしちまう」
 家主がこめかみに指をやった。
 ややあって、駕籠が来た。
「二挺来てくれたな」
 不鳴不飛がほっとしたように言った。
「なら、気をつけて」
 おたつが言った。
「いつもここで指してるつもりでね」
 善吉が座敷を手で示した。
「はい、気張ってきます」
 おまさは一礼すると、駕籠のほうに向かった。


   三

 はあん、ほう……
 はあん、ほう……
 
 先棒と後棒が声を合わせて進む。
 老中の屋敷から遣わされた駕籠だ。町娘が乗るには不似合いな構えで、いささか落ち着かなかった。
「駕籠がどこへ向かっているか、道筋などは詮索しないでください」
 不鳴不飛からはあらかじめそう言われている。
 おまさはときどき目を閉じて、ただ駕籠に揺られていた。
 頭の中で定跡を再現する。
 父から教わった戦法のおさらいもする。
 一手一手、気を入れてたしかめながら再現していくうちに、時はどんどん経っていった。
 そして、ある場所に着いた。
「こっちへ」
 先に駕籠を下りた不鳴不飛が身ぶりで示した。
 見知らぬお屋敷の中で身のすくむ思いがしたが、とにもかくにもついていくことにした。
 老中の屋敷はさすがに広壮だった。一つの書院に案内されたおまさは時を待つことになった。
 茶が出たが、ろくに味も分からなかった。
 そのうち、不鳴不飛が呼び出しを受けた。
 ずいぶん長く感じられたが、戻ってきたときはほっとした。大橋宗与と一緒だったからだ。どうやらべつのところから屋敷に入っていたらしい。
「ご苦労様だね」
 宗与はいつもの温顔で言った。
「はい、何とかここまで」
 おまさは頭を下げた。
「対局相手は先に対局場に入っているようだ。仕度ができているのなら、これから一緒に行くことにしよう」
 宗与が言った。
「はい」
 おまさの表情が引き締まった。
「帳面係のやつがれもいるので」
 不鳴不飛が笑みを浮かべた。
 おまさもやや硬い笑みを返した。


   四

 対局場は奥の書院のようだった。
 廊下を一歩進むたびに胸がどきどきしてくる。
「ここだな」
 宗与が行く手を手で示した。
 戸が半ば開いている。
「御免」
 宗与がひと声発し、先に入った。
 不鳴不飛とおまさが続く。
 先に入室していた若者が一礼した。
 つややかな総髪だ。
 顔を上げる。
 おまさは息をのんだ。
 若者の涼やかな目には、つよい光が宿っていた。
「紹介しましょう」
 不鳴不飛が言った。
「将棋家の血筋を引く大橋宗秀さん」
 手で若者を示す。
「大橋宗秀です」
 若者が折り目正しい礼をした。
 おまさはいくらか離れたところに座った。
「こちらは、対局相手の本郷まさ女さん」
 不鳴不飛が紹介した。
「まさと申します。どうぞよろしゅうに」
 おまさは緊張気味に一礼した。
 顔を上げる。
 若い二人の目と目が合った。
 おまさは息を呑んだ。
 総髪の若者は、いままで見たことがないような涼やかな目をしていた。
「では、まず検分を」
 宗与が段取りを進めた。
「まずは着座を」
 不鳴不飛が手で示す。
「失礼します」
 おまさがゆっくりと下座に座った。
「上座で失礼します」
 宗秀が軽く頭を下げる。
「いえ」
 おまさのほおが赤らんだ。
「まずは盤駒をあらためてください」
 宗与が言った。
 盤も駒もほれぼれするような品だった。駒は水無瀬みなせの書体が美しく、きれいに盛り上がっている。
「座布団はいかがです?」
 世話人の不鳴不飛が問うた。
「これでお願いします」
 宗秀がすぐさま言った。
「わたしも」
 おまさが緊張気味に答えた。
「ここがご老中の席だね」
 宗与が手で示した。
 帳面係と時読みの隣に、座布団が二つ置かれている。片方は金彩が施されたひときわ立派なものだ。脇息もある。
「いつ見えるのでしょう」
 不鳴不飛が問うた。
「それは分からないね。結局、見えなかったということもありうるが、それはそれとして、気張って対局してください」
 宗与が言った。
「承知しました」
 宗秀が答えた。
 おはるはぐっと唇をかんでうなずいた。


   五

 支度は整った。
 時読み係の宗与の弟子と、帳面係の不鳴不飛が持ち場に着く。
 二つの大きな砂時計も据えられた。いよいよ、御城将棋の始まりだ。
 立会人の宗与が最後に腰を下ろした。
「よろしゅうございますか」
 宗与が両対局者の顔を見て言った。
「はい」
 宗秀が短く答えた。
 おまさは頭を下げた。答えようと思ったが、声が出なかった。
「では、振り駒を」
 宗与が弟子のほうを見た。
 時読み係が立ち上がり、一礼してから歩を五枚取り上げた。
「大橋宗秀様の振り先にて」
 合わせた掌の中で小気味よく駒を振ると、時読み係は広げてあった白い布の上にばっと広げた。
 と金が四枚出た。
 おまさの先手だ。
 おまさは小さくうなずいた。
 勝敗の決着がつかぬかもしれぬ御城将棋とはいえ、有利な先手のほうがありがたい。
「振り駒の結果、本郷まさの先手番と決まりました。砂時計の砂が落ちきれば、一手十の時読みとなります。では、始めてください」
 立会人が告げた。
「お願いします」
 宗秀が一礼した。
「お願いいたします」
 おまさもていねいに頭を下げた。


   六

 ふっ、と一つ、おまさは息をついた。
 少しのどが渇く。
 おまさは湯呑みに手を伸ばした。
 お茶を啜ると、気が落ち着いた。
 駒に指を伸ばす。
 おまさは静かに歩を突き、角道を開けた。
次の一手が、早くも分かれ道だった。
 相手の宗秀は将棋家の傍流で、棋譜を見たことがない。振り飛車か、居飛車か。それすら分からない。
 飛車先の歩を突けば居飛車だ。
 宗秀は落ち着いた手つきで着手した。
 角道を開ける手だ。まだ居飛車か振り飛車か分からない。
 ここで角を交換する角換わりは、おまさはあまり得手ではないから、迷わず角道を止めた。
 宗秀も同じように角道を止める。
 それから数手進んだ。
 おまさは息を呑んだ。
 宗秀が飛車を四筋に振ったのだ。
 四間飛車だ。
 敵の戦法が分かった。
 これなら、亡き父が得意だったあの戦法を使うことができる。
 おまさの身の内に力がわきあがってきた。
 駒組が進んだ。
 おまさは角を天空の位置に上がり、桂馬を跳ねて角頭の歩を支えた。
 宗秀の顔がにわかに紅潮してきた。
 初めて相対する戦法だということはすぐさま察しがついた。

 おとっつぁんが編み出した戦法ですもの。
 どんな棋書にも載っていないはず。

 おまさは手ごたえを感じた。
 それに……。
 宗秀の双肩には、ただならぬ重みがかかっているように見受けられた。
 無理もない。
 傍流とはいえ将棋家の代表としてこの御城将棋の場に臨んでいる。もし町場の小娘に負けたりしたら、これは名折れもいいところだ。絶対に負けるわけにはいかぬ。そんなただならぬ重みだ。
 宗秀の額には脂汗が浮かんでいた。
 前屈みになって読みにふける。おまさにも息づかいが伝わってきた。
 ややあって、宗秀は意を決したように着手した。
 数手進んだところで、相手の狙いが読めた。
 桂馬だけで支えているおまさの角頭の歩。そこに狙いを定めているのだ。たくさんの駒を利かし、その歩を取り払ってしまえば、角を攻めることができる。
 おまさは受けに回った。
 下段に構えた飛車を五筋に回して援軍を送る。
 負けじとばかりに、宗秀も銀を出た。
 まさに一触即発、双方の駒組が進み、のっぴきならぬところまで来た。
 宗秀がちらりと砂時計を見た。おまさも見る。砂は着実に減っていた。
 ややあって、駒音高く、宗秀が歩を突いた。
 開戦は歩の突き捨てから、と言われる。
 同歩と取れば、いよいよいくさが始まる。
 ふっ、と一つ、おまさは息をついた。
 そして、静かに着手した。
 同歩だ。
 その刹那――
 どん、と一つ太鼓が鳴った。
 おのれが着手したから太鼓が鳴ったのか。
 初めはそう思った。
 しかし、違った。
 もう一度、太鼓が鳴り、声が響いた。
「ご老中様、御成りにござりまする」
 老中が将棋を見物しに姿を現したのだ。


   七

 対局場所が老中の屋敷とはいえ、かたちのうえは御城将棋だ。ただし、将棋好きと言われる老中が本当に姿を現すのかどうか、これは蓋を開けてみないと分からなかった。
 その老中が現れた。
 おまさは身の引き締まる思いがした。
 上座は老中のために空けてあった。隣に座った帳面係の不鳴不飛が居住まいを正す。
「ほう、若いな」
 対局場に入るなり、老中がおまさを見て言った。
 おもむろに色合いの異なる座布団に座る。
「いくつだ」
 五十がらみの老中がたずねた。
 切れ者で鳴る幕閣の中枢を占める人物だ。眼光が鋭い。
「十四でございます」
 おまさは答えた。
「将棋はだれに教わった」
 老中が問うた。
「父でございます」
 おまさは答えた。
「そうか」
 と、老中。
「この構えも、父から教わりました」
 おまさは盤面を手で示した。
「あまり見たことのない構えだな」
 老中が身を乗り出した。
「はい」
 おまさがうなずく。
「何という名の構えだ? 美濃でも矢倉でもないな」
 老中があごに手をやった。
 将棋に関して、なかなかの知識を有しているようだ。
「名はついておりません」
 おまさは答えた。
「角の頭に歩。それを支える桂馬に金銀。さながら天空の城のごとし」
 老中は腕組みをした。
「天空の城でございますか」
 立会人の宗与が言った。
「そうだ。そういう名の囲いはあるか」
 老中がたずねた。
 宗与とはかねて見知り越しのようだ。
「いえ、ございません」
 宗与はすぐさま答えた。
「ならば、天空の城囲いでよかろう。余が命名の立会人だ」
 老中がおまさに向かって笑みを浮かべた。
「恐れ入りましてございます」
 おまさは緊張の面持ちで頭を下げた。
「では、勝負のつづきだ。いましばし見物してまいろう」
 老中が言った。
「対局の続きを」
 宗与が言った。
「承知しました」
 手番の宗秀が答えた。


   八
  
 指し手が進んだ。
 駒がさばけ、双方の玉が薄くなってきた。
 駒箱に載せた駒の数が増える。
 ちなみに、当時は駒台はなく、取った相手の駒は伏せた駒箱の上に載せていた。
 おまさは長考に沈んだ。
 受けるか、攻めるか。
 受けるにしても、駒を投入するか、はたまた玉の早逃げか。
 思案を始めたらきりがない局面だった。
 ここで動きがあった。
 見物を続けていた老中のもとへ武家が歩み寄り、何事か耳打ちをしたのだ。
 老中はうなずいた。どうやら急用ができたようだ。
「名残惜しいが、中座する。双方、励め」
 老中はそう言って立ち上がった。
「はっ」
 宗秀が短く答えた。
 おまさは無言で一礼した。
 のどが渇いて、声が出なかった。
 おまさは盤面に集中した。
 いくたびも読みを入れたが、そのたびに気になる筋が浮かんでくる。
 これしかないという解になかなかたどり着かない。
 攻める手を思案したが、どうしても切れてしまう。ここで攻めつぶしに行くのは剣呑だ。
 まずは受けに回る。相手に攻めてもらい、隙を突いて反撃に転じる。勝機があるとすればそれしかない。
 そう結論が出た。
 では、どう受けるか。
 持ち駒を使うか、早逃げか。
 二つに一つだ。
 おまさは砂時計を見た。
 残りは乏しい。
 一手十の時読みになれば、悪手も出るだろう。
 早く指さねば。
 おまさは焦った。
 その焦りゆえに、指が動いた。
 つい動いてしまった。
 おまさは玉を逃がした。
 早逃げだ。
 だが……。
 指が駒から離れた刹那、背筋を冷たいものが伝った。
 汗だった。


   九

 指した刹那に、嫌な筋が見えた。
 しかし、ひとたび動かした駒を元に戻すことはできない。
 玉の早逃げに賭けたおまさだが、攻めは最大の守りとも言われる。ここは攻めるべきだった。
 宗秀が一つうなずいた。
 手ごたえありげな顔つきだ。
 ややあって、将棋家の俊秀が着手した。
 ぴしっ、と指がしなった。
 おまさは気づいた。
 好機を逃してしまった。
 さらに受けても、一手指すごとに圧されていってしまう。
 おまさの玉は守りの要でもあった。早逃げをしてしまっては、もはや陣を維持することはできない。
 おまさは意を決した。
 かくなるうえは、刺し違える覚悟でいくさに臨むしかない。
 ここで砂時計の砂が尽きた。
 いよいよ時読みだ。
「先手の砂が尽きました。これより一手十の時読みを始めます。……三、四……」
 時読み係が無情に告げた。
 帳面係の不鳴不飛が筆を動かす。
 八まで読まれたところで、おまさは着手した。
 駒が足りないかもしれないが、攻めるだけ攻めるしかない。
 懸命の着手が続いた。
「……八、九」
 ときには九まで読まれたところで着手する。
 それは読みに入っているとばかりに、宗秀もすかさず駒を動かした。 
 いよいよ大詰めだ。
 おまさは敵陣に必死に食いついた。
 駒をふんだんに渡してしまっている。もはや受けはない。敵玉を詰ませるしか望みはなかった。
 だが……。
 どうしても歩が一枚足りなかった。
 もう一枚、歩があれば、ぴったり詰む。
 その歩がない。
 万策尽きた。
「七、八……」
 時読みが進む。
「負けました」
 おまさは駒を投じた。
 これまでの人生で最も大きな勝負。
 御城将棋は、敗戦に終わった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

無用庵隠居清左衛門

蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。 第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。 松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。 幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。 この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。 そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。 清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。 俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。 清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。 ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。 清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、 無視したのであった。 そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。 「おぬし、本当にそれで良いのだな」 「拙者、一向に構いません」 「分かった。好きにするがよい」 こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。

石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~

めぐみ
歴史・時代
お民は江戸は町外れ徳平店(とくべいだな)に夫源治と二人暮らし。  源治はお民より年下で、お民は再婚である。前の亭主との間には一人息子がいたが、川に落ちて夭折してしまった。その後、どれだけ望んでも、子どもは授からなかった。  長屋暮らしは慎ましいものだが、お民は夫に愛されて、女としても満ち足りた日々を過ごしている。  そんなある日、徳平店が近々、取り壊されるという話が持ちあがる。徳平店の土地をもっているのは大身旗本の石澤嘉門(いしざわかもん)だ。その嘉門、実はお民をふとしたことから見初め、お民を期間限定の側室として差し出すなら、長屋取り壊しの話も考え直しても良いという。  明らかにお民を手に入れんがための策略、しかし、お民は長屋に住む皆のことを考えて、殿様の取引に応じるのだった。 〝行くな!〟と懸命に止める夫に哀しく微笑み、〝約束の1年が過ぎたから、きっとお前さんの元に帰ってくるよ〟と残して―。

【読者賞】江戸の飯屋『やわらぎ亭』〜元武家娘が一膳でほぐす人と心〜

旅する書斎(☆ほしい)
歴史・時代
【第11回歴史・時代小説大賞 読者賞(読者投票1位)受賞】 文化文政の江戸・深川。 人知れず佇む一軒の飯屋――『やわらぎ亭』。 暖簾を掲げるのは、元武家の娘・おし乃。 家も家族も失い、父の形見の包丁一つで町に飛び込んだ彼女は、 「旨い飯で人の心をほどく」を信条に、今日も竈に火を入れる。 常連は、職人、火消し、子どもたち、そして──町奉行・遠山金四郎!? 変装してまで通い詰めるその理由は、一膳に込められた想いと味。 鯛茶漬け、芋がらの煮物、あんこう鍋…… その料理の奥に、江戸の暮らしと誇りが宿る。 涙も笑いも、湯気とともに立ち上る。 これは、舌と心を温める、江戸人情グルメ劇。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

焔と華 ―信長と帰蝶の恋―

歴史・時代
うつけと呼ばれた男――織田信長。 政略の華とされた女――帰蝶(濃姫)。 冷えた政略結婚から始まったふたりの関係は、やがて本物の愛へと変わっていく。 戦乱の世を駆け抜けた「焔」と「華」の、儚くも燃え上がる恋の物語。 ※全編チャットGPTにて生成しています 加筆修正しています

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...