私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

文字の大きさ
76 / 200

デートの巻 陸

しおりを挟む
 相当の騒ぎのあと、劇場を後にする。

 マチ子さんには、「今度は会長抜きで来てね」と、耳打ちをされた。最後まで潤くんは、死に顔をキープしていたので、明日の公演が心配になったが、有紗さんが「大丈夫。潤くんもプロだからね」っとフォローしていた。

 劇場を出てきても、まだ蓮司会長に手を握られている。

 ベントレーが目の前に現れる。

 「ずっと座っていたから、歩きたいか? ちょっとこれから車でまた連れて行きたいところがあるけど、どうだ?」

 ああ、この笑みですか? また甘々の蓮司と正面対決だ。辛い。

 「大丈夫ですよ。ちょっと喉が乾いたけど」
 「車の中に色々あるぞ」

 車内に乗り込んだ私達だっだが、何が飲みたいと聞く蓮司に、ちょっとソーダ的なさっぱりとした物がありませんかと聞くと、クランベリージュースと炭酸水を割って、クランベリーソーダを作ってくれた。上にはミントも載っている。動いている車内でこんなのを作れる会長は本当に器用かもしれない。

 はあ、やっと手を離された。あ、美味しい。さっぱりとした甘みと酸味が乾いた喉を潤す。
 今度は隣の方が息を吐く。

 「はぁーー、あのショウをお前に見せるのは緊張したから、ちょっとだけ飲んでいいか?」

 私に見せるのに緊張していただなんて、思わぬ告白を聞いたからちょっと驚く。

 「もちろんですよ。どうぞどうぞ」
 「ありがとう」

 車の中に内蔵されている扉を開いた。蓮司はガラスの装飾が綺麗なボトルから、グラスに中身を注ぐ。そして、透明の美しい琥珀色した液体に大きな球体のアイスボールを入れた。何度かマドラーでかき混ぜた後、ゆっくりとその舌でその味を確かめる。動作がいちいち優雅で色気がある。

 「ん……む」

 お味がお気に召したようで、その表情も多少和らいだ。

 「好きなんですね。そのお酒?」
 「ああ、これはバーボンだ。ウィスキーのな」
 「おまえは、まだ早いというか何というか、危ないな。今はまだ早い」

 劇を観たばかりの冷めやらぬ感動をお互いに感じながら、いろいろくだらない話を始める。

 「あのマチ子さんって結構強烈ですね」
 「ああ、アレは結構業界では信頼されている監督だ」
 「そうなんですか? 全く知りませんでした」
 「まあ、実は日本人なんだが、ニューヨークで活動していたんだがな、俺が引き抜いてきた」
 「え? そうなんですか?」

 答える代わりにまたバーボンを一口飲みながら、ちょっと目線を美代に合わせた。
 その後、まるで本当のデートみたいにお互いが何が好きか聞いていく。何だかこれはこれで、かなり恥ずかしい作業だ。なぜなら、いちいちお互いの好みを照らし合わせていくような感じで、何だかメンタル的にクルものがある。

 「そうか、美代はやっぱりおばあちゃん趣味なんだな」
 「な! そんな全国の手芸ファンと漬物ファンを敵に回しましたよ!」
 「あははは。そんな敵になんかしないぞ。むしろ、好ましい」
 「じゃー、蓮司会長の趣味って何ですか?」
 「んーー、ないな」
 「え? ないの?」
 「ない」
 驚いて美代が蓮司を見つめた。
 「そうなんですか?」
 「ありきたりで悪いが、趣味が仕事なんだ。仕事にみんな直結しているしな」
 「大変ですね」
 「あ、でもな」
 「な、なんですか?」
 「今回のショウのプロデュースは、完全に趣味というか遊びかな」
 「えええ? 遊びであんなの作っちゃうなんて、蓮司会長は、本当に趣味が仕事なんですね」

 なぜかその言葉に反応する蓮司。

 「気づいて欲しいと思ってあえて細いことは言わなかったが、本当にあのショウを見て、何もわからないのか?」
 「え? 何をですか?」
 「だから、俺がプロデュースしたんだ」
 「さ、流石ですよね~~。有紗さんを起用したのは大正解でした」
 「しかも、業界始まって以来の短期間で作ったんだぞ」
 「はーーーっ。やりますねー。会長!!」

 蓮司は今まで感じたことのないようなイライラを感じた。

ーーなんでだ? 気がつかない? どれだけ鈍いんだ。美代は??

 ああ、自分でも笑ってしまうが、美代と時間を過ごしていると、忘れていた人間的な感情が湧いてくる。これは、自分でもわかる。俺は拗ねているんだ。美代に認められて褒めて欲しいっと思ってしまう。
 ごくっとまた琥珀色の液体を飲み、不貞腐れた自分が抑えられなくて車外の景色を見る。
 沈黙が続く。

 「あれ? 気分を害されましたか? 会長?」
 「……悪い。そうかもしれん」
 「……わかりました。何に気分を害されたかはわかりませんが、私は楽しかったですよ、あのショウは。本当に夢物語で、今日はありがとうございました。わざわざ蓮司会長のコネというか、あんな素晴らしい席で、蓮司会長のプロデュースのショウまで観れて幸せでした。しかも、有紗さんのまでお会いできて最高でしたよ。じゃー、あまり会長のご機嫌も悪いようなので、これでお開きにしますか?」

 「な、何を言う、美代!」っと言いながら、ガタッと身を突然起こした蓮司のウィスキーが勢いよく溢れた。美代の足元にびっちゃりとかかってしまう。
 「悪い!すまん!!」
 「ああーー!でも、大丈夫ですよ。乾くし!ワンピースは無事だし」

 何故か悪戯なことを考えてるのが有り有りとわかる蓮司が、美代を上目遣いで見つめる。

 「美代。動くな。このウィスキーは、実はかなりのレアものでな。勿体ないな」

 そして、ぐいっとそのウィスキーがかかった片足の足首を掴みあげられる。

ーーえええ?何ですか?

 思わずパンツが見えないようにスカートの裾を抑えた。
 片足の靴をゆっくり取り、そして、何かとっても美味しそうなものが目の前にあるようにじっくりと美代の足を眺める。

 「蓮司会長!!その、あの、これって」
 「大丈夫、痛くしない。ちょっとウィスキーを味あわせてくれ……」

 ローヒールの靴を何故かゆっくりとした動作で取り上げる。

ーーな、何??そのまるで獲物を狙うような目線!!

 蓮司の怪しい両手が美代の片足を包む。

ーーえええ? 舐めるの? 足、舐めちゃうの?そんな高いウィスキーなの? お幾らなんですか、このウィスキー?

 蓮司が美代の足の指にキスを落としながら、滴っているウィスキーを舐めていく。舌に絡めながら、液体を吸い取る。

 「ぎゃーーー、無理です。会長。無理! 足なんて臭いですから! 申し訳ないですが、いくらお高いウィスキーも足臭で、絶対に不味いです。諦めてください!」
 「大丈夫。美代。美味しいから」

 蓮司の妖麗な舌使いが美代の足首を上がってきた。

 「ああ、なんて甘い。最高だ」

 蓮司が美代の足の味を堪能している。

 「か、会長! ギブです。ギブアップです。おかしいです、絶対に!」
 「大丈夫だ。美代。頑張れ……嗚呼、なんて可愛い」
 「ひ、可愛い!? ウィスキーに可愛いって変ですよ。ヒョーーーーっ。あれっ、なんか違うとこ舐めてませんか」
 「美代。このウィスキーはすでに生産停止のやつだ。匂いだけでもその価値があるんだ」

ーーか、会長! そんなーー!

 「ああ、このストッキングが邪魔だな。破いていいか?」
 「え! キープでお願いします。靴擦れ出来るし勿体ないですから!! キープ、死守でお願いします」

 ふふふっと悪魔の様な笑みが美代を震えさせた。
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...