2 / 8
出会い
しおりを挟む
「親切にありがとうね」
「いえ、では失礼します。」
そして、私は部屋へと戻った。
「はぁ……」
ため息が出てしまう。
「よく来たな!シュン王子よ」
父の声だ、さっきまで私に怒鳴っていた声とは別人の声だった……。
「初めまして、僕はシュンと言います。以後よろしくお願いいたします。」
「こちらこそ、会えて光栄だ。」
「ところでシュン王子よ、要件とはなんだ?」父が尋ねる。
「はい、先日、話を済ましていたディスア令嬢との結婚についてのことですが…」
「ああ、覚えてるとも。それで、答えは決まったかね?」
父はニヤリと笑う。
「はい、僕の願いを聞き入れていただき感謝しております。是非、結婚させて頂きたいと思います。」
「おお、それはよかった!早速手続きに入ろうではないか!」
「はい!」
シュン王子は弾んだ声で喜んでいた。何がいいんだろう?こんな性格の悪い女と結婚することが……
「おい!リリアーナ!いるならさっさと手続きしろ!」
父の声だ、なんで私にばかり命令するのだろうか?一応令嬢だよ?私?
「ほら!早くしろ!!」
「はい……」
私は渋々父の元へと向かった。
「すみません、シュン王子。一家の恥を見せてしまって。」
父がシュン王子に謝罪している。
「いえ…全然大丈夫ですよ…。」
シュン王子は少し引いている様子だった、そりゃそうだ、こんな胸糞悪い現場を見て、当たり前と思うほうがおかしい。
………だから私は……おかしいのかな?
「そう言ってくれて助かるよ。この馬鹿娘のせいで君の結婚が遅れてしまったからな。申し訳ない。」
「いえいえ、気にしないでください。」
本当に最悪な父親だな……多分これ、私は母親似だな。
「では、早速だが一週間後に結婚式を始めようじゃないか!」
「はい」
シュン王子はとても嬉しそうな顔をしている。そんなに嬉しいのかな……
「リリアーナ!お前は早く準備しろ!」
また父に怒鳴られる。もう嫌になってくる。
「はい……」
私はしぶしぶ返事をして、部屋に戻った。
「グスっ……」
涙が出てきた。どうして私が……
すると扉が開いた。
「えっ……」
入ってきたのはシュン王子だった、しかも私に近づいてきたのだ。私はびっくりして、転んでしまった。
「ふふっ、ドジだね」
笑われた……恥ずかしいなぁ……
「す、すみません……」
謝ることしかできなかった。
「ねぇ、君はあんなことされて、悔しいとか、辛いとか、思わないの?」
唐突な質問だなと思ったが、答えることにした。
「はい…………辛くはないです。慣れてしまいました。」
「そっか……」
「あの……シュン王子は……なぜ、私のところへ来たんですか?私なんかよりディスア姉様のところに行ったほうが…」
「君は、自分が役立たずって思ってる?」
「はい、そう思います。」
役立たずだから、結婚できないんだって思った。伝統とかも私を貶める嘘だって考えたこともある……そういうところが役立たずなんだけどね…
「違うよ、役立たずじゃない。君は優しい人だ。」
「えっ……」
急に褒められて、驚いた。
「言っちゃ悪いけど、あの親父はクソだね、最低って感じ。」
「あ、ありがとうございます……。」
正直、嬉しかった。今まで私の存在を認めてくれた人は、いなかったからだ。
「君のことは、僕に任せてくれ。」
「えっ?」
どういう意味なんだろう?
「必ずここから逃げ出せるようにするよ」
なんで…私なんかに…役立たずなのに…初対面なのに、なんでここまで…私は泣いていた。
「いえ、では失礼します。」
そして、私は部屋へと戻った。
「はぁ……」
ため息が出てしまう。
「よく来たな!シュン王子よ」
父の声だ、さっきまで私に怒鳴っていた声とは別人の声だった……。
「初めまして、僕はシュンと言います。以後よろしくお願いいたします。」
「こちらこそ、会えて光栄だ。」
「ところでシュン王子よ、要件とはなんだ?」父が尋ねる。
「はい、先日、話を済ましていたディスア令嬢との結婚についてのことですが…」
「ああ、覚えてるとも。それで、答えは決まったかね?」
父はニヤリと笑う。
「はい、僕の願いを聞き入れていただき感謝しております。是非、結婚させて頂きたいと思います。」
「おお、それはよかった!早速手続きに入ろうではないか!」
「はい!」
シュン王子は弾んだ声で喜んでいた。何がいいんだろう?こんな性格の悪い女と結婚することが……
「おい!リリアーナ!いるならさっさと手続きしろ!」
父の声だ、なんで私にばかり命令するのだろうか?一応令嬢だよ?私?
「ほら!早くしろ!!」
「はい……」
私は渋々父の元へと向かった。
「すみません、シュン王子。一家の恥を見せてしまって。」
父がシュン王子に謝罪している。
「いえ…全然大丈夫ですよ…。」
シュン王子は少し引いている様子だった、そりゃそうだ、こんな胸糞悪い現場を見て、当たり前と思うほうがおかしい。
………だから私は……おかしいのかな?
「そう言ってくれて助かるよ。この馬鹿娘のせいで君の結婚が遅れてしまったからな。申し訳ない。」
「いえいえ、気にしないでください。」
本当に最悪な父親だな……多分これ、私は母親似だな。
「では、早速だが一週間後に結婚式を始めようじゃないか!」
「はい」
シュン王子はとても嬉しそうな顔をしている。そんなに嬉しいのかな……
「リリアーナ!お前は早く準備しろ!」
また父に怒鳴られる。もう嫌になってくる。
「はい……」
私はしぶしぶ返事をして、部屋に戻った。
「グスっ……」
涙が出てきた。どうして私が……
すると扉が開いた。
「えっ……」
入ってきたのはシュン王子だった、しかも私に近づいてきたのだ。私はびっくりして、転んでしまった。
「ふふっ、ドジだね」
笑われた……恥ずかしいなぁ……
「す、すみません……」
謝ることしかできなかった。
「ねぇ、君はあんなことされて、悔しいとか、辛いとか、思わないの?」
唐突な質問だなと思ったが、答えることにした。
「はい…………辛くはないです。慣れてしまいました。」
「そっか……」
「あの……シュン王子は……なぜ、私のところへ来たんですか?私なんかよりディスア姉様のところに行ったほうが…」
「君は、自分が役立たずって思ってる?」
「はい、そう思います。」
役立たずだから、結婚できないんだって思った。伝統とかも私を貶める嘘だって考えたこともある……そういうところが役立たずなんだけどね…
「違うよ、役立たずじゃない。君は優しい人だ。」
「えっ……」
急に褒められて、驚いた。
「言っちゃ悪いけど、あの親父はクソだね、最低って感じ。」
「あ、ありがとうございます……。」
正直、嬉しかった。今まで私の存在を認めてくれた人は、いなかったからだ。
「君のことは、僕に任せてくれ。」
「えっ?」
どういう意味なんだろう?
「必ずここから逃げ出せるようにするよ」
なんで…私なんかに…役立たずなのに…初対面なのに、なんでここまで…私は泣いていた。
0
あなたにおすすめの小説
才能が開花した瞬間、婚約を破棄されました。ついでに実家も追放されました。
キョウキョウ
恋愛
ヴァーレンティア子爵家の令嬢エリアナは、一般人の半分以下という致命的な魔力不足に悩んでいた。伯爵家の跡取りである婚約者ヴィクターからは日々厳しく責められ、自分の価値を見出せずにいた。
そんな彼女が、厳しい指導を乗り越えて伝説の「古代魔法」の習得に成功した。100年以上前から使い手が現れていない、全ての魔法の根源とされる究極の力。喜び勇んで婚約者に報告しようとしたその瞬間――
「君との婚約を破棄することが決まった」
皮肉にも、人生最高の瞬間が人生最悪の瞬間と重なってしまう。さらに実家からは除籍処分を言い渡され、身一つで屋敷から追い出される。すべてを失ったエリアナ。
だけど、彼女には頼れる師匠がいた。世界最高峰の魔法使いソリウスと共に旅立つことにしたエリアナは、古代魔法の力で次々と困難を解決し、やがて大きな名声を獲得していく。
一方、エリアナを捨てた元婚約者ヴィクターと実家は、不運が重なる厳しい現実に直面する。エリアナの大活躍を知った時には、すべてが手遅れだった。
真の実力と愛を手に入れたエリアナは、もう振り返る理由はない。
これは、自分の価値を理解してくれない者たちを結果的に見返し、厳しい時期に寄り添ってくれた人と幸せを掴む物語。
夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
お掃除侍女ですが、婚約破棄されたので辺境で「浄化」スキルを極めたら、氷の騎士様が「綺麗すぎて目が離せない」と溺愛してきます
咲月ねむと
恋愛
王宮で侍女として働く私、アリシアは、前世の記憶を持つ転生者。清掃員だった前世の知識を活かし、お掃除に情熱を燃やす日々を送っていた。その情熱はいつしか「浄化」というユニークスキルにまで開花!…したことに本人は全く気づいていない。
そんなある日、婚約者である第二王子から「お前の周りだけ綺麗すぎて不気味だ!俺の完璧な美貌が霞む!」という理不尽な理由で婚約破棄され、瘴気が漂うという辺境の地へ追放されてしまう。
しかし、アリシアはへこたれない。「これで思う存分お掃除ができる!」と目を輝かせ、意気揚々と辺境へ。そこで出会ったのは、「氷の騎士」と恐れられるほど冷徹で、実は極度の綺麗好きである辺境伯カイだった。
アリシアがただただ夢中で掃除をすると、瘴気に汚染された土地は浄化され、作物も豊かに実り始める。呪われた森は聖域に変わり、魔物さえも彼女に懐いてしまう。本人はただ掃除をしているだけなのに、周囲からは「伝説の浄化の聖女様」と崇められていく。
一方、カイはアリシアの完璧な仕事ぶり(浄化スキル)に心酔。「君の磨き上げた床は宝石よりも美しい。君こそ私の女神だ」と、猛烈なアタックを開始。アリシアは「お掃除道具をたくさんくれるなんて、なんて良いご主人様!」と、これまた盛大に勘違い。
これは、お掃除大好き侍女が、無自覚な浄化スキルで辺境をピカピカに改革し、綺麗好きなハイスペックヒーローに溺愛される、勘違いから始まる心温まる異世界ラブコメディ。
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
「無理をするな」と言うだけで何もしなかったあなたへ。今の私は、大公家の公子に大切にされています
葵 すみれ
恋愛
「無理をするな」と言いながら、仕事も責任も全部私に押しつけてきた婚約者。
倒れた私にかけたのは、労りではなく「失望した」の一言でした。
実家からも見限られ、すべてを失った私を拾い上げてくれたのは、黙って手を差し伸べてくれた、黒髪の騎士──
実は、大公家の第三公子でした。
もう言葉だけの優しさはいりません。
私は今、本当に無理をしなくていい場所で、大切にされています。
※他サイトにも掲載しています
(完結)お荷物聖女と言われ追放されましたが、真のお荷物は追放した王太子達だったようです
しまうま弁当
恋愛
伯爵令嬢のアニア・パルシスは婚約者であるバイル王太子に突然婚約破棄を宣言されてしまうのでした。
さらにはアニアの心の拠り所である、聖女の地位まで奪われてしまうのでした。
訳が分からないアニアはバイルに婚約破棄の理由を尋ねましたが、ひどい言葉を浴びせつけられるのでした。
「アニア!お前が聖女だから仕方なく婚約してただけだ。そうでなけりゃ誰がお前みたいな年増女と婚約なんかするか!!」と。
アニアの弁明を一切聞かずに、バイル王太子はアニアをお荷物聖女と決めつけて婚約破棄と追放をさっさと決めてしまうのでした。
挙句の果てにリゼラとのイチャイチャぶりをアニアに見せつけるのでした。
アニアは妹のリゼラに助けを求めましたが、リゼラからはとんでもない言葉が返ってきたのでした。
リゼラこそがアニアの追放を企てた首謀者だったのでした。
アニアはリゼラの自分への悪意を目の当たりにして愕然しますが、リゼラは大喜びでアニアの追放を見送るのでした。
信じていた人達に裏切られたアニアは、絶望して当てもなく宿屋生活を始めるのでした。
そんな時運命を変える人物に再会するのでした。
それはかつて同じクラスで一緒に学んでいた学友のクライン・ユーゲントでした。
一方のバイル王太子達はアニアの追放を喜んでいましたが、すぐにアニアがどれほどの貢献をしていたかを目の当たりにして自分達こそがお荷物であることを思い知らされるのでした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
全25話執筆済み 完結しました
氷の公爵は、捨てられた私を離さない
空月そらら
恋愛
「魔力がないから不要だ」――長年尽くした王太子にそう告げられ、侯爵令嬢アリアは理不尽に婚約破棄された。
すべてを失い、社交界からも追放同然となった彼女を拾ったのは、「氷の公爵」と畏れられる辺境伯レオルド。
彼は戦の呪いに蝕まれ、常に激痛に苦しんでいたが、偶然触れたアリアにだけ痛みが和らぐことに気づく。
アリアには魔力とは違う、稀有な『浄化の力』が秘められていたのだ。
「君の力が、私には必要だ」
冷徹なはずの公爵は、アリアの価値を見抜き、傍に置くことを決める。
彼の元で力を発揮し、呪いを癒やしていくアリア。
レオルドはいつしか彼女に深く執着し、不器用に溺愛し始める。「お前を誰にも渡さない」と。
一方、アリアを捨てた王太子は聖女に振り回され、国を傾かせ、初めて自分が手放したものの大きさに気づき始める。
「アリア、戻ってきてくれ!」と見苦しく縋る元婚約者に、アリアは毅然と告げる。「もう遅いのです」と。
これは、捨てられた令嬢が、冷徹な公爵の唯一無二の存在となり、真実の愛と幸せを掴むまでの逆転溺愛ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる