白のマシュー

あやさわえりこ

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隠しごと

ページ30

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「マシューは白いけど、黒の服を着た方がいいんじゃない?」
 みんなせわしなく部屋を出て行って、あたしだけが部屋に残ったすきに、マシューに聞いてみた。マシューのサイズに合う服なんてあるだろうか。
「ぼくは服なんて着れないよ」
「サイズがないから? まあ、袖が通せないよね」
 袖を通す前に、腕がないか。小さな手は体にくっついている。
 くすくすっとマシューはいたずらっぽく笑う。
「そうだね。あとそれに、みんなにはぼくのことが見えないんだ。だから黒い服を着なくてもいいんだよ」
「もし黒い布をマシューに巻きつけたら、みんなには黒い布が浮いているように見えるのかな?」
 考えただけでもおかしいことだ。思わず笑っちゃった。黒い布がふわふわ宙に浮かんでいるなんて、本当にお化けみたい。マシューも明るい声で笑った。
「たぶんそうかもね。みんなびっくりしちゃうよ」
 いや、そうすればみんなマシューがここにいることを信じてくれるかな。でも──
「マシューは白い方がかわいいもんね」
 白いからマシュマロなんだから。
 儀式の時間になった。あたしたちはまた席に着く。
 昨日と同じお坊さんが来て、昨日より長い、呪文のようなものを唱え始める。その声はこの部屋全体に響き渡る。何度か「ナムアミダブツ」と言っていたが、魔法の呪文なのかしら……。
 しばらくすると、おじいちゃんが立ち上がって、お坊さんの前にある机に乗ったつぼの中から、ひとつまみ何かを取っていた。それを軽く持ちあげ、横にある灰皿みたいな白い器にパラパラとまく。そして両手をあわせてお祈りしていた。お父さんとお母さんの写真に深々と礼をして、いすに戻ってきた。おばあちゃんも全く同じようなことをする。お父さん側のおじいちゃんおばあちゃん、お母さん側のおじいちゃんおばあちゃんと続いた。 
 次はあたしの番のようだった。とりあえずやらなきゃいけないみたいなので、おじいちゃんたちの真似をしてみた。その時、座っている人たちが声をあげて泣いたり、大きく鼻をすすったりする音が耳に入った。あたし、やり方は間違ってないと思うんだけど……。
 家族のみんなが終わると、お父さんやお母さんの友達、たぶんお父さんの会社の人とかも同じような動きをやった。その間も呪文は延々と続く。なんてふしぎな光景だろう。
 お父さんとお母さんだけが花で飾られた台の前で、木の箱に入って眠っていた。まだ眠っていた。お坊さんの声は長く続いているんだけど、うるさくて起きないのかな。この呪文は二人を起こすためのものなのかと思ったけれど、どうやら起きてくれないらしい。
 ……いつになったら起きるのかな。
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