【完結】隣国の王子の下に嫁いだ姫と幸せになる方法

光城 朱純

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それぞれの想い

ルーイの努力

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 外に出れば、避けたくてたまらなかった暑さが、体にまとわりつく。

 ただ、避けたいからといって、閉じこもっているわけにはいかない。姫のことを少しでも知りたい、そのような焦りが私を突き動かした。

「ルーイ!今日は手伝っていかないのか?!」

「また店番やっておくれよ!」

「今日はちょっと用があるんだ!また今度ね。」

 街ですれ違う人々がルーイに向かって声をかける。そのやり取りを聞きながら、ルーイの方に顔を向けると、いつもの様に得意げな顔を私に見せた。

「この街で人から話を聞くのにさ、色んなところに顔を出したんだ。そこら中に知り合いが増えちゃったよ。」

 情報を得るために、手伝いや店番をしていたということか。私が姫の話をしたのはルーイにだけだ。姫の情報は、ステフには頼れない。ルーイは自力で情報を得ようとしたんだ。私のために……

「不慣れなことを、させたな。」

「そんなことないって。思ったよりも楽しかったよ。最初は怒鳴られてたけどね。」

「負担をかけさせた。すまない。」

「謝るなって。こっちは俺が受け持つって言ったろ?それに、アイシュタルトから任されたからな。」

「私から?」

「うん。アイシュタルトが俺にそんなこと言うなんて、珍しすぎて張り切っちゃったよ。」

「悪いことをした。」

「大丈夫、楽しかったって言ったろ?おかげで情報も、少しだけど金も稼いだ。どこかに定住するときの練習だよ。」

「定住するのか?」

 旅に飽きたらと、ルーイがそう言っていたことを思い出す。ここで?ルーイの旅が終わるというのか?

「どうかな。まだ、考えてない。それに、まだアイシュタルトの笑顔見てねぇし。」

「お、大口を開けては笑わぬ。」

「そう?俺、そろそろだと思ってるけど。」

「そのようなこと!」

「ほら。会ったときよりも、ずっと人間らしい。ずっとつまんなそうな顔してるより良いよ。」

 驚いた私の顔を指差して、ルーイがそう告げる。
 
「人間、らしい?」

「うん。何考えてるか、わかるようになった。今の方が良い。」

「私には、其方がわからぬ。」

「え?俺?」

「あぁ。いつも私が考えるよりも先を、深くを、考えているように思う。」

「俺、そんなこと考えてねぇよ?」

「いつも先回りして、動いているではないか。私には、どれも予想のできぬことばかりだ。」

「はぁ?俺が?そんなわけねぇって。俺のことかいかぶりすぎ。ただ俺はさ、自信のないことは口にしないだけ。」

「自信のないこと?」

「そう。自分が自信もって答えられることだけ、口にする。自信のないことは、言う必要ないだろ?」

「そうであったのか。」

「ただそれだけだよ。気にしすぎだって。ほら、着いた。」

 ルーイが足を止めたのは、一軒の雑貨店の前であった。

「ここは?」

「ここの店の旦那がさ、去年まで旅商人だったんだって。今のことは聞けないけど、コーゼの姫のこと、色々知ってたんだ。」

「旅商人を辞めたってことか?」

「うん。ここの店の娘が旦那に惚れ込んで、何とか結婚してもらったんだってさ。」

 通行証を返却して、カミュートに定住したのか。旅の楽しさよりも、自分に惚れた女と共に生きることを選ぶ。ステフの人生にも、そういう道があるのかもしれない。

「話を聞いてみたい。」

「あぁ。いつでも来いって言ってくれてる。俺も一通りのことは聞いたけどさ、俺は直接クリュスエント様を知ってるわけじゃない。アイシュタルトが話した方が良いだろうなって思ったんだよね。」

「すまない。助かる。」

「良いって!じゃあ、行こう。」

 この店の旦那と知り合うまでに、どれほど苦労したのだろうか。どれだけの人間と会って話をしたのだろうか。たった半月で、このような人物に会うことが、私にはできるだろうか。

 ルーイの努力と苦労に頭が下がる。

 
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