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49.幼子に見える、敵
しおりを挟む――【バチ、バチ、バチ、バチ……バッチンッ!!】
「え? え……? な、なんだ?」
シュルルル~~~……と空気の漏れるような音を鳴らし。何か、煙のようなものが禁術機から出てきた。それが渦を巻き、人の形を作っている。
「チッ!! 無理やり引きずり出しやがって、ざっけんなよっ!! この低能な下民共がぁあーーーっ!!!」
――その人の形が固定し、柄の悪いガキが完成した。
「はあ? ガキは帰って寝ろ!!」
「お前に言われたくねぇ~よ! バーカ、バーカ!!」
おい、何だこの生意気なガキンチョは……?
まさか、人を苛つかせるための禁術機の新しい能力か?
――ん……? ガキを良く見ると、透けてるような気がするな。やっぱり実態ではないのか?
「お前は……。まさか、禁術機の意識か?」
「はっ? レイド、何を?」
隣にいるレイドを見上げると、そのガキを強く睨み付けていた。
「ふん……。そっちのは、まだ話が通じるようだな? けど、人間だってところが気にくわない」
えぇ? 本当に、そうなのか?
「やはり、そうか。禁術機には、意思のようなものがあるかもしれないと……ずっと思っていた」
「はっ! だったら、何だって言うんだ? 別に、俺達に意思があろうがなかろうが、クズ人間共には関係ないんだよっ!!」
なんだ? これは、憎しみ……か?
今すぐにでも、殺してやりたいというように強い殺気を感じる。
しかも、俺よりもレイドに対し、それを向けているようだった。
「関係はあるだろう。禁術機のせいで、たくさんの人間達が苦痛を味わっている。そのような、邪悪な存在のお前達は……この世にいてはならない」
レイドも、同じくらいの殺気をそのガキに向けていて……。2人の殺気に肌がピリピリとする。
「はっ、はははははははっ!!! ほんっと~に人間って馬鹿だよなぁ……? 何で俺達が存在しているのかも、それは未だに理解出来ないのかよっ!?」
「なに……?」
ガキは、何故か苛立たしげに髪の毛をグチャグチャと掻き回していて。何かを堪えているような、そんな表情を浮かべていた。
禁術機が存在している理由……?
まさか、それに意味があるのか?
「それは、どういう事だ? お前達の存在が――」
「教えるかっ!! バァーーーーカッ!!! 人間が、踠き苦しむ姿が目に浮かぶぜ!! はっはははははーーーっっ!!! 全部、全部、全部!! 自分達の行いを悔やむんだなっ!!」
そのガキの表情や声は、愉悦を交えて笑ってはいるけれど。目からはボロボロと涙が溢れ出ていた。
「お、おい、お前。なんで、泣いて……?」
「うるせーよ童顔っ!! ただの、泣き笑いだよバァーーーカ!!」
は、はあ? 童顔……? なんだよそれ。ギルドのおじいちゃんも言ってたけど、俺、そんなに子供っぽいか??
……。ん~。でも、このガキの言ってる……泣き笑いには見えないんだけど。俺の、気のせいか?
目を擦り、グスグスと泣いている姿は――幼い子のようだった。
レイドも呆気にとられたように、ポカンとした顔でガキを見ていた。
「――チッ! もう、終わりか……」
「え? あっ! お前、身体が……!」
ガキの身体がゆらゆらと揺れていて、徐々に消えていっている。
それに、比例するように、俺が持っている禁術機がパキパキと割れていく。
「灰の禁術機、死ぬのか……?」
自分でやっているのに。なんだろう、凄くモヤモヤする。
この感情は。こいつと、少しでも会話をしたから湧き上がるものか? なにかを、見落としているような気が――。
「ふっ……! 死ぬ……? はは、禁術機は死ぬんじゃない、ただ消えるだけだ。この世から、永遠に、な……」
「あ……」
ガキは顔をクシャリと歪め、目を伏せた。途端に、俺の手に持っていた禁術機が【パリンッ!!】と壊れ。目の前で話していたガキが、一瞬のうちに霧散した。
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