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《とある女神の愁嘆》

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 どうして…どうしてこんな事に…!

 真白な光は己の色。見慣れた物のはずだが、そこに混じる金がそれを否定する。

 熱いのか痛いのかよくわからない。
 神は苦痛など感じないはずなのに。神に苦痛など与えられるはずないのに。

 それを与えられるのは同格の者のみ。

 美しい私の姿が消えていく…。

 何故? と問えど、応えは無い。

 ただただ、強き怒りと悲しみと苦しみに呑まれていくーーー






 私が『神』としてこの『世界』へ送られたのはいつの事だったか。
 ただ、私にとっては初めての『経験』で、同じように初めて『世界』を任される幾人かと、手助けのためのベテランがいると聞いていた。

 『天上』にて他の神々と顔を合わせた際、もう『世界』は『眷族』を降ろすのみまで創り上げられており、手間が省けたと思った。

 各自で己の『眷族』となるモノを創る段になって、やはり私は己と同じようなカタチの者たちにすべしと主張した。
 だって、私は美しいもの。
 他の神々も少し困った顔をしたけど…特に、獣の姿を持つ女神は大分ゴネたけど、結局私の言う通りに賛同したわ。そりゃそうよね、あの姿は美しく無いもの。
 唯一、最古参の、一番力のある男神だけは首を縦に振らなかった。腹が立ったけど、私じゃ勝てないから放っておいた。


 創り上げた『眷族』の出来にとても満足したわ。
 私と同じようなカタチ。でも、私ほど美しくはしない。まぁ私の美しさは創れないけど。女神だもの。

 程々の力・程々の美しさ・程々の賢さ。

 『私』という存在を、頼り、崇めさせなければいけないんだもの。際立つモノは不要だわ。



 そして、『世界』に『眷族』たちが繁栄した。





 好き勝手に『地上』に降りるわけにはいかないから、『天上』から眺めるだけ。つまらない。何もする事が無い。
 ちょっと『魔素』の調整を疎かにしただけなのに、最近じゃ私に手を出させないようにしてるっぽい。仲間外れとか酷いわ。
 『転生』する魂の選別にも携わらせてくれない。私を他の世界の『神』に会わせないようにしてる。酷すぎるわ。

 『力』が足りない。

 暇すぎて『地上』ばっかり見てる。
 『眷族』たちはそれなりに楽しそう。
 『眷族』からの『力』が流れてくるのがわかる。きっと他の神たちも感じているのだろう。どの『眷族』たちもそれぞれの『創造主』へ祈りを捧げているのがわかる。
 でも…

 気に入らないわ。

 私と同じような姿形をした『眷族』たち。
 そう、同じような見た目なのよ。

 なのに、どうして私の『眷族』より強いのかしら? 美しいのかしら? 賢いのかしら?

 そして…信仰する心流れる力が強いのかしら?

 気に入らないわーーー



 私はとてもすごい『神』なのに。美しく強い『神』なのよ。
 だから、私の『眷族』も『特別』になったって構わないわよね。他の『眷族』たちが持たない『力』を与えましょう。
 そうすれば、私に対する『信仰心』も強まるわ。

 ほら、ちょっと手を貸すだけで、私の『眷族』はとても優秀。他の『眷族』よりずっとずっと『強く』なったわ。もちろん私も『強く』なった。ふふ、いい気分だわ。

 強くなった私は、『界』を渡る事も容易になった。あちこちの『世界』をこっそり覗きに行く。色んな『世界』があるけれど、やっぱりお気に入りは『ヒト』が『力』を持つ世界。
 特に、古く強大な神が治めている、『ヒト』のみの信仰を集める世界。『ヒト』たちの中では色んな『神』を信仰してるつもりみたいだけど…カタチを変えた『一柱の神』なだけ。たった一人が崇められている『世界』。

 羨ましいわ…。


 …そうだわ。私もそうなれるようにすれば良いのよ!
 だって、私は偉大なる『神』だもの!




 ほんの少し手を貸すだけで、『眷族』たちは強くなる。
 『転生』だけじゃなく、他世界からそのまま『ヒト』を呼べば、さらに良い刺激になる。
 あぁ、素敵! 私の思い描く『世界』にもうすぐなるはずだわ!


 集まる! 集まってくる! 今まで他に流れてしまっていた、『私』への『力』が!


 素晴らしいわ! もう他の誰よりも、私は『強い神』になれた!!
 もう、この『世界』は私だけでも治めていける!!
 邪魔なヤツらは要らないわ!
 そうね、私の『眷族』より美しく、賢い『眷族』を創った女神たちは『消して』しまいましょう。そして、あのケダモノ女神は…どうでも良いわね。『力』を削って…私に逆らえないよう『枷』をつけて…でも、ここに居られるのも目障りだから『地上』に堕としましょう。
 残りの男神が煩いわね。無視してたら居なくなったわ。

 …あぁ、でも、あの最古参の神だけは残してやろうかしら。『世界』の面倒な管理を押し付けるためだけに。
 …決して堕とせなかったわけじゃないわ。情けよ、情け。




 なんて素敵なの! 私の『世界』!!






 ーーーおかしいわ。どうして? 何がいけなかったの?

 あの時もいつもと同じだったわ。ただちょっと、顕現するところを間違っただけ。
 仕方ないわ。あの『世界』の『神』が、最近私が来るのを警戒してるみたいだから、いつもより『力』を絞って行動してたせいだもの。
 顕現してすぐ目の前にあんな大きなモノが来るなんて。ビックリしたけどちゃんと避けたわ。でも、誰かにぶつかっちゃった。あんなところにいるのが悪いのよ。鈍臭いわね。
 すぐに姿を隠して、次の転移者探し本来の目的のために移動しようと思ったのに…

 何だかよくわからない状態の魂があるなんて…!!

 さすがに放置したらあっちの『神』にバレちゃうわよね…。仕方ない、この魂だけ持って、ほとぼりが冷めるまでここには来ないようにしよう。
 あ、でも持って帰ってきたはいいけど、どうしようかな、コレ。最古参の『神』に知られちゃったけど…口うるさいわねぇ…どうにかすればいいんでしょ? え? まだ繋がってる? どうでもいいわよ。
 あ、『器』があるわ。アレに入れちゃえば良いわね。ちょうど死にそうだし、適応しても『魔の森』ならすぐ食われるわ、きっと。手間が省けて一石二鳥!
 私ってば頭いいわ。


 全部全部、終わったと思ったのよ。何の問題も無いと思ってたの。
 なのに、少し休んで、起きてみたら、狭間別空間にあの時の『魂』がいた。『器』に適応して。

 驚いたわ。

 適応しただけでなく、『本体』が死んだ消えたにも関わらず消失しないなんて。
 わざわざ『器』を選んだにも関わらず生き残るなんて…悪運が強すぎだわ。

 でも、邪魔なのよね。

 うん、邪魔だもの。消しちゃえばいいわ。
 だってもうあっちの世界との繋がりもないんだもの。不要なモノだわ。



 なのに…なのに…! 何故?! 何故なの?!


 ーーー『私』が、消えていくーーー
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