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魂の洗浄
真摯な誓い
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長い夢からまだ覚醒しきれていなくて目も開けられてないけど……人の気配を感じた。
何の夢を見ていたか、思い出せないけれど……お風呂に入った後の様な、とてもすっきりした気分ではある。
まだ寝ていたいけれど、起きないと……そう頭を働かせようとした時、誰かの指に体を触れられ体が跳ね上がった。
「……やっ!!」
突然長い夢から無理やり引き摺り出された様に、今の状況が理解できない。
徐々にはっきりしてくる頭で確認すると、そこにいたのはコクさんだった。
そうだ……泥だらけになって洗濯して……乾くまでお昼寝しようって……。
「すみません……びっくりしてしまって……」
びっくりした……驚いた……そうなんだけど、心臓はいまだに忙しなく動いているし、体の震えが止まらず自分の肩を抱きしめた。
なんでこんなに過剰なまでに反応してしまっているのだろう?キュイが寝ぼけて噛んで来たときですらこんなに恐怖を感じた事は無かったのに……心の奥から『怖い』という感情が込み上げてくる。
「あ~……無防備な格好で寝てるから服を掛けてやろうかと思ったんだが……逆に悪かったな」
目の前に置かれたのは僕の服。もうしっかり乾いていた。
「ごめんなさい……なんでこんなに震えているのか自分でもわからなくて……」
服を受け取ったけれど、震える手ではボタンが上手く留められず、見かねたコクさんが手伝ってくれたが、それにすら頭が割れそうな程の恐怖を感じている。
「警戒心を持つのは良い事だ、気にするな……」
ボタンを嵌めてくれるコクさんのゆっくりとした指の動きを見ていると、幾分心が落ち着きを戻して来た。
僕は一体何にそこまで怯えていたのだろうか。
キュイとハクは……まだ昼寝から目覚めてないみたいだ。いつも頑張ってくれているから起こさないように静かにしてないと……。
「しかしボロボロだな」
「え?」
「服だよ……前の約束、豆の苗を持って来たが服の方が良かったか?」
コクさんの言う通り、服は1着しか持って来ていなかったのでいろんな場所に引っ掛かり破れていたり擦り切れていたり、体型が大きく変わったためサイズが合っていない……が、全く着られないわけではない。
ロープで縛ったり腰に巻くだけにすればまだまだ大丈夫。
「お気遣いありがとうございます。でも僕は作物の苗を分けていただく方が嬉しいです。以前いただいたお芋もたくさん収穫出来たんですよ」
そうだ、コクさんにも新しく増えたお芋畑を見てもらおう。
コクさんを促し、新たに開拓した畑へと案内した。
「……見事だ」
緑の葉がおおい茂る畑を見て、コクさんは感嘆のため息を吐いた。
これまでに城まで麦や芋を何度か置いて来たけれど、勝手にやっている事なので品質などの感想を聞くことが出来ていない。
「コクさん、ちょうど収穫期のお芋があるんです。持って帰って食べてみてくれませんか?ぜひ感想を聞かせてください」
「分かった……お前は食べているのか?また痩せただろう」
そんなにいう程、痩せただろうか?残念ながらここには鏡は無いのでわからないけれどけれど、見える自分の腕や足は……神の国で目覚めて自分の姿を見た時よりもしっくりと来ている。
「わからないですが、調子は良いですよ?この森は木の実もたくさんありますから」
「木の実だけ?芋を食べたら良いだろう?あの獣たちは狩りをしてきたりしないのか?」
「心配していただけるのは嬉しいですが、収穫できた物はちゃんと使い道を決めているのでそこは譲れません」
国民の皆さんへの罪滅ぼしとして育てているのだから、それを僕が食べてしまうのは初めの決意を曲げてしまう事になる。
一つ甘えれば人はもっともっとと甘えてしまう。
「意外に頑固なんだな……知らなかった」
コクさんの心配を拒否したのに怒っては無いようで……ごくごく薄くだけど笑顔を見せてくれた。
「大丈夫だ……光に気付いた者もいる。お前の中に神力が戻るのにきっと時間はかからん」
「え……コクさん……気付いて……」
僕がこの国の神だと言う事に気付かれていた。でも……僕はいっぱい悪い事をして、この国の人に嫌われているのではなかったか?
それなのにコクさんは普通に接してくれた……。
「貴方のお心遣いに感謝いたします。必ずこの国を住みやすいものに変え、貴方方の身の安全を兄弟の神々に約束してもらえる様に尽力いたします」
コクさんの右手を両手で包み込み、真っ直ぐに見つめて誓いを立てたが……顔を背けられて手を振りほどかれてしまった。
優しさに甘えすぎただろうか?
「悪い……慣れていないんだ。魂が変わると見た目もそれに影響されるものなんだな……確かにお前の母親も綺麗な女性ではあったが……」
慣れてない?結構コクさんからは触れてきていたと思ったけれど、触るのは良くても触られるのは苦手な人なのか……気を付けないと。
「良い方向でしょうか?」
「あ?」
「魂が変わると見た目にも影響が出ると仰られましたよね?僕は良い方向に変われているのでしょうか?」
前の僕の考えは今の僕にはわからないから、自分では魂がどう変わったのか比較が出来ない。この国にとって良い道を進めているのなら良し。進めていなければもっと精進しなくては……。
「間違いなく良い方向だ。ただ無理はするなよ、お前はすぐに他人の為に無理をする」
言い聞かせる様に僕の頭を撫でると、コクさんは風の様に消えて行った……。
不思議な人……でも昔の僕をよく知っていそうだ。僕のお母さん……どんな人だったんだろう。
次にまた姿を見せてくれた時は、昔の話をもっと聞かせて欲しい。
コクさんが口にするのは、マラカさんの話とは少し違う印象の僕……僕は……僕とは一体何なんだろう。
昔を思い出そうとすると起きていた頭痛が日を追うごとに頻度が少なくなっていく……僕が昔を思う事を止めたのか、思い出せてきているからなのか、それすら分からなかった。
何の夢を見ていたか、思い出せないけれど……お風呂に入った後の様な、とてもすっきりした気分ではある。
まだ寝ていたいけれど、起きないと……そう頭を働かせようとした時、誰かの指に体を触れられ体が跳ね上がった。
「……やっ!!」
突然長い夢から無理やり引き摺り出された様に、今の状況が理解できない。
徐々にはっきりしてくる頭で確認すると、そこにいたのはコクさんだった。
そうだ……泥だらけになって洗濯して……乾くまでお昼寝しようって……。
「すみません……びっくりしてしまって……」
びっくりした……驚いた……そうなんだけど、心臓はいまだに忙しなく動いているし、体の震えが止まらず自分の肩を抱きしめた。
なんでこんなに過剰なまでに反応してしまっているのだろう?キュイが寝ぼけて噛んで来たときですらこんなに恐怖を感じた事は無かったのに……心の奥から『怖い』という感情が込み上げてくる。
「あ~……無防備な格好で寝てるから服を掛けてやろうかと思ったんだが……逆に悪かったな」
目の前に置かれたのは僕の服。もうしっかり乾いていた。
「ごめんなさい……なんでこんなに震えているのか自分でもわからなくて……」
服を受け取ったけれど、震える手ではボタンが上手く留められず、見かねたコクさんが手伝ってくれたが、それにすら頭が割れそうな程の恐怖を感じている。
「警戒心を持つのは良い事だ、気にするな……」
ボタンを嵌めてくれるコクさんのゆっくりとした指の動きを見ていると、幾分心が落ち着きを戻して来た。
僕は一体何にそこまで怯えていたのだろうか。
キュイとハクは……まだ昼寝から目覚めてないみたいだ。いつも頑張ってくれているから起こさないように静かにしてないと……。
「しかしボロボロだな」
「え?」
「服だよ……前の約束、豆の苗を持って来たが服の方が良かったか?」
コクさんの言う通り、服は1着しか持って来ていなかったのでいろんな場所に引っ掛かり破れていたり擦り切れていたり、体型が大きく変わったためサイズが合っていない……が、全く着られないわけではない。
ロープで縛ったり腰に巻くだけにすればまだまだ大丈夫。
「お気遣いありがとうございます。でも僕は作物の苗を分けていただく方が嬉しいです。以前いただいたお芋もたくさん収穫出来たんですよ」
そうだ、コクさんにも新しく増えたお芋畑を見てもらおう。
コクさんを促し、新たに開拓した畑へと案内した。
「……見事だ」
緑の葉がおおい茂る畑を見て、コクさんは感嘆のため息を吐いた。
これまでに城まで麦や芋を何度か置いて来たけれど、勝手にやっている事なので品質などの感想を聞くことが出来ていない。
「コクさん、ちょうど収穫期のお芋があるんです。持って帰って食べてみてくれませんか?ぜひ感想を聞かせてください」
「分かった……お前は食べているのか?また痩せただろう」
そんなにいう程、痩せただろうか?残念ながらここには鏡は無いのでわからないけれどけれど、見える自分の腕や足は……神の国で目覚めて自分の姿を見た時よりもしっくりと来ている。
「わからないですが、調子は良いですよ?この森は木の実もたくさんありますから」
「木の実だけ?芋を食べたら良いだろう?あの獣たちは狩りをしてきたりしないのか?」
「心配していただけるのは嬉しいですが、収穫できた物はちゃんと使い道を決めているのでそこは譲れません」
国民の皆さんへの罪滅ぼしとして育てているのだから、それを僕が食べてしまうのは初めの決意を曲げてしまう事になる。
一つ甘えれば人はもっともっとと甘えてしまう。
「意外に頑固なんだな……知らなかった」
コクさんの心配を拒否したのに怒っては無いようで……ごくごく薄くだけど笑顔を見せてくれた。
「大丈夫だ……光に気付いた者もいる。お前の中に神力が戻るのにきっと時間はかからん」
「え……コクさん……気付いて……」
僕がこの国の神だと言う事に気付かれていた。でも……僕はいっぱい悪い事をして、この国の人に嫌われているのではなかったか?
それなのにコクさんは普通に接してくれた……。
「貴方のお心遣いに感謝いたします。必ずこの国を住みやすいものに変え、貴方方の身の安全を兄弟の神々に約束してもらえる様に尽力いたします」
コクさんの右手を両手で包み込み、真っ直ぐに見つめて誓いを立てたが……顔を背けられて手を振りほどかれてしまった。
優しさに甘えすぎただろうか?
「悪い……慣れていないんだ。魂が変わると見た目もそれに影響されるものなんだな……確かにお前の母親も綺麗な女性ではあったが……」
慣れてない?結構コクさんからは触れてきていたと思ったけれど、触るのは良くても触られるのは苦手な人なのか……気を付けないと。
「良い方向でしょうか?」
「あ?」
「魂が変わると見た目にも影響が出ると仰られましたよね?僕は良い方向に変われているのでしょうか?」
前の僕の考えは今の僕にはわからないから、自分では魂がどう変わったのか比較が出来ない。この国にとって良い道を進めているのなら良し。進めていなければもっと精進しなくては……。
「間違いなく良い方向だ。ただ無理はするなよ、お前はすぐに他人の為に無理をする」
言い聞かせる様に僕の頭を撫でると、コクさんは風の様に消えて行った……。
不思議な人……でも昔の僕をよく知っていそうだ。僕のお母さん……どんな人だったんだろう。
次にまた姿を見せてくれた時は、昔の話をもっと聞かせて欲しい。
コクさんが口にするのは、マラカさんの話とは少し違う印象の僕……僕は……僕とは一体何なんだろう。
昔を思い出そうとすると起きていた頭痛が日を追うごとに頻度が少なくなっていく……僕が昔を思う事を止めたのか、思い出せてきているからなのか、それすら分からなかった。
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