未来人間アキ

石枝隆美

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未来人間アキ

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未来人間アキ         石枝隆美



 朝スマホをいじっていると、視界がぐにゃっと曲がって、一瞬お父さんが見えた。そして、なぜか悲痛な顔を浮かべている。会社だ。辞表を提出している。
 そこで目が覚めた。私の周りは何ら変わった様子はない。いつもの朝だ。お父さんは新聞を読んでいる。お母さんは弟の弁当を作っていて、私はスマホを持ったまま、気を失っていたみたいだ。
「あんたはまたスマホばっかりいじって~朝食の時間くらいやめなさい。仕事遅刻するわよ。」
「はーい。」
「姉ちゃんはいいよなー就職したら試験がなくってさー俺も早く就職してぇ~。」
「何言ってんのよ。陸は卒論早く仕上げて、面接練習頑張んなさいよ。」 
 私は朝食を食べて、支度をし、仕事に出かけた。
 出社すると同期の由美子が話しかけてきた。
「おっはよー秋、今日も化粧ののりいいじゃん。彼氏とうまくいってんの?」
「まぁね。それなりよ。」
「いいなー私も年上の彼氏欲し~婚活でもしよっかな。」
「由美子、美人なんだからそんなことする必要ないじゃない。通り過ぎる男がみんなあんたのこと見てるわよ。」
「えへ、そうなんだよねー彼氏作ろうと思えばいくらでも作れるんだけど、理想が高すぎるのよね~。」
「あっそ。」
 私は由美子との会話もそこそこに自分のデスクに着いた。
 私が働いてるデザイン事務所では小説に挿絵を描くイラストレーターの仕事をしている。小説のストーリーを理解し、イラストで表現しなくてはならないため、暇さえあれば小説を読んでいる。担当した作品をヒットさせるのが目標だ。仕事は山ほどあるが自分の趣味であるイラストを描けるからやりがいがある。クライアントにオーケーをもらった時は喜びもひとしおだ。
 仕事もひと段落し、昼休憩の時間に食堂でランチを食べていると、ふと、今日の朝の出来事を思い出した。お父さん、大丈夫かな。

「今朝、大手携帯会社が顧客情報流出を公表し、漏えい件数は最大で683件に上る可能性があります。」
と食堂のテレビのニュースはそう伝えた。
お父さんの会社だ。もしかして…私は嫌な予感がした。
 帰宅してリビングのドアを開けると、お父さんがソファーに座ってうなだれていた。
「ただいま。ニュース見たけど、お父さんも関係してるの?」
「あぁ…そうだよ。責任を取って辞めようと思ってる。」
「やっぱりそうなんだ。あのね、私今日夢みたいなの見たの。それが、現実になったみたい。」
「…ごめん。今そんな気分じゃないんだ。ほっといてくれないか…」
「そうだよね、ごめん変なこと言って。」
   
 二

 自分の部屋で着替えながら考えていた。なんで未来が見えたのか。こんなことは初めてだ。私にそんな能力があったことはない。でも考えたところで何の解決にもならないことを悟った私は明日の朝も早いので、眠ることにした。
 次の日の朝、お父さんは書斎で辞表を書いていた。私は何も言葉をかけることができずに、新聞を読むふりをした。弟もお母さんから聞いていたのか、黙っている。家の中が暗いまま、私は仕事に出かけた。
 満員電車に揺られながら外を見ていると、また意識が遠のいてきた。やばいっと思ったがもう遅く、私はガクッと吊り革に掴まったまま、意識を失った。
 今度は弟が彼女にビンタされている。弟はごめんと言って彼女にすがるが、彼女はその場から去ってしまう。
 そこで目が覚めた。まただ。今度は弟で、彼女に振られるらしい。悪いことばっかじゃないか。最近付き合い始めたばかりなのに可哀想に。でも謝ることがあったってことは弟が悪いのかな。あっそうだ。弟にこのこと伝えなきゃ。私は携帯を取り出した。
「あっ陸?今どこ?」
「大学だけど、なんか用?」
「あのね、彼女に何か隠してるならバレる前に早く謝るのよ、いい?じゃないと彼女と別れることになるわよ。」
「は?なにそれ。姉ちゃんに何がわかんだよ。俺、今日も大学終わったら、彼女とデートなんだ、邪魔しないでよ。」
「そう。じゃあお姉ちゃんからも彼女によろしく言ってたって伝えといて。」
「へーい。」
これで未来は変わったんだろうか。
私は仕事帰りに由美子と居酒屋に行った。由美子はハイボール、私はカシスオレンジを飲んだ。
「最近、仕事はどうなの?」
「前から依頼してくださってるクライアントさんにさ、打合せでこのデザインじゃないんだよな、もっと新しい発想のデザインないの?
って言われたんだけど、私としてはもうこれ以上ない最高のものを作ったつもりだったんだよね~。」
「まぁ、それがこの仕事の醍醐味だよね。」
「それよか、彼氏とはデートしてんの?」
「う~ん最近会ってない。向こうも忙しいから、長くはデート出来ないんだ。疲れさせちゃったら悪いし。」
「えーそんな気遣ってんの?そんなんいってたら結婚なんてできないよ。気遣ってばっかりいたら自分なくなるよ、もっと自分はこうしたいって主張しないと。」
「そうかもね、由美子ならそうするよね。」

「ねぇ、実はさ、相談があるんだけど…」
私は気を失って未来が見えることを話した。
「…何それ、正夢ってやつ?未来が見えるなんて恐ろしいね。」
「良い未来ならいいんだけど、悪い未来ばっかなのよ。」
「でも、悪い夢なら早く知って、変えられるんじゃないの?そうならないように。」
「うん、変わると良いんだけど。」
「あんまり深刻にならない方がいいわよ。私の未来が見えたら早めに教えてね。」
「うん。」
「あっあとそれあんまり人に言わない方がいいわよ。だって悪い話が余計こじれたら最悪よ。変に意識しちゃうしさ。そういうのは自然に任せた方が案外うまくいくのよ。」
「そうね。」
 
 三

 帰宅すると、陸がいの一番に現れた。
「姉ちゃんなんでわかったの?」
「何が?」
「姉ちゃんが電話で彼女に謝れっていうからさ、俺、この前ゼミの女の子たちと遊んだこと謝ったんだ、そしたら正直に話してくれてありがとう、じゃなかったら許さなかったって言われてさー」
「…そう。」
「危なかった~、姉ちゃんのおかげで助かったよ。」
「良かったね。」
その時、携帯が鳴った。康二からだ。
「もしもし、康二?」
「あっ秋?最近連絡なかったからどうしたのかなと思って。」
「ごめんね、ちょっと色々あって…康二は最近どう?」
「うん、仕事もうまくいってるし、順調だよ。秋、もうすぐ誕生日じゃん。次、いつ会える?」
「誕生日かぁ~すっかり忘れてたよ。今週の土日は空いてるよ。」
「じゃあ土曜日、いつもの場所で待ち合わせようよ。」
「うん、わかった。じゃあ土曜日ね。楽しみにしてる。」
 ご飯を食べようと台所に行くと、お父さんが茶碗を洗っていた。
「お父さん、ただいま。お母さんは?」
「今日は友達の家に呼ばれてるらしいよ。」
「そう。…お父さん、これからどうするか決めてるの?」
「あぁ、再就職に向けて準備はしてるよ。でもこの年齢じゃな…難しいかもしれん。」
「大丈夫よ。今までのキャリアだってあるんだし、街に住んでるんだから、選ばなければいくらでもあるわ。」
「ありがとう。頑張ってみるよ。」

 陸の未来は私が助言したことによって変わった。未来は変えられることができるんだとわかった。だから、これから悪い未来が見えたらそうならないように働きかければいいんだ。私は少し安心した。
  
 四

 土曜日、私は康二といつも待ち合わせの場所として使っている本屋で立ち読みしていた。待ち合わせには二十分早く着いた。康二は三歳年上で仕事の取引先の相手として出会った。付き合って五年になる。もうそろそろお互い結婚してもいい年齢だが、なかなか踏み出せずにいる。
「おまたせ。ごめん待った?」
「ううん、本読んでたから大丈夫。行こっか。」
「うん。」
私達は以前から気になっていた小説が原作のアクション映画を見に行った。私は小説も映画もドラマも物語になっているものは大好物だ。仕事も兼ねているし、一石二鳥だ。
「もう少しで32だっけ?」
「も~歳のことは言わないでよ。」
「ごめんごめん。俺たちも将来のこと考えないとな。」
「…考えてるの?」
「考えてるよ。俺、秋以外眼中にないから。」
「照れるじゃん。」
「あはは。」
私達は映画を観た後、夜景が綺麗だと有名な一流レストランでディナーを食べた。
「秋、これプレゼント、開けてみて。」
「ありがとう。」
「箱を開けてみると、お花の飾りがついたイヤリングが入っていた。
「可愛い。」
「指輪はまだだけどさ、俺、自信ついたら必ずプレゼントするから、待っててよ。」
「うん。」
私は化粧の直しにお手洗い立った。
化粧を直しているとまた意識を失った。

 五

 両親が喧嘩をしている。お母さんが離婚届を突きつけ、お父さんが勝手にしろと言って部屋を出て行った。
 そこでまた目が覚めた。
どうしよう。これが現実になってはすごく困る。でも、私も両親の仲が冷めきっているのは薄々気づいていた。お互い会話も私と陸を介してしかしないし、名前を呼び合うところはもう何年も聞いていない。お父さんは仕事人間でいつも帰りは遅く、お母さんは友達のところによく出かけて行って、すれ違いの日々が続いている。誕生日はおろかイベントごとも最近はろくにやった覚えはない。離婚は避けられない現実なんだろうか。
 
 家に帰ると、怒号が聞こえてきた。
「おまえ、俺が会社辞めたの知ってるだろ⁉︎なんでこんな高い化粧品が買えるんだよ。どっから金が出てくると思ってるんだ。」
「いいじゃない。だいたいあなたが勝手に会社辞めたんでしょ。私が買うものにケチつけないでよ。これがないとプライドが保てないのよ、あなたは私のことなんかどうでもいいみたいだし、上手く行ってるフリをしないと自分が惨めになるのよ。あなた、私の顔なんてろくに見ないじゃない。友達には綺麗って言われたいのよ。」
私はお母さんとお父さんの間に割って入った。
「お母さん落ち着いて。お父さんもお母さんの気持ちもちょっとはわかってあげて。」
「あぁ、すまない。ちょっと取り乱してしまった。」
「ねぇ、今度温泉旅行四人で行かない?私が払うからさ、リフレッシュしてこようよ。」
「…でもいいの?彼氏と行かなくって。」
「いいのいいの。彼氏とは今度行くから。」
「そう。」
 こうして私達家族は、今度の週末に温泉旅行に行くことになった。これで、二人の仲を昔に戻せればいいのだが…。
 
 六

 温泉旅行の日は快晴だった。良かった、これで少しは皆んな良い気分で旅行を楽しんでもらえる。私は旅館に着くと、お母さんを誘って早速温泉に行くことにした。温泉は源泉掛け流しで、露天風呂も広く、丁度いい温度だった。サウナが好きなお母さんは水風呂に入ったりしながら、サウナで汗を流し、満足している様子だった。
 
 温泉から上がり、夕食は豪華な懐石料理だった。お父さんもお母さんもお酒が入り、陽気になっていた。
「お母さん、温泉気に入ってくれた?」
「最高よ。サウナに入ってデトックスできたし、お肌がプルプルになったわ。」
「良かった~お父さんはどう?」
「あぁ、良い気分だよ。これで身体もリフレッシュできたし、再就職が決まりそうな予感がしてきたな。」
「あのね、私言いたかったことがあるんだけど、私、今付き合ってる彼と結婚することになるかもしれないの。だから、お父さんとお母さんには昔みたいにいい夫婦になってもらいたいのよ。陸もそう思うでしょう?」
「うん、俺としても、家庭が居心地悪いのは嫌だし、姉ちゃんには気兼ねなく幸せになって欲しい。」
「お父さんももう会社辞めたんだから、仕事一筋はやめて、お母さんに寄り添ってあげて?」
「…秋。」 
「お父さん、私達子供に心配かけちゃってるみたいね。」
「あぁ。…そうみたいだ。」
「私達これからも二人で旅行に行ったりしましょうよ。せっかく二人とも大きくなって立派に育ったんだから。」
「そうだな。…この間は悪かったな。頭ごなしに怒鳴って。」
「私の方こそごめんなさい。」
  
 七

 二人は昔のように戻った訳ではないが、会話も増え、笑い合うことがあったりするようになった。良かった。離婚はなさそうだし、私の見たものは現実にはならなかった。こう考えみると、未来がわかるのも悪くないなと思うようになった。その時までは…

 由美子と仕事帰りに喫茶店に立ち寄った。
「秋、私思うんだけどね、未来を変えるってことはその変えたいこと以外も変えてるってことになると思うのよ。だから、良いこともあれば悪いことも招くかもしれないってことよ。」
「え、そうなの?でもやっぱり悪いことを知っちゃったらなんとか阻止したいと思うし…」
「そうね、確かにそうしたくなるわよね…ところで最近彼氏とはどうなの?」
「あっこの前、家族で旅行に行くって言って、それから一ヶ月くらい連絡してない…」
「彼氏寂しい思いしてるんじゃない?他の女に取られちゃうかもよ。」
「…うそ。」
私は帰り道、歩きながら康二に電話をかけた。
「あっ康二、最近連絡してなくてごめんね。今週の土曜日会える?」
「あー俺ちょっと用事入ってるんだ。また今度でもいい?」
「あっうん。そうだよね。康二だって予定あるよね。」
「ごめん。また今度連絡するよ。」
「うん、わかった。」
 こんなんでいいのだろうか。結婚するかもしれない相手なのに距離ができてしまってる。私が変な夢を見て、翻弄されているうちに康二が遠い存在になったような気がした。

 それからひと月後私達は別れることになった。康二から話があると言われて会うと、
「実は別れて欲しいんだ。他に好きな人ができた。」と言われた。私はなんとなくそうなるような気がした。なので、すがったりもせず、「わかった、今までありがとう。」と言ってサッと身を引いた。しかし、ショックでその日は泣いて、次の日は目が腫れていた。



「篠原さん、来週の日曜空いてる?コンサートのチケット買ってたんだけど、行けなくなっちゃったから、いらないかな?」
人気バンドのツアーコンサートのチケットだった。
「本当にもらっちゃっていいんですか?喉から手が出る程欲しいんですけど。」
「いいよいいよ~今度何かおごって~あはは。」
会社の上司にチケットをもらった。誰と行こうかといって思い当たる人は由美子しかいない。もう康二はいないのだ。そう考えると寂しいが振り返っても仕方のないことだ。

「由美子~ここよ、ここ。」
「秋、別れたんだって?彼氏と。」
「もういいのよ、その話は。終わったことだもの。」
「未来なんてわからなければ良かったのにね。彼氏と別れるっていう夢は見なかったの?」
「うん、変えられない運命だったからかな。」
「そんなことより、コンサートのチケットもらったから、来週の日曜一緒に行かない?」
「あ~ごめん、実はさ、彼氏できたんだ。」
「え本当に?良かったじゃない。」
「ありがとう。秋に悪いと思って言えなかったんだけど、実はもう婚約したんだ。来月挙式なの。来てよね?結婚式。」
「びっくり、急展開ね。スピード結婚じゃない。」
「うん、出来ちゃった結婚なんだ。赤ちゃんがお腹の中にいるの。」
「えーそうだったんだぁ。おめでたいね。絶対結婚式行くわ。ブーケは私のところ目掛けて投げてよね?」
「うん、わかった。」



私は夢の中で夢を見た。小さい女の子と遊んでる。誰の子供だろう。傍には優しそうな男性の影。いいな、こんな旦那さんに出会った奥さんは幸せね。
 起きると、目覚ましが鳴らなくて、結婚式の時間を大幅に遅刻していた。やばい、昨日飲みすぎて、目覚ましかけるの忘れてた。
 私は急いで支度をし、メイクも口紅を頬に塗ったくり、雑にぼかして足早に家を出て式場へと向かった。
 結婚式は丁度ブーケトスの時だった。由美子が私を探しているのがわかると、ここよここ~と言って、遅れてきた私が人をかき分け手を広げた。ブーケは私の元に見事着地し、私のものになった。
 
 結婚式の二次会はホテルの宴会場だった。私はお酒を飲みすぎて気持ち悪くなり、宴会場の隅の椅子にもたれかかりながら座っていたら、一人の男性が心配して声をかけてくれた。
「大丈夫ですか?」
「あっ大丈夫…康二!」
二人は互いにびっくりして目を丸くした。
「どうしてここに⁉︎」
「新郎の同僚だよ。」
「そんな偶然ってあるんだね。私も新婦の友人で招待されたの。」
「そっか…。」
「どう?彼女とはうまく行ってんの?」
「うまくって…」
「もういいじゃない、昔の話よ。あたしだって彼氏見つけたんだから。」
「本当に?そうか…俺、彼女なんていないんだ。」
「どうゆうこと?」
「俺、秋が困ってる時になんも相談に乗ってやれないんだな、頼ってくれないんだなと思って、必要とされてないのが苦しくって別れることにしたんだ。」
「…そんな」
「でも秋はそうゆう相手見つけたんだな、良かったよ。」
「ちがっ」
「あっじゃあ俺、新郎に労いの言葉かけてくるわ、じゃあな。」
なんてことだ。私は康二が私のことを裏切って違う女と付き合っているとばかり思っていた。私は夢のことを考えているうちに康二のことをほったらかしていた。私が困っているとなぜ康二は知っていたのだろう。やはり五年も付き合っていれば私の心の機微は見透かされていたのか。私は康二の心がまるで見えていなかったというのに…

 十

 以前から継続して依頼をいただいてクライアントと納品までのスケジュールのやり取りをして、ふと息をついたところだった。私は休憩室で、また視界が歪み、気を失った。
 康二が女の人と手を繋いで歩いてる。私の知らない人だ。二人は楽しげに会話しながら康二の家に入って行った。
 そこで目が覚めた。そんなの嫌だ、と思った。私のせいで別れることになってしまったけど、やっぱり康二以上の人なんていないと気づいた。

私は康二に電話した。
「康二、お願い、今日の夜会える?」
「どうしたの?」
「どうしても伝えたいことがあって…」
「…わかった。じゃあ、いつものところで。」
 
 待ち合わせ場所に行くと、康二が待っていた。
「お待たせ。康二も早かったんだね。」
「うん、俺も話があって。」
「そっか、じゃあ桜も咲いてることだし、公園に行って花見でもする?」
「いいね。」
私達は遅咲きの桜を見ながら、自動販売機で甘酒を買って飲んだ。
「綺麗だね~桜。桜って一年に一回しか咲かないんだよね~儚いよね。あと何回見れるんだろう。」
「当分見れるよ、秋はきっと長生きだから。」
「そうかな~意外と桜のように儚く散るかもよ、なんてね。」
「あはは。」
「ねぇ、康二覚えてる?私たちが付き合うことになった日。」
「覚えてるよ。」
「康二から告白してくれたよね。私もずっと好きだったから、すごい嬉しかった。」
「うん。」
「…今度は私から告白してもいい?」
「え?」
「私、康二には相談したくないわけじゃなかったの。康二には本当は私の全てを知っていてほしい。でも康二には迷惑かけたくなかった。自分のことは自分で解決しないとって思ってた。…でもそれは違ってたのかも。そのせいで私達すれ違って別れることになっちゃった。ねぇ、もう一度やり直せないかな。今度はなんでも康二に話す。頼りたい。」
「俺も、秋に頼られてないって拗ねないで、どうしたの?相談乗るよって言えば良かった。秋の問題は俺の問題でもあるのに、秋に任せっきりだった。かっこ悪いよな。俺もやり直したい。」
「うん。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
こうして私達はまた一から付き合うことになった。もう二度と同じ過ちは繰り返さないと心に決めて…





 




























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