チャイルドパニック

槇瀬陽翔

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「ねぇ、拓ちゃん起きて」
真夜中にペチペチとちっちゃな手で叩かれる痛みと少し甲高い声で叩き起こされた。
「んっ、なんだ?」
寝起きの寝惚けた頭ではハッキリと理解できない。隣にあるはずの蒼樹の身体がない。

ボーっとする頭で片目だけ開けて周りを見渡す。そこで見つけたのは、顔の近くにちょこんと小さな子が正座して顔を覗き込んでいる姿だった。
「拓ちゃん起きた?」
俺と目が合い聞いてくる。
「はっ?えっと…誰だお前?もしかして蒼樹なのか?」
いまだに状況が把握できないし、理解できない。
「うん。さっきね、急にドクンって心臓が痛くなって気が付いたらこんな姿になってた」
蒼樹が自分に起きたことを説明してくれる。俺はベッドの横にあるテーブルに手を伸ばし部屋の電気のリモコンを取り明かりをつけた。

身体を起こし座り、マジマジとみる。

蒼い髪と瞳をした5歳ぐらいの子供。しかも、俺のシャツを着ている。その子を観察していると、話し方も行動もあの織田蒼樹そのものだった。

「原因はわかるか?」
こうなる原因に覚えがあるのかと聞いてみる。俺には記憶がないからな。
「う~ん。ご飯の時、最後に勝お兄ちゃんがくれたシャンパンがいつもと違う味がしたんだよね。それが原因かな?」
ちっちゃな頭をかくりと横に傾げる。
「一つ聞くけどお前さ…幾つだ?」
さっきから気になってたんだ。身体が子供になってるってことは頭の中も子供なのか?って。
「ん?あぁ、見た目は子供だけど、中身は変わらないから。ピチピチの17歳です!」
やっぱりあの織田蒼樹のままなんだな。

ん?兄貴に渡されたシャンパン?

「あのクソ兄貴!!」
俺は蒼樹を小脇に抱え込み自分の部屋を飛び出し、兄貴の部屋へと奇襲をかけた。

「このクソ兄貴~!!」
俺は部屋の電気をつけると、ベッドで寝ているクソ兄貴の背を蹴り倒した。
「ぐえっ」
そんな声と共に兄貴は壁に激突した。
「いってぇ。なにするんだ拓真」
打ち付けた頭をさすりながら目を覚ました兄貴が文句を言ってくる。
「これ、どういうことだ。ちゃんと説明してもらおうか」
ちっちゃくなった蒼樹を兄貴の前に出して理由を問い詰める。
「うわぁ~!!やっぱりちっちゃい蒼くんは可愛いなぁ~!!」
なんて言いながら蒼樹に抱き着こうとするから、咄嗟に蒼樹を床におろしてそれを回避する。
「説明しろやクソ兄貴」
胸ぐら掴んで脅し気味に問う。
「え~っと…その…」
兄貴はモゴモゴ言いながら視線をさまよわせた。
「ネタはあがってるんだよ!このクソ兄貴!!さっさと白状しやがれ!」
俺は真夜中だということを忘れて叫んでいた。
「イヤ、この間な同窓会があって、吉田の子供の頃が見たいって話が出て真辺が騒いでたんだ。それに俺たちも便乗したんだけど、吉田が子供の頃の写真なんかないっていうからさ…」
兄貴はしどろもどろに話し出す。
「で?どうやったらこんなことになるんだよ!」
子供の頃が見たいって話は分かる。それがなんでこんなにチビになったってことだ。
「いや、それはな…同級生の中に医薬品の研究をしてるヤツがいて、じゃぁ子供になる薬でも作ってやるって話になって…この間、完成したって俺んところに持ってきたから…ほら、蒼くんの子供の頃も見てみたいな~って欲目が出て…つい、シャンパンに混ぜて飲ませちゃった…」
なんて、のほほんと言ってくる。このクソ兄貴…
「ふざけんなクソ兄貴!薬を出せ!全部出せ!それとこれいつ効力切れるんだよ!」
兄貴を殴りたいのを我慢していう。マジで殴りたい。
「んもぉ~、こんな時間になにを騒いでるのぉ」
しまった!厄介な連中が起きてきた!
「きゃぁ~!なに可愛い~!もしかして蒼ちゃん?」
あぁ、一歩遅かった。姉貴たちに見つかった。しかも親父やお袋まで来たよ。
「なぁ可愛いだろ?」
なんて兄貴が言ってやがる。
「誰のせいだ誰の!いいから薬を出せ!あと、解毒剤を作らせろ!」
俺はクソ兄貴の頭を思いっきり殴った。
「いってぇ~。子供の頃は拓真も可愛かったのに。今じゃこんなに狂暴になって…」
兄貴はブツブツ文句をいいながら引き出しを漁り薬の入っている袋を取り出し、俺に渡してくる。
「これで全部だろうな?」
兄貴を睨みつけながら確認してみる。まだ残ってても厄介だからな。
「そうだよ。それ以外もってない」
兄貴は凄く残念そうに答えた。

これ以上被害を拡大させてたまるか!

「あ~も~!あんたたちも散れ~!」
俺は玩具になってる蒼樹を姉貴たちから引き剥がす。
「でも、服はどうするつもり?」
お袋の言葉に固まった。そうだった…。
「俺のお古は?」
残ってるかわからないが聞いてみる。
「あるけど…着れるかしら?」
お袋はそう言いながら佳代姉の衣裳部屋の隣の部屋に向かって歩いていった。俺は蒼樹を抱いてついていった。

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