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1.姫の章
16.知っていること
しおりを挟む「知っている事を話してくれ、スピネル」
ラピスは強い眼差しでスピネルを見ている。
熊の胴体に狼の頭が三つもついているという魔物と石の力。それにこのピンクの子も……スピネルもルチルもこんな動物知らないと言うし、次から次へと…異世界は驚く事だらけで想像が追いつかない。
「魔物の事を知って伝説を調べていたんじゃないのか。お前と姫様だけで食い止めようとして」
「そんなんじゃねぇよ」
鬼気迫る様子のラピスを、スピネルは一蹴。ラピスも負けじと言葉を返す。
「いまさら隠し事などしてる場合ではないだろう。どうせ」
「だからそんなんじゃねぇって言ってんだろ、このおたんこナスが」
(おたんこナス……久しぶりに聞いた)
「人の話を聞け」
私がおたんこナスに気を取られている間にスピネルはラピスを黙らせて、話し始める。
「成人を祝う舞踏会があったろ」
「あぁ、スピネルの帰ってきた日だね」
「そうだ。あの日、ロゼはイヤリングを落として深夜、一人で宝玉の間に行ったらしい。暗い中、何とかイヤリングを見つけ帰ろうとすると、身に着けていた護り石が壁の一部と反応を始め光りだして……引き寄せられるように近づいていって石をはめると、壁が裂けて地下に続く扉が出てきたそうだ」
「仕掛け扉だったのか……」
「あぁ……そこで兵士が現れて、その日はそれ以上先に進めなかったらしいが、ロゼの指示通りにしたら、確かにその通りの仕掛けで地下に通じる階段が出てきたからな。あれには驚いちまった」
「なるほどね。どうりであの忍びのスピネルが捕まった理由がわかったよ」
「でもなぜだ……護り石の秘密なら継いだ者は聞かされているはずだ。本来、国王様から姫様に伝えられるべきで、隠したり、ましてや暴いて罰せられるような事ではないだろう」
「そうだな。あいつ……絶対誰にも見つかるなって言ってたけど、その理由は俺にもわからずじまいだ。囚えられるような事でもないし、お前らやロゼまでこんな事になるなんて……理由がわかんねぇよ」
「それだけ、何か重大な事が隠されてるんだ。五人の騎士と姫様を引き離し、姫様の命まで狙うほどのね」
「姫様の命……まさか」
「うん、流刑先で密かに暗殺する計画だったようだよ。誰の差し金かわからないけど……姫様が居なくなって喜ぶ輩がいるらしい」
「そんな奴いねぇだろ。ロゼはこの国で唯一の跡取り、座を争うようなきょうだいもいねぇし、伯父伯母だって全員死んじまったじゃねぇか」
(全員、死………!? )
スピネルが何気なく言った一言に血の気が引いていく。間違いなく陰謀の匂い。
「絶対王政のこの国で、仮に後継がいなくても貴族が成り上がる事は不可能だ。石の力を持ち、尚且つ貴族としても有力で強権をふるえる者でないと……一人、思い当たるけど、それだって姫様と婚姻を結ぶ必要が………」
うなるルチルはなぜかスピネルを見ていて。
「そんなわけないだろ。いくらスピネルがあの名門カーディー家の子息でも……それに姫様にはお立場がある。伯爵より低い階級の騎士と婚姻を結べるわけがない」
「まぁ、そうだよね。ごめんごめん、私ならともかく姫様がスピネルなんか選ぶはずないよね」
「なんかって何だよ。お前らケンカ売ってんのか」
どこまでが本気の話で冗談なのか、私にわかるわけもなく、出発は明日にするから休むようにと部屋を出されてしまった。
(まぁ……部外者だもんね……)
湯人のお姉さんに案内してもらってお風呂に入ることにした私は何となく込み上げる寂しさを、感じずにはいられない。
「おい、俺の仲間が魔物を見たんだが、鎧の軍人を丸呑みしちまったらしいぞ」
「あぁ、目を赤く光らせて魔物を探すんだってな」
通り過ぎるたび聞こえてくる商人達の会話はどれも魔物の話ばかりで、皆の恐れが伝わってくる。
「あんなもんどうやって倒すんだい? 」
「大陸から爆弾でも買わねぇと無理だろうねえ」
「大丈夫さ、なんたってこの国には伝説の戦士達がいるんだからね。石持ちの中でも特に強いんだってさ」
「おまけにと~っても美しいんだろ? 」
「一度でいいから会ってみたいもんだねぇ~」
脱衣所でも女性達が……さっきの男性達よりは楽しそうに話している。
「滑らないようにお気をつけください」
「ありがとうございます」
「ル~ルル~♪ 」
魔物騒ぎのおかげで皆、腕に集まる視線がなくて気が楽だったけれど、言いようのないもやもやで、胸がいっぱいだった。
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