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隠しごと
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マシューのことがわからないなんて、かわいそう。
「ゆいちゃん、大丈夫?」
マシューがあたしの目の前にきてそう言ってくれる。「お腹痛いの?」
「ううん、そうじゃないけど」
トイレにきたのに、トイレに入らず、ただ入り口のところであたしは足を止めていた。なにをしているんだろうって思えてくる。
「なんか、みんなが変だなって思って」
両手でマシューを包んでみた。マシューはあたしの手に体をすっかりあずけて、ふうと息を吐いてリラックス。
「みんな、何かをあたしに隠しているみたい」
お父さんとお母さんはずっと寝ているしさ……。
「だからさ、なんか……」
マシューを包む手があたたまってきた。右手にやわらかい感触がした。マシューはあたしの右手に、スリスリとほおずりをしてくれる。
「く、くすぐったい、マシュー」
思わず笑っちゃう。くすぐったいけれど、気持ちいい。今から言おうとした言葉も、なんだかどうでもよくなってしまった感じ。
「ゆいちゃんが暗い顔をしてたから」マシューはくすくすと笑って言う。そういえばこんな笑顔は今日だれからも見ていなかったな。ひきつった様子のない自然な笑みは、マシューが一番のりだった。
「みんな、ゆいちゃんに隠しているんじゃないよ。ゆいちゃんを守ろうとしているんだよ。ゆいちゃんを傷つけたくないんだよ」
傷つけたくないって? なんで? なにから?
「みんな何を考えているのかわかんない。わかんなくって、なんだかこっちも困っちゃう。なんていうのかな、心の中がモヤモヤして……」
「不安?」
マシューって、頭がいいんだと思う。あたしの考えていることを、言い当てて、言葉にしてくれる。あたしにもその力があれば、おばあちゃんの考えていることも、そのほかの人の考えていることも、わかっちゃうに。
大丈夫。安心して。そう言っているのかな、マシューは左手にほおずりをしてくれた。なんてやわらかくて、心地いいんだろう。
「うん、そう。それにあたし、おばあちゃんがマシューのこと幻覚だって言ったのも、イヤだった。なんでみんなマシューのことが見えないのかな?」
「それは……ゆいちゃんにしかぼくのことが見えないからだよ」
「なんで?」
そう言うとマシューは困った顔をしてしまった。体全体で考えているようだった。
「うーん、そうだなあ……実はぼくにもよくわかんないんだ」
「そっかぁ、マシューにもわからないことがあるんだね」
コツコツと、かかとの高いくつの音が近づいてくる。あたしは、マシューを両手から離しそうになる。扉の向こうから「ゆい?」と声がする。さっきまで泣き声をあげていたおばあちゃんだった。しっかりした足取りでくつ音を鳴らし、トイレの扉の前で止まった。
「ゆい? 叔母さんが買ってきたご飯を食べよう。お腹痛いのかい?」
そっと、自分から扉を開けた。扉のすぐ前に、おばあちゃんがびっくりした顔で立っていた。赤く充血した目と、目下のはれが気になる。なかなか戻らないようだった。
「うん、食べよ~」
涙が乾ききったおばあちゃんに、あたしはわざと笑いかけて言ってみた。
「ゆいちゃん、大丈夫?」
マシューがあたしの目の前にきてそう言ってくれる。「お腹痛いの?」
「ううん、そうじゃないけど」
トイレにきたのに、トイレに入らず、ただ入り口のところであたしは足を止めていた。なにをしているんだろうって思えてくる。
「なんか、みんなが変だなって思って」
両手でマシューを包んでみた。マシューはあたしの手に体をすっかりあずけて、ふうと息を吐いてリラックス。
「みんな、何かをあたしに隠しているみたい」
お父さんとお母さんはずっと寝ているしさ……。
「だからさ、なんか……」
マシューを包む手があたたまってきた。右手にやわらかい感触がした。マシューはあたしの右手に、スリスリとほおずりをしてくれる。
「く、くすぐったい、マシュー」
思わず笑っちゃう。くすぐったいけれど、気持ちいい。今から言おうとした言葉も、なんだかどうでもよくなってしまった感じ。
「ゆいちゃんが暗い顔をしてたから」マシューはくすくすと笑って言う。そういえばこんな笑顔は今日だれからも見ていなかったな。ひきつった様子のない自然な笑みは、マシューが一番のりだった。
「みんな、ゆいちゃんに隠しているんじゃないよ。ゆいちゃんを守ろうとしているんだよ。ゆいちゃんを傷つけたくないんだよ」
傷つけたくないって? なんで? なにから?
「みんな何を考えているのかわかんない。わかんなくって、なんだかこっちも困っちゃう。なんていうのかな、心の中がモヤモヤして……」
「不安?」
マシューって、頭がいいんだと思う。あたしの考えていることを、言い当てて、言葉にしてくれる。あたしにもその力があれば、おばあちゃんの考えていることも、そのほかの人の考えていることも、わかっちゃうに。
大丈夫。安心して。そう言っているのかな、マシューは左手にほおずりをしてくれた。なんてやわらかくて、心地いいんだろう。
「うん、そう。それにあたし、おばあちゃんがマシューのこと幻覚だって言ったのも、イヤだった。なんでみんなマシューのことが見えないのかな?」
「それは……ゆいちゃんにしかぼくのことが見えないからだよ」
「なんで?」
そう言うとマシューは困った顔をしてしまった。体全体で考えているようだった。
「うーん、そうだなあ……実はぼくにもよくわかんないんだ」
「そっかぁ、マシューにもわからないことがあるんだね」
コツコツと、かかとの高いくつの音が近づいてくる。あたしは、マシューを両手から離しそうになる。扉の向こうから「ゆい?」と声がする。さっきまで泣き声をあげていたおばあちゃんだった。しっかりした足取りでくつ音を鳴らし、トイレの扉の前で止まった。
「ゆい? 叔母さんが買ってきたご飯を食べよう。お腹痛いのかい?」
そっと、自分から扉を開けた。扉のすぐ前に、おばあちゃんがびっくりした顔で立っていた。赤く充血した目と、目下のはれが気になる。なかなか戻らないようだった。
「うん、食べよ~」
涙が乾ききったおばあちゃんに、あたしはわざと笑いかけて言ってみた。
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