『番』という存在

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本編

嫁ぎ先

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次の日の朝、全快した私は仕事をこなしていたが、そこにアナスタシアがやってきた。

「ちょっとリアリー、昨日はなんだったの?私の邪魔する気?使用人の分際でなんのつもり?」

「申し訳ございません。ただ介抱していただいただけでそんなつもりはありません。」

「そういうことじゃないのよ!使用人なのにカイン様に近づくことが分不相応だと言ってるのよ。」

「何?アナスタシア、何をしているの?」

「お母様、聞いてよ。この子が昨日来たカイン様に色目使ってるのよ。使用人のくせに。」

奥様まで加わって、この後、よくないことがあるとわかってしまう。

「やっぱり、血は争えないのかしらね。あなたの母親が死んでから私と結婚して旦那様が帰ってこないのってあなたの顔を見たくないからなのよ。あなたが母親に似ていないから、心のどこかで不貞を疑っていたんじゃないの?母親に似て色目を使うことを覚えているんじゃないの?」

「お母様の悪口言わないで。お母様は不貞なんかしてない!お父様も私の子を愛してくれていたもの!帰ってこないのは仕事が忙しいからです!」

「口答えしないでちょうだい。あんたを家に置いてあげているのは誰だと思っているの?」

バシッと、音がして頬を扇で打たれた。痛い。

「昨日、カイン様が帰る時にまた来ると言っていたけど、あなたは部屋にこもっていなさい。部屋の外へでるのは決して許しません、仕事もしなくていいわ。アナスタシアもわかったわね。」

「ええ、お母様。私のメイドに見張らせとくわ。」

奥様とアナスタシアは私を見て意地の悪い笑みを浮かべながら部屋に戻っていった。

そのまま部屋に戻って、ベッドに横になった。

「私は幸せになっちゃいけない運命なのかな…カインさんに会えて嬉しくてもっと一緒にいたくて、また会いに来るって言っていたのを期待しているのがそんなにダメなことなの?」

カインさんにもらった指輪を握りしめながらまた眠りについた。

部屋に閉じ込められたまま数日が過ぎて、ぶたれたところも元に戻って、早く日常に戻りたいと思っていたら、ドアがノックされた。

「入るわよ。」

奥様が入ってきて、この前の意地の悪い笑みを浮かべながら話しかけてきた。

「あなたをこの部屋から出してあげるわ。ついでにこの屋敷からも。」

「えっ?それはどういう…」

「物分かりも悪いのね。あんたの嫁ぎ先が決まったのよ、明日迎えに来るわ。それまでに準備しておきなさい。ちゃんと縁談に行けばあなたの母親の形見をあげるわ。逃げたら全部処分するわ、二度と誰の手にも触れられないように…」

そう言って、去っていった。

「えっ。嘘、こんなに早く?でもお母様の形見が……逃げたいけど、絶対に逃げられない。奥様はそれを見越して見張りをつけているはず。……執事長や料理長にお別れを言わなきゃ……」

ふらふらした足取りで2人にお礼を言って、また部屋に戻ってきてベッドに倒れ込んだ。

「…カインさん…会いたい…最後に一度でいいから会いたいよ…カインさん………」

指輪を握りしめながら呟いていた…。


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