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異変
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次の日。朝からみんな忙しそうだった。あたしはおじいちゃんに半ば叩き起こされて、まだまぶたが開ききっていないのに車に乗せられた。そうか、今日は学校だ、だから家に帰るのかとおじいちゃんに聞いてみたら、「こんな状況で学校なんか行かんでいい。しばらく行かんでいい」とピシャリと言われた。まだ夏休みじゃないのに、学校に行かなくていいらしい。なんでだろう?
家に帰って朝ご飯でも食べるのかなと思っていたら、家に帰ったのは黒い服と黒い靴を取りに来るためだけだった。そしてすぐにおじいちゃんの車は、全く見たこともない大きな建物に入った。手早くおじいちゃんは建物の中の人と話を済ませた後、その全く見たこともない建物の一室にあたしたちは通された。おじいちゃんの独り言によると、「この階全体が一フロアとして使える」らしい。どうやら広い部屋を自由に使えるようになったようだ。
ただ、変な匂いがたちこめていた。正直あたしはあまりこのフロアに居たくないと思う。おじいちゃん家にある、仏様にお祈りする仏壇ってやつと同じような匂いがしたし、お祈りするときに煙を立てるお線香というものの匂いも充満していた。
おじいちゃんはそこへ来るやいなや、建物のスタッフさんとずっとなにかの相談していた。あれにしよう、これにしよう、おじいちゃんは手早く決めているようだった。もっとゆっくり決めればいいのに、と横から見ていて思う。そんなに急いで、何かするのかな。
一方で、おばあちゃんはあたしたちと一緒にこの建物にきて、あたしたちと同じ場所にいるけれど、まるで別の場所にいるよう。ひっきりなしにいろんなところへ電話をかけているようだった。電話番号が書かれた手帳を開いて、一つずつかけているのだった。朝早くからずっと続いている。その中には、あたしが通っている小学校もあった。
二人とも口も足も忙しそうで、一言も話しかけられない。待合室なのか、まるで旅館のお部屋みたいな和室にあたしたちはいたのだけれど、あたしはまた一人でお留守番しているかのようだった。
「マシュー」
いいや、一人じゃないか。
「おばあちゃんとおじいちゃんは何をしているのかな?」
マシューはあたしの質問にちゃんと答えてくれる。
「今から大事なことをしなきゃいけないから、その準備だよ」
言うのにこまっていたのかな。マシューの返事は遅かったのに、はっきりしてなかった。
マシューはあたしと一緒で、何もできずにただ部屋でくつろいでいた。お家は車で行ける距離で泊まる必要もないけれど、旅行に来て旅館に泊まっているみたい。親切なことにお茶やお菓子も用意されていたし、テレビもあった。
おじいちゃんはスタッフさんと話しこんだまま。おばあちゃんはまだ電話中。何もすることがない。ひまをつぶそうと、テレビの電源を入れてみた。おもしろい番組でもやっていないかなー。と思ったけれど、ちょうどニュースの時間みたいだ。
アナウンサーの男の人が一人画面に映っている。
「では、次のニュースです」
明るい顔をしていたアナウンサーは持っていた紙に目を落とすと、みるみるうちに暗い表情に切り変わった。もの悲しそうな目をあたしに向け、低い声でニュースを読み上げる。
「昨日の夕方五時ごろ、星川市内の国道8号線で、対向車が正面衝突する事故が発生しました。原因は六十代男性が運転していた車が逆走したことだと、警察への取材により判明しました。この男性は意識不明の重体で回復し次第事故の詳しい原因を追求する見通しです。一方この事故により、乗用車に乗っていた会社員田中秀太さんと妻真広さんの」
アナウンサーはそこで消えた。
家に帰って朝ご飯でも食べるのかなと思っていたら、家に帰ったのは黒い服と黒い靴を取りに来るためだけだった。そしてすぐにおじいちゃんの車は、全く見たこともない大きな建物に入った。手早くおじいちゃんは建物の中の人と話を済ませた後、その全く見たこともない建物の一室にあたしたちは通された。おじいちゃんの独り言によると、「この階全体が一フロアとして使える」らしい。どうやら広い部屋を自由に使えるようになったようだ。
ただ、変な匂いがたちこめていた。正直あたしはあまりこのフロアに居たくないと思う。おじいちゃん家にある、仏様にお祈りする仏壇ってやつと同じような匂いがしたし、お祈りするときに煙を立てるお線香というものの匂いも充満していた。
おじいちゃんはそこへ来るやいなや、建物のスタッフさんとずっとなにかの相談していた。あれにしよう、これにしよう、おじいちゃんは手早く決めているようだった。もっとゆっくり決めればいいのに、と横から見ていて思う。そんなに急いで、何かするのかな。
一方で、おばあちゃんはあたしたちと一緒にこの建物にきて、あたしたちと同じ場所にいるけれど、まるで別の場所にいるよう。ひっきりなしにいろんなところへ電話をかけているようだった。電話番号が書かれた手帳を開いて、一つずつかけているのだった。朝早くからずっと続いている。その中には、あたしが通っている小学校もあった。
二人とも口も足も忙しそうで、一言も話しかけられない。待合室なのか、まるで旅館のお部屋みたいな和室にあたしたちはいたのだけれど、あたしはまた一人でお留守番しているかのようだった。
「マシュー」
いいや、一人じゃないか。
「おばあちゃんとおじいちゃんは何をしているのかな?」
マシューはあたしの質問にちゃんと答えてくれる。
「今から大事なことをしなきゃいけないから、その準備だよ」
言うのにこまっていたのかな。マシューの返事は遅かったのに、はっきりしてなかった。
マシューはあたしと一緒で、何もできずにただ部屋でくつろいでいた。お家は車で行ける距離で泊まる必要もないけれど、旅行に来て旅館に泊まっているみたい。親切なことにお茶やお菓子も用意されていたし、テレビもあった。
おじいちゃんはスタッフさんと話しこんだまま。おばあちゃんはまだ電話中。何もすることがない。ひまをつぶそうと、テレビの電源を入れてみた。おもしろい番組でもやっていないかなー。と思ったけれど、ちょうどニュースの時間みたいだ。
アナウンサーの男の人が一人画面に映っている。
「では、次のニュースです」
明るい顔をしていたアナウンサーは持っていた紙に目を落とすと、みるみるうちに暗い表情に切り変わった。もの悲しそうな目をあたしに向け、低い声でニュースを読み上げる。
「昨日の夕方五時ごろ、星川市内の国道8号線で、対向車が正面衝突する事故が発生しました。原因は六十代男性が運転していた車が逆走したことだと、警察への取材により判明しました。この男性は意識不明の重体で回復し次第事故の詳しい原因を追求する見通しです。一方この事故により、乗用車に乗っていた会社員田中秀太さんと妻真広さんの」
アナウンサーはそこで消えた。
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