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1.姫の章
17.特別な戦士
しおりを挟むその頃、姫様のいない部屋では騎士達が難しい表情で何かを話していた。
「そうか……では姫様を連れて行かないわけにはいかないんだな」
「あぁ…何が起きるかわからねぇが、あいつの事は俺が守る。身の回りの世話もいるし、今までのようにはいかねぇだろうがお前らも協力してくれ」
「もちろん。姫様にはずっと守られてきたからね」
「あぁ……しかし、気になるな」
「何がだ」
「実は以前、カロンから相談された事があるんだ。姫様が」
「しっ……姫様が戻ってきたみたい」
「ラピス、その話あとで聞かせろ」
決して大きくない姫様の足音を聞き分けて、ルチルが話を遮った。
「お帰りなさいませ、姫様」
「いい湯だったか」
「うん……お先に……」
姫様を絶対不安にさせないように……彼等が姫の事を想う気持ちは、今の彼女が思う以上に大きく、強いのかもしれない。
「美味そうだな、おい」
「これは……初めて見る料理だな」
夕食時、初めて見る料理にスピネルとラピスは驚いている。
「モモルーちゃんとスピネルのはカツカレー、ラピスのは天ぷらうどんと言うんだよ。そうですよね、姫様」
「うん」
「ルゥ♪ 」
知っているルチルはちょっと得意げに、その感じがまたちょっと面白い。
「俺、腹減りまくってんだ。さっそく一口……ん!! うまっっ!! 」
よほどお腹が空いていたのか、いただきますも言わないでお皿を持ってがっつくスピネル。彼らしい気もするけれど、あまり貴族っぽくはない。
(しかも名門……)
対するラピスはフォークとスプーンで丁寧に衣を……。
「あの…衣は剥がさないほうがいいかも」
「これはコロモ…というのですね。皮かと思ってしまいました」
「うん…よければそのままかぶりついてみて。私は汁でやわやわになったのが好きだけど、一般的にはサクサクのうちに食べるのが美味しいかな…」
かぶりつく、という事に戸惑いがあるのだろう。ラピスだけでなく、私が食べるのを見ていたはずのルチルもフォークとナイフでエビを切ろうと苦戦している。
(同じものにしてよかった……)
「えっと……食べてみるから見ててね」
まさか、スプーンとフォークで天ぷらうどんを食べる事になるとは思わなかったけど、スプーンで海老天を固定してからフォークで刺して一口。
「なるほど……」
「かぶりついているのに無作法に見えないな……なんて可愛らしいんだ」
三人に食べている所をじっと見られて思わず顔が赤くなる。
「おいラピス。てめぇ恥ずかしいっていう言葉を知らねぇのか」
「俺は何も恥ずかしい事などない」
「いや、お前が恥ずかしいかどうかじゃなくて、周りが恥ずかしいっつってんだよ」
二人がじゃれ合っている間に見様見真似で海老天を口に運ぶルチル。
「………これは……」
行儀よく、口元が見えないように手で隠して。
「海老の甘みが豊かな一品ですね。この、コロモというものもスープを吸って味わい深くなっています」
しっかり飲み込んでから感想を述べる行儀の良さにも感心してしまう。私なら噛みながら美味しいとか何とか絶対に言ってしまう。
「しかし、めちゃくちゃうめぇな」
いつも食べるスピードが速いらしいスピネルはもうカツカレーを平らげてしまいそうだ。
「これは、流行るでしょうね。来年の今頃にはこの地域の名物料理になっているかもしれません」
「最初にうどんを教えた人もびっくりかもね」
そんな話をしながら楽しく穏やかに過ぎていく夕食の時。話しやすくなった所で私から話を切り出してみる。
「もしかして……石持ちの中でも特に強くてカッコいい戦士って……3人のこと? 」
その瞬間、フォークやスプーンを扱う手が止まった。
少し間を置いてスピネルが私を見る。
「あぁ、そうだ。俺等だけじゃねぇ、これから会いに行くカロンもセドニーも、それだけじゃねぇ、他にも特に強い力を持つ戦士が国じゅうに散らばってる」
「国じゅうに……そんなに何人も……」
「あぁ、伝説通りならな。ほら、あの石盤に書いてあったろ、十の聖石集まりし時って……と言うことは戦士も十人いるはずだ」
「私達は力を継ぐ時、既に先代から力の事を伝え聞いているのですが、中にはまだ自覚のない方もいるでしょう。この国は鉱物産業が盛んで、御守や憧れの意味合いで護り石を持つ一般の方が大勢おられます。その中から十人を探し出すのは至難の業……」
「だが、あんたが心配する事は何一つない。あんたの事は俺等が必ず守るし、段取りも全て俺等でやる。だから何も考えず、今はついてきてくれ」
スピネルは、私の恐れをかき消すように軽く笑った。
「モモルーちゃん、私達の大切な姫様のお世話、手伝ってくれるね? 」
「ルゥルル~♪ 」
表情をうかがうようなラピスの視線に気付きながら、お願いしますと頭を下げた。
この世界で頼れるのは彼等だけ。
どんなに危ない事が待っていても、また命を狙われるような事があったとしても、私は彼等を信じ、ついていくしかないのだから。
「なるべく迷惑…かけないようにするから」
「姫様が側にいてくだされば、安心して力を振るえるのです。私達には必要なのですよ、姫様の事が」
ルチルはそう言ってウインクした。
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