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13:美への執着
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「マリアンヌ様!」
王妃襲来から数か月が経過している。のんべんだらりと暮らすマリアンヌのもとへ、来客がやってくる。パリッと軽快な音を鳴らしてポテチを食べていたマリアンヌは、にたりと笑みを浮かべた。
「あら、リリィ様じゃないですか。粗茶しかありませんけど。コーヒー、紅茶、緑茶に煎茶、コーヒーフロートなんてのもありますけど、どれにします?」
「コーヒーフロートで! ではなくて、わたし、お役に立てたでしょう?」
コーヒーフロートを手渡したマリアンヌは、意地悪そうに片側だけ口端を上げる。
「ええ、重畳です。」
「あのパーティーから、王妃様すごく美しくなっちゃって」
リリィ曰く、王妃に美容品を売ってからというものお茶会の頻度が極端に増えたのだと。自分の美を見せびらかすように着飾り、女性の嫉妬と羨望の眼差しを独り占めにしている。
思った以上に早い行動だったが、最近は他の令嬢にも売ったり譲ったりしているのだろう。
「おかげさまで、ぽーんと売り上げが増えましたから」
懐が潤って仕方がない。どこぞのバブル経済で紙幣をろうそく代わりにしたなどという話も、少し気持ちが分かるというものだ。
内心で大笑いするマリアンヌに、リリィはふうと息を吐いた。
「あんなに気楽に払えるって、王族ってすごいですね」
王妃ともあろう女性が、人目があるのに化粧をしないではいられない。通常の女性が毎日化粧をせずとも、王妃だけは美しさを保っていなければならないのだ。
それを、ぽんと払えるのだから、確かに王族はすごいと言えるだろう。
とはいえ、実際には美容品に使われているのは、王妃の使っていないドレスや靴などだ。実質これにはお金がかかっていないようなものだ。
凄いというのなら、高頻度でお茶会を開けるだけのお金があるほうだろう。毎月いくら使っているのかは知らないが、はたして本当に気楽に払い続けていられるのだろうかと、パリパリとポテチを鳴らしながらマリアンヌは思う。
「気楽に……そうね、すごいですね。ふふふ」
好きな物を食べ、好きな時間に起きて、好きな事をして、好きな時間に眠る。そんな理想の生活を送るために、彼女には頑張ってもらわなければならない。
もっとも、すでに十分稼がせては貰ったが。
油で汚れた手をぺろりと舐め、油を洗い流すためにコーラを一口飲む。シュワシュワと黒い液体の中で弾けていた泡が、マリアンヌの喉を通り過ぎていった。
(そろそろ、大物が出てくるかもしれないね)
いくら王族が金を持っていて、本人が必要ないと思っている物を対価にしているとはいえ、妻の浪費が目立ってくるころだろう。
それに気が付かないようでは国王などやってはいけない。あと三か月もすれば国王がやってくるはずだ。さて、今度は国王になにを売りつけてやろうかと、マリアンヌは内心でほくそ笑んだ。
「流石に、殺傷能力のあるものは出せないとして。車やロボットも文明的には早いでしょうね。んー、時計とか、プラモデルなんかはどうかな」
お城とか、騎士とか、異世界でも違和感のないプラモを押し付けたりして。あれは時間が溶けていくというから。文字通り悪女じみた顔で笑うマリアンヌに、なぜかドン引きした様子のリリィは、そっと視線を外してポテチにそっと手を伸ばしていた。
王妃襲来から数か月が経過している。のんべんだらりと暮らすマリアンヌのもとへ、来客がやってくる。パリッと軽快な音を鳴らしてポテチを食べていたマリアンヌは、にたりと笑みを浮かべた。
「あら、リリィ様じゃないですか。粗茶しかありませんけど。コーヒー、紅茶、緑茶に煎茶、コーヒーフロートなんてのもありますけど、どれにします?」
「コーヒーフロートで! ではなくて、わたし、お役に立てたでしょう?」
コーヒーフロートを手渡したマリアンヌは、意地悪そうに片側だけ口端を上げる。
「ええ、重畳です。」
「あのパーティーから、王妃様すごく美しくなっちゃって」
リリィ曰く、王妃に美容品を売ってからというものお茶会の頻度が極端に増えたのだと。自分の美を見せびらかすように着飾り、女性の嫉妬と羨望の眼差しを独り占めにしている。
思った以上に早い行動だったが、最近は他の令嬢にも売ったり譲ったりしているのだろう。
「おかげさまで、ぽーんと売り上げが増えましたから」
懐が潤って仕方がない。どこぞのバブル経済で紙幣をろうそく代わりにしたなどという話も、少し気持ちが分かるというものだ。
内心で大笑いするマリアンヌに、リリィはふうと息を吐いた。
「あんなに気楽に払えるって、王族ってすごいですね」
王妃ともあろう女性が、人目があるのに化粧をしないではいられない。通常の女性が毎日化粧をせずとも、王妃だけは美しさを保っていなければならないのだ。
それを、ぽんと払えるのだから、確かに王族はすごいと言えるだろう。
とはいえ、実際には美容品に使われているのは、王妃の使っていないドレスや靴などだ。実質これにはお金がかかっていないようなものだ。
凄いというのなら、高頻度でお茶会を開けるだけのお金があるほうだろう。毎月いくら使っているのかは知らないが、はたして本当に気楽に払い続けていられるのだろうかと、パリパリとポテチを鳴らしながらマリアンヌは思う。
「気楽に……そうね、すごいですね。ふふふ」
好きな物を食べ、好きな時間に起きて、好きな事をして、好きな時間に眠る。そんな理想の生活を送るために、彼女には頑張ってもらわなければならない。
もっとも、すでに十分稼がせては貰ったが。
油で汚れた手をぺろりと舐め、油を洗い流すためにコーラを一口飲む。シュワシュワと黒い液体の中で弾けていた泡が、マリアンヌの喉を通り過ぎていった。
(そろそろ、大物が出てくるかもしれないね)
いくら王族が金を持っていて、本人が必要ないと思っている物を対価にしているとはいえ、妻の浪費が目立ってくるころだろう。
それに気が付かないようでは国王などやってはいけない。あと三か月もすれば国王がやってくるはずだ。さて、今度は国王になにを売りつけてやろうかと、マリアンヌは内心でほくそ笑んだ。
「流石に、殺傷能力のあるものは出せないとして。車やロボットも文明的には早いでしょうね。んー、時計とか、プラモデルなんかはどうかな」
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